2015年8月22日土曜日

コーヒーミルを作ることにしました(8)

 ナイスカットミルの替刃の設計ですが、試行錯誤した結果、元の形状+みるっこの刃の形状になりました。 

 素人の見る目では、かなり難しそうな加工をしているように見えたのですが、思ったより、加工は容易な形状だということがわかりました。
ナイスカットミルの切り込み+みるっこの突起

固定側(もしくは回転側)

 実際に使ってみたところ、特に粗挽きの際、粒度が安定します。挽くのにかかる時間は、それほど変わりません。

 なぜ粒度が安定するのか、挽く時間がそれほど変わらないのか。その辺の理由を明らかにするためにも、次回あたりから、ナイスカットミルの研究に入りたいと思います。

2015年8月15日土曜日

HARIO(旧)を研究する(3)

今まで全てミルについて、使用感の違いを以下の6点になると思うと書いてきました。HARIOのコーヒーミルではどうなのか、同じ項目について個別に見ていきます。

F201と並べて見ると、ひと回り大きいことがわかります


挽き心地が軽いか否か
  1. ホッパーに豆が残るか否か
  2. ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか)
  3. 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か
  4. 分解がしやすいか
  5. 豆の入れやすさ 

挽き心地が軽いか否か

 いろいろな姿勢で挽いてみたと書きましたが、椅子に座ってテーブルの上で挽いても、キッチンに立ってキッチンテーブルに置いて挽いても、また、この小型軽量のモデルならではだと思うのですが、立って宙に浮かせたまま使っても大丈夫です。このモデルに限らず、ディアボロ形状のミルは持った方が使いやすいです。というか、ディアボロ型のミルではこの項目は必要ないかもしれません。

ホッパーに豆が残るか否か

 本体と刃の間に継ぎ目があり、どうしても細かい破片が残ります。F201よりも隙間は大きいような気がしますが、透明で目立つからかもしれません。

ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか)

  特にディアボロ形状のミルでは仕方がないのですが、受け皿を外したとたん、周囲に残った粉がこぼれ落ちます。F201では本体上部のスカート部が大きく深く、すぐに横にすれば、粉が外にこぼれ落ちることはなかったのですが、残念ながら、HARIOのモデルではスカート部がないため、本体上部に残った粉がこぼれ落ちます。また、アクリルの本体は静電気を帯びやすいようで、この影響もかなりあるようです。
 このモデルの後に発売されたHARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MCSC-2TBもスカート部が浅いのですが、セラミックのため、刃に付着する粉の量が圧倒的に少ないので、こぼれ落ちる量が問題になりません。形状もさることながら、材質は予想以上に影響があるようです。

粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か

 調節機構は、今まで見たことのない形式です。本体・シャフトに固定されない、独立した調節部品が隙間を調節します。本体とは「キー」で共周りを防止しています。どんな時でも粒度を調節できます。粒度の調節としては非常に優れていますが、後述しましうが構造的には分解の際、少々気を使います。また滑り止めにゴムを使用していますが、劣化した場合など、交換部品が供給されているのかが気になります。
本体・シャフトに固定されない調節部品

反対側から見た調節部品 ネジの位置もずらしています

粒度を細かくした場合

粗くした場合

本体にギザギザがあり、ゴムで滑りを止めています

分解がしやすいか

 一番上の袋ナットを外した時点で、内刃を留めるものがなくなるので、内刃がいきなり下に落ちます。ガラス瓶をつけたままでは、傷が付きそうなので、気を使います。今まで見てきたモデルは、調節機構にネジがあり、そのまま落ちることはありませんでした。分解の際には、事前にガラス瓶を外すことが必要です。
 また本体と外刃の間に細かい粉がいっぱいたまります。長く使うと細かい粉で本体が傷つけそうですが、いかがでしょう。
 ただ、前述しましたが、ハンドルを除くと2箇所のネジを外せばすべて分解ができます。部品点数の少なさという点で、F201よりも分解しやすいです。

豆の入れやすさ

 F201同様、投入口と、飛び散り防止のための蓋を兼ねた構造になっています。形状から想像すると、穴が小さく、豆があふれそうに思えるのですが、ホッパー開口部の大きさが広いので、計量スプーンで入れる際も、豆がこぼれることはありません。ふちの高さが足りないと思うかもしれませんが、そのようなこともありません。また、挽く際には、豆はすべて穴に落としてから挽き始めるので、残った豆がこぼれることもないです。見た目からは想像できないほどに、この形状は使いやすいです。
 しかし、アクリルは豆が滑らないことがわかりました。HARIO(旧)を研究する(2)で、ryota sawaki様より戴いた写真を見てもわかる通り、このモデルは豆がなかなか滑らず、すぎに下に落ちません。金属製のF201は豆が滑って、スルスルとすぐに穴に落ちるのですが、材質も大きな要素なのだということがわかりました。

F201に良く似た豆の投入口

F201の方が穴が大きいですね


結論・評価

 最後に評価です。F201の影響を大きく受けているモデルですが、細かい点を見ていくと、だいぶ異なったものだと思います。機能的には残念ながらあまり高い評価を下すことができません。理由は、手に持ちにくいこと、袋ナットを外しただけで内刃が落ちること、本体と受け皿を外したとき、粉が周囲にこぼれやすいこと、ガラスの受け皿の口が大きすぎるためです。

 F201、セラミックスケルトン、セラミックスリムという、大変優れたモデルの後に使ったためか、どんどん評価が厳しくなってしまいました。しかし、それでもボックス型のミルに比べれば、圧倒的に使いやすく優れています。
 また、キッチュとも言えるデザインは、他にない魅力を放っています。なんというか、周囲の雰囲気が明るくなるのです。セラミックスケルトンが、良くできたキッチンツールにしか見えないのに対し、このモデルは明らかに楽しさがあります。赤だけでなく、白のモデルでもそうです。

 楽しい食卓を彩るミル。人に見せたくなるコーヒーミル。挽かせてと言われて、渡した時、使いにくくて嫌になって返されないミル。そんな使い方をしている方には、代わりがないものと言えるでしょう。

 セラミックスケルトン、セラミックスリムは、このミルの使いにくさをほぼ解消し、機能の極致に達しました。しかし、失ったものも大きいようです。

 何が良いミルなのか、またわからないことが増えました。

2015年8月8日土曜日

HARIO(旧)を研究する(2)

 こちらによくコメントをくださる、ryota sawaki様より、HARIOディアボロ型ミルの、色違いモデルの写真を頂戴しました。

 御両親の結婚祝いに頂いたサイフォンセットの中に含まれていたものということです。38年前とのことですが、今でも現役で活躍とは、ミルもさぞかし、幸せなことでしょう。

豆がいっぱい、はいっていますね。
F201ではすぐに穴から落ちてしまいますが、留まっているのが興味深いです


握り玉まで白ですっきりしています。

 こうしてみると、すっきりしていて白もいいですね。白はコーヒーミルにらしからぬと思っていましたが、コーヒー豆のこげ茶色と、良いコントラストをなしています。

 まさか、このミルの記事で、これほどのやり取りが発生するとは思ってもいませんでした。何が、どう関係するか、わからないものですね。

2015年8月1日土曜日

HARIO(旧)を研究する(1)

 今回も引き続き、ディアボロ形状のミルを取り上げます。
KONO式(コーノ式)ミルF201、セラミックスケルトン、セラミックスリムがあまりに合理的で使いやすかったので、すっかりこのディアボロ形状(≒中国独楽)の虜になってしまいました。他に何か存在しないか調べたところ、過去にHARIOで作られているのを見つけました。HARIOのミルはどのように進化してきたのでしょう。

今回はHARIOの「コーヒーミル(形式不明)」を取り上げることにします

HARIOのディアボロ型ミル(形式不明)



今回も本体の形状を見て行きます。使いやすいコーヒーミルの形状とはどんなものか(1)では、
  • 絶対値として、動作が軽いこと
  • 底面が固定されること
  • 押さえる手に無理な力がかからないこと
  • 本体を押さえながら、ハンドルを廻した時に、押さえた手と干渉しないこと
 を満たす形状として
  • 廻した時に左手に当たらない高さに、ハンドルが配置されている
  • 左手で押さえる際、親指と人差し指を開いて握るような形状は押さえやすい
  • 角のない受け皿
  • 分解しやすく、場合によっては洗える本体
を考案しました。HARIOのミルは上記の条件を満たしているのか、検証することにします。

廻した時に左手に当たらない高さに、ハンドルが配置されている

 HARIOのミルも、ちゃんと適切な高さにハンドルがあります。いろいろな姿勢で挽いてみましたが、どんな時でも干渉することはありません。

左手で押さえる際、親指と人差し指を開いて握るような形状は押さえやすい

 F201と比べると、なんというか、しっくりきません。ホッパーとガラスの受け皿をねじ止めしている部分の径が大きく、掌に納まりません。また、ホッパー上部も当たります。もう少し細くするとか、そういう問題ではなく形状に問題があります。ただ、セラミックスケルトンよりは握りやすいです。特に手の小さい女性にとっては、明らかに使いやすいです。

角のない受け皿

 「角のない受け皿」の条件を満たすのはもちろん、ガラス素材の長所を発揮しています。ネジのピッチも大きく、ネジ山に粉が入り込んで取れなくなることもありません。容量も2人分(30g)以上挽いても十分です。材質も強化ガラスを使用しており、強度的にも問題ありません。
 ただ、底が浅いのに口が広いので、粉が周囲にこぼれそうになります。特に冬場は静電気で強く付着するので、周囲をたたいたりして粉を落とすことになりますが、この際、間違いなく周囲をが汚れます。広すぎる口も問題です。

分解しやすく、場合によっては洗える本体

 ハンドルを除くと2箇所のネジを外せばすべて分解ができます。樹脂を使用しているためF201よりも手軽に、水洗いができます。分解可能な部品点数は11点しかありません。ただし、本体は複雑な形状なので、内部を完全にふき取るのは大変です。しかし、指が入りにくかったりするわけではないので、セラミックスリムの受け皿よりは楽にふき取れます。
HARIOの構成部品


ハンドルの動作半径

 動作半径は110mmです。

刃の形状・鋭さ・材質・硬度

 なんと、F201・F205と同じ形状の刃が使用されています。コーノと何か関係があったのでしょうか。何か御存じの方がいらっしゃいましたら、御教示ください。
左がHARIO 右がF205 若干HARIOの内刃が大きいです
シャフトの固定方法も一緒です(左がHARIO 右がF205)

HARIOは廻り止めの加工がされていますが、基本形状は一緒です
左がHARIO 右がF205)

こうして見ると同じだということがよくわかります
左がHARIO 右がF205)



次回は、形状と使い勝手の関係を明らかにしていきたいと思います。