2015年9月21日月曜日

PATEK PHILIPPEのこと(3)

 ミントコンディションの9-90です。

材質はSSです。このころのSSは錆びない鉄として最先端の金属=貴金属の扱いを受けていました(昨今のインターネットの普及で、材質についての研究が進んでいるようですが、どうもよくわかりません。ご存知の方がいらっしゃいましたら、御教示願えれば幸いです)。

9-90 Ref不明
この時計も、風防がうねっており、撮影に苦労しました。また、ケースに映る影の入れ方が難しいです。

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 こうして、何本ものPATEKのことを書くと、お金持ちを想像しそうですが、そんなことはありません。ごくごく普通のサラリーマンです。

 では、なぜこんなに買うことができたかというと、自動車を所有したことがないのと、お金のかかる趣味を持たなかった(持てなかった)ことでしょうか。

 自動車は、若いころは本当に欲しかったのですが、都内在住の身には駐車場代が高すぎました。また、比較的駅から近いところに住んでいたこともあり、どこに出かけるのも電車のほうがずっと便利という状況の中、自動車を所有する意味が見いだせませんでした。自動車に乗るのはどう考えても月に1回程度、それも純粋にドライブするためだけに毎月数万円もの出費では、さすがに割に合いません。結果的に、今まで一度も所有したことがないままです。
 でも、いつか、MercedesのW111 Coupe(220SE)(リンク先はコンバーチーブルですが)をアップデートして乗りたいです。

 お金のかかる趣味というと、思い浮かぶのはゴルフでしょうか。いまでこそだいぶ安くなりましたが、バブル当時の会員権はとんでもない値段がついていました。ビジターでの料金も高かったと聞いています。仕事柄、接待ゴルフをすることもなく、プライベートでも周囲の人間が誰もしていなかったこともあり、結局しないままです。また、ゴルフ自体が一時期より下火になってしまい、そのままグリップを握ったこともない状態が続いています。
 
 カメラも好きですが、腕の悪さは自覚がありました。広角レンズを使っての良い写真など夢のまた夢です。そうかと言って望遠レンズでは、何を撮っても、「日の丸写真」の量産です。最近でこそ、必要に迫られ「ブツ撮り」をはじめましたが、カメラより照明に手間をかける方が大事だということが、やっとわかりました。
 デジカメはなかなか、精密機械としての趣味の対象にはなりにくいです。しかし、今となってはフィルムカメラでは効率が悪すぎます。今後いくらお金があっても、IIIC(Luftwaffen)M3(70万台)F(640万台)F2(T)F3(Limited かP)マキナ670、(全部欲しかったカメラです)などのカメラを使うことはないでしょう。使い勝手の良さから70-180mm Zoom Micro Nikkorは魅力的ですが、「スタジオ」の狭さから、コンパクトカメラで撮っています。

 オーディオも好きですが、都内マンション在住の身には、オーディオシステムを買うことすら、叶いませんでした。ヘッドフォンで聞かなければならないような環境では、高価なオーディオシステムなど、夢のまた夢です。音を出すことすらできないのでは、宝の持ち腐れです。いつか、周囲を気にしなくて済み、十分に広いところに住むことができたら、Luxman L-570X'sノーマルの570も、570Z'sもいいなぁ)、Sonus Faber ELECTA AMATORが欲しいです。甘い、あのとろけるような音のするELECTA AMATORで、キャスリーン・バトルの曲を聴きたいです。

 時計を購入したのは「場所を取らない」という、現実的な側面もあるのです・・・。

 自動車、お金のかかる趣味を、そっくりそのまま時計の購入資金に充てたとしたら・・・、決して遠い世界の、非現実的な話ではないことが、お分かりになっていただけると思います。

2015年9月12日土曜日

PATEK PHILIPPEのこと(2)

 腕に載らなかったカラトラバオートですが、12-600ATには抗し難い魅力があります。Ref.425は普段使うには、ちょっと気を使うところがあるため、スクリューバックのものを探していました。いろいろな店で様子を伺っていたところ、大きめですが、コンディションの割には非常に安いRef.2552が出ていたので、買ってしまいました(といっても20年前ですが)。Ref.2552はカラトラバオートではありません。カラトラバオートを名乗れるのはRef.3403、Ref.3439、Ref.3438だけです。

PATEK PHILIPPE Ref.2552 12-600AT

 今回、この記事を書くために写真を撮りましたが、この時計を撮影するのは実に難しいです。バーインデックスのエッジの鋭さ、針の立体感を伝えることは至難の業です。この1枚を撮るのに半日以上費やしましたが、Ref.2552の持つ魅力の半分も伝えていません。時計雑誌が、どのように撮っているのか参考にしようと見直したのですが、まったくいい加減な写真しか撮っていないことがわかりました。

 確かに、証明写真大程度の紹介写真では、一枚にかけることができる時間が少ないので、他の時計と似たようなセッティングにしたのだと思われますが、それではこの時計は、ちゃんと写ってくれません。今回、Ref.425や他の時計も一緒に撮ったのですが、Ref.2552だけが格段に難しいです。

 光が十分に廻らないと、安っぽい金色になりますが、そうなるとこの時計の持つ鋭いエッジ感が伝わりません。別のライトを使って鋭さを出しますが、ひとつのインデックスの質感を出せても、別のインデックスの影がうまく出ません。すべてのインデックスの仕上げがあまりに素晴らしいので、うまく影の出ないインデックスが気になって仕方ないのです。

 Ref.2552を撮影することで、あらためて、このデザインの完成度の高さ、視認性の良さを再認識しました。

 この時計は、わずかな光さえあれば、鏡面加工されたインデックス、針が鋭く光を反射するので、時間がわかります。今回の撮影に当たり、インデックスに当たる光をコントロールするため暗闇を作ったのですが、ほんの少しの隙間から洩れてくる光にも反射してしまうため、ずいぶんと困りました。逆にいえば、それだけ視認性が良いということです。
 これこそ、用の美でしょう。本当に良いデザインというものは、美しいだけでなく、それだけで何種類もの機能を果たしてくれるものです。

 この時計も、存在するだけで多くのことを教えてくれました。

 今まで、この「カラトラバ」のデザインが素晴らしいということを言ってきましたが、他人の言葉で言っていたと思います。初めて、自分の言葉でこの時計の魅力を話せるようになりました。

 手に入れてから、ずいぶん時間がかかりました。

2015年9月5日土曜日

PATEK PHILIPPEのこと(1)

 昔、時計に興味がありました。
 
 時計は、腕に載るという観点で選んでいます。私は色が白く、手首が細いので、細長い角型の時計が好みです。


PATEK PHILIPPE Ref.425 Pt

尾錠もオリジナルです
このRef.425は一目惚れです。その日はカラトラバオート(Ref.3403)を買いに行ったのですが、腕に載りませんでした。たまたま横にあったRef.425を載せたところ、吸い付くように腕に載りました。その瞬間、カラトラバオートは視界から消え、Ref.425が私のところにやってきました。同じ9-90を使っている他のモデル、トップハット(Ref.1450)フレアード(Ref.1593)耳たぶ(Ref.2442)は、写真で見ると、素晴らしいデザインですが、残念ながら私の腕には載りません。そうした意味ではピンクゴールドも選択肢から外れます。色が合わないのです。そういえば、両親ともに銀色の時計が似合います。母はいつも角型のSSのWittnauerの時計をしています。もともとは父が買ってきたものですが、父には小さかったようで、母が使うようになりました。私がPtのRef.425を選んだのも、両親の影響が大きいです。

 Ref.425は写真で見ると、縦の比率が長く、細長すぎる印象がありますが、実際に腕の載せて見るとまったくそのようなことはありません。少なくとも、私には一番しっくりきます。

 コンディションの良いの9-90のリューズを巻いた時の感触は、なんとも言えないほど滑らかな感触を持ちます。

 何人かの時計師と、何があの滑らかな感触を実現しているのか考えてみたことがありました。
 
 コハゼの形状、巻き上げ機構のアガキの少なさ、磨きの仕上げの良さが要素としてあがりました。コハゼのわずかな摩耗具合でも変わるので、同じようにするのは事実上不可能ですよ、と言われました。

 手廻しのミルを空回りさせた時、OLD PATEKの感触を再現するなどという、大それたことは申しません。ただ、このような、何度でも廻したくなるような気持ちにさせるものにしたいものです。