2019年8月18日日曜日

既存のミルの欠点を取り除いた軽快な挽き心地、粉が飛び散りにくいミルを考案する(9)

 ずっと、ZZ型のベアリングを使ったモデルを作ってきました。しかし、どうしても水洗いしたいという欲求が出てきます。そこでシャフトを保持する部分をベアリング素材(食品衛生法適合)から削り出してみることにしました。
シャフト保持分を樹脂ベアリング削り出し部品に変更
 残念ながら、本体一体型ではなくなるのですが、全ての部品を気兼ねなく水洗いすることができます。また、機械要素展などで、樹脂ベアリングを調べて見ると、負荷をかけて動作させた時は、金属ベアリングよりも接する面積が広くなる分、摺動が少なくなることもわかっていました。
 空回りの時は明らかに金属ベアリングの方がスムースに動きます。しかし、負荷をかけたときは、金属製のベアリングとほとんど違いがわかりません。私は本体の太さ、組み込まれている刃の感触などで個体認識ができるので、どの個体に樹脂ベアリングが組み込まれているかがわかりますが、何も知らない人が目隠しをして動かしたら、どれが樹脂モデルなのか特定できないと思います。

 また、表面処理をすることにしました。白色アルマイト、硬質アルマイト、無電解ニッケルメッキを試してみました。見本では硬質アルマイトの「アルミっぽくない」質感がカッコよく思われたのですが、どうもこの形状には似合わないようです。無電解ニッケルメッキがカッコイイです。ただ、A7075、A2017、A6061、A5052のどれを選ぶかによって、仕上がりも変わってきますから、まだわからないですね。
アルミ無垢材から削り出したミル 無電解ニッケルメッキをしてみました

A2017 白色アルマイト(左)硬質アルマイト(右)

 内刃・外刃の形状がほぼ決まりました。ただ、外刃の深さを何ミリにしたらよいのかが、まだわかりません。外刃を深くするべきなのか、それとも浅くするべきなのか、絶対の確信が持てません。挽き込む速度が遅いため、外刃を深くしたところ、思ったより負荷がかかり、内刃が想像以上に摩耗しました。

 いつもお世話になっている会長に相談したところ、刃の硬度が不足しているためと見解を示されました。私は、本体と完全に固定されいない外刃が、豆の負荷に耐えきれずに暴れた結果、内刃と干渉したとの推測をしたのですが、設計値を見た瞬間、そのようなことはないと即答されました。ときどき感じる「ナイロンPAの内刃と外刃が擦れているような感触」についても、「先入観があるとそうした感触に思われてくるので、注意しないといけない。原因を見誤ってしまう。機械修理に携わっていると、そうした思い込みをする人に出会ってきたし、昔は自分にもそういうことがあった。」とお話ししてくださいました。

 外刃の深さについても、「外刃を深くしたことで、挽き込む量が多くなり、確かに負荷が高くなっているが、これは刃の硬度が不足していることも関係している。もしも、刃に十分な硬度があれば、かかる負荷も少なくなる。」との見解を示されました。

 以前、刃の素材によって挽き心地が変わる可能性がある(その時はチャフが混じらなくなる原因)といったことを書きましたが、その通りになりました。

 もはや、3Dプリンタ素材(PA)ではわからないところまできました。セラミック部品で作らないと、ここから先はわかりません。

 いったい、いくらでできるのか。クラウドファンディングでできるような現実的な金額なのか、先に進みたいと思います。

2019年5月18日土曜日

フレーバーコーヒーさま(愛知県西尾市)にお邪魔してきました

 先日、こちらのコメント欄でときどき読者様よりご紹介をいただきました「フレーバーコーヒー」さまにお邪魔をして参りました。

 事前にメールで自己紹介をしておいたのですが、実際にどのような反応を示されるか心配でした。だいたい、忙しいのに全く面識のない人間から、「ミルを作っている者ですが見て欲しい」などと言われたら、面喰うと思います。

 お店に伺うと、DirectFireRoast 環 代表 長屋さんが最初にいらっしゃいました。メールを差し上げたものなのですがと名乗りますと、奥から中川さんが出ていらっしゃり「ああ、ミルの方ですね。非常に興味深いものと思っていました。部品をお持ちになったのでしょう。早速試してみましょうよ!」と思ってもみない反応が返ってきました。私としては、ご挨拶から始まり、世間話をしながら様子を伺い、大丈夫そうだなと思ったら部品をおずおずと取り出して、良かったらお時間のある時に使ってみていただけませんでしょうか。もしも、お時間をいただけるようでしたら、今ではいかがでしょう・・・。まで行ければ嬉しいなと思っていたので、存外の好意的な反応に飛び上がりそうになりました。

 結論から申し上げますと、大変勇気づけられました。

①挽いたときの香りが非常に強い。業務用で使っているグラインダーと比べれても明らに違う(中川さん)。長屋さんも同意。
②昭和の味がする(長屋さん)。どうやら苦いようです。モデルとなっているKONOのミルは昭和のものだから、そういう味がするのは、ある意味当然だ(中川さん)とのコメントがあり、そうなのかなと思いました。
③挽くのに異常に時間がかかるのを何とかしてほしい。これでは億劫になり使わなくなってしまう。使われないのでは意味がない。挽くときの重さ、チャフの問題とトレードオフの関係にあるようだが、間違いなく挽く速度を上げるべきだ(中川さん、長屋さん おふたりとも強くコメント)

豆の種類や量を変えたり、刃の組み合わせを変えて挽く速度を上げて見たりしてテストをしていたところ、気が付いたら2時間以上も長居してしまいました。あまりに本題のことばかりで盛り上がったので、帰りの電車の中で、写真の一枚も撮らずに帰ってきたのに気が付きました。

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 ありがたいことに、資金が問題ならば、クラウドファンディングで資金を調達し、製作して欲しいとの力強い言葉を戴きました。

 今回は内刃、内刃の固定部品だけをクラウドファンディングで資金を調達し、製品化してほしいとの要望だったと理解しています。
セラミックスリムMSS-1の外刃(右奥)と互換性のあるF101相似内刃(左手前)内刃の固定部品(左奥)
右手前は、MSS-1に内刃の固定部品なしにダイレクトに組み立てることができる用に作った試作品

 実は、今まで私もクラウドファンディングによる製品化を検討してきました。しかし、私が世に問いたいのは、本体を含めたミルです。クラウドファンディングでそれは実現可能なのか。出資を仰ぐ以上は、もう少し知恵を絞らないといけないと思っています。

2019年5月3日金曜日

【副作用】チャフだけを残して挽くことができる刃ができました(2)

 前回、「F101相似形内刃」は条件はあるにせよ「チャフだけを残して挽くことができる」ことを書きました。今回は、その副作用を書きたいと思います。

副作用ですが、

私の考える良いコーヒーミルの条件第一条件である「古い豆、粉がミルの中に残らないこと」をまったく満たさなくなりました。

分解すると、ノーマルのHARIO セラミックスリム・MSS-1とは比較にならないほど、たくさんの挽き残しの粉が出てきます。この小さな個体のいったいどこに隠れていたのか?と思うような量です(周囲を汚さないのが救いですが)。

②挽くのに恐ろしく時間がかかります。一杯挽くのに150~200回転です。これはノーマルのHARIO セラミックスリム・MSS-1の2倍以上の数字です。動作が軽いので疲れはしませんが、まだ挽き終わらないのかという気持ちになります。

では、これらの副作用とチャフだけを残して挽けることと、どちらが重要なのか?

「チャフだけを残して挽ける刃の採用をやめる」という選択肢はあるのか?

F101相似形内刃 チャフだけを残して挽くことができます 

 私には、チャフだけを残して挽ける刃の採用をやめる判断は下せませんでした。

 古い粉は、掃除の頻度を上げることで取り除くことができますが、チャフだけを取り除いた状態で粉を得ることは、非常に困難です。他の機能を犠牲にしてありあまるメリットがあると考えます(そもそも高頻度で掃除すること自体、良いことです)。

 副次的に発生した現象ですが、もはやこちらのほうが、ずっと重要な要素となりました。

 以前考えた「良いコーヒーミルの条件」を考え直さないといけません。良い条件に「チャフだけを残して挽けること」がないのは、まさかチャフだけを残して挽けるミルが存在し得るとは、思ってもみなかったためです。しかし、第一条件との折り合いがつかないので、どうするのか考えたいと思います。

 どうしたら、安定してチャフだけを残すことができるようになるのか。本体のみならず、内刃と外刃の形状に工夫の余地はあるのか。
 古い豆、粉がミルの中に残らないことと、チャフだけを残して挽くことを両立させることはできるのか?
 挽き心地の軽さを維持しつつ、回転数を少なくすることはできるのか?

どれも簡単ではない問題について、模索が続きます。

2019年4月28日日曜日

【条件付き】チャフだけを残して挽くことができる刃ができました

 設計した「F101相似形内刃」ですが、実はHARIO セラミックスケルトン・セラミックスリムMSS-1の刃に組み合わせることができるよう作っています。

 先日、3Dプリンターで作った刃が使えることが分かったので、セラミックスリムMSS-1に組み込んで使ったところ、思ってもみなかった現象が発生したので別記事にします。

その効果は「条件が整えばチャフだけを残して挽くことができる」というものです。その条件とは、以下の3点です。

1.チャフの残りやすい豆で挽く
2.一度にホッパーに入れる豆の量は一杯分(10g程度)
3.チャフに逃げ場ができるよう、ホッパーに豆のない空間を残して挽く




奥の豆がKALDIマイルドブレンド、手前の大きな豆がパカマラ チャフはパカマラを挽いたときのもの
チャフは下の写真のホッパーから取り出したそのままの状態です。撮影のため、特別にチャフがキレイに取れたものを選んでいるわけではなく、上記の3条件を満たせば、ほぼ毎回このようになります。


セラミックスリムMSS-1のホッパーに残ったチャフ
今まで「toho coffee アラビカリッチブレンド」でテストしているので気が付かなかったのですが(この豆はチャフがほとんど出ません)、セラミックスリムMSS-1の改造パーツの使用感を試してもらうために、作ったパーツ群とセラミックスリムMSS-1を持って、妹夫婦の家に遊びに行った時、「深煎りスペシャルブレンド(丸山珈琲 ザ・ガーデン自由が丘用オリジナルブレンド)」を挽いた際に判明しました。本ブログの読者でもあります、柚子蜜柑さまが第一発見者です。
 今までこのようなことはなかったので、最初は、何かの間違いかなと思ったのですが、何度挽いても再現するので間違いないと確信しました。
 帰宅後、他にもいくつかチャフが多そうな豆で試したところ「KALDIマイルドブレンド」で再現、ばんじろ様よりご紹介いただいた「パカマラ」でも、効果が大きいことがわかりました(写真上)。これが発生条件1.「チャフの残りやすい豆で挽く」です。

 チャフが混じらなくなった結果、受皿を開けたときの香りが素晴らしくなりました(逆にチャフが残ったホッパーの中は、思わず顔をしかめるほど、ひどい臭いがします)。

 なぜチャフが混じらなくなったのか考えてみました。

  ①形状の違い-引き込む力が弱いこと
 形状から考えた視点です。螺旋状の刃は、粉を引き込む動きをしますが、この「F101相似形内刃」は上部で砕き、下部で粒度を整えるだけで「引き込む」働きがありません。粉は「自然落下」するだけです。このため上部で豆を砕く際、軽いチャフは弾かれ、挽き込まれずに残ったのだと思います。また、セラミックスリムMSS-1の外刃の高さが15mmしかないことも関係していると思います。
 
 ②素材の違いーPA(ナイロン)で作成したため
 にわかには信じられない話かもしれません。実際に挽かないとわからないのですが、質量が軽い素材のせいか、挽いているときになんというか「豆が弾かれている」という感触を強く感じるのです。素材が無関係とは、とても思えないほどの違いです。
 似たような形状でも、金属とセラミックでは、挽き心地は大きく異なります。今回の現象も、PA(ナイロン)からセラミックの刃にしたら、再現しなくなる可能性は十分にあります。①形状の違いに比べ、説得力に欠けるように思えますが、形状の違いだけでは説明が点かないところがあるというのが印象です。

 ここまで考え、ブログにアップしようと思った所で、問題が発生しました。

 チャフがホッパーに残らず、豆と一緒に挽かれてしまうようになりました。

 理由は、豆を「一度に大量に」挽いたことです。今まではテストのために、一度に挽く豆はごく少量でした。砕かれた豆から飛び出したチャフは周囲のホッパーに付着し、そのまま挽かれずに残りました。しかし、大量に豆を入れると、チャフはまだ挽かれずに上に覆いかぶさっている豆に付着してしまい、一緒に挽かれてしまったのです。これがチャフがホッパーに残らず、豆と一緒に挽かれてしまうようになった原因でした。

 この現象を避けるためには、ホッパーの豆を片寄して、チャフの逃げ場を作ることが必要です。これが、残りの条件

2.一度にホッパーに入れる豆の量は一杯分(10g程度)
3.チャフに逃げ場ができるよう、ホッパーに豆のない空間を残して挽く

です。本体を手に持って、自由な姿勢で挽くことのできる小型軽量のディアボロ型ミルならではの利点です。ここでもディアボロ型ミルの優位性が明らかになりました。
ホッパー内部の豆は片寄せした状態で挽きます。上の方に弾かれたチャフが残ります

 どうしたら、安定してチャフを残すことができるようになるのか。本体のみならず、内刃と外刃の形状に工夫の余地はあるのか。作った部品の組み合わせを変えながら、ずっと検証し続けています。

2019年3月21日木曜日

コーヒーミルの刃なのか、歯なのか、臼なのか

この部品は、コーヒーミルの刃なのか、歯なのか、臼なのか?

KONO F101相似形のオリジナル設計 外刃・内刃

先日、刃物の専門メーカーの技術者と話をする機会がありました。

①コーヒー豆を挽くのに適した刃の形状は、どのようなものか
②ミルは豆を切っているのか、砕いているのか
③この部品は刃なのか、歯なのか、臼なのか

について聞いてみました。私にとっては大変明快な答えが出たので、それを書きたいと思います。

①コーヒー豆を挽くのに適した刃の形状は、どのようなものか

「どのような形状にしたいのか」によって刃物の形は異なる

 私としては「最適な形状」というものがあるのではないかと思ったのですが、それについては、「どのような形状にしたいのか」によって刃物の形は異なるという、極めて当たり前ですが、非常に難しい答えが返ってきました。
 そういえば、私は今まで「挽いた豆をどのような形にしたいのか」については考えたことがありませんでした。いったん、「粒度を揃える」という質問でお茶を濁すことにしました。

 固くて大きなものを細かくするには、二段階経る必要がある。第一段階である程度の大きさに砕く、第二段階で粒度を整えるという異なる機能が必要だ。この形状を見ると、上のほうで大まかに粉砕しており、下のほうで粒度を整えている。ちゃんと異なる機能を持つ形状になっているので、問題ないと思うとの回答を戴きました。

②ミルは豆を切っているのか、砕いているのか

どんなミルでも「砕いている」と即答されました。理由は「微粉が発生するから」です。「完全に切断」すると、微粉は発生せず、切断された物体だけになります(紙を例にとるとわかりやすいです。切れ味が良い刃物で紙を切ると紙粉は発生しませんが、だんだん切れ味が悪くなってくると、紙粉が発生するようになります)。微粉が発生するということは、ちゃんと切れていないので、砕かれているか、破断されているからです。微粉の発生しないコーヒーミルは存在しないので、砕いているというのが回答でした。

③刃なのか、歯なのか、臼なのか

刃だと思うとの回答です。歯は歯車など「噛み合うもの」に使うが、これは噛み合っていない。臼については、何とも言えないが、この形状は大きなものを砕き、粒度を整えるという二つの機能を異なる形状で行っているので、違うような気がする。それに臼は明確な形状の特徴(六分画・八分画・反時計回りなど)があるため、「臼機能」であっても、臼ではないだろうとのことでした。
言葉は悪いが「切れ味の悪い刃」というのが適当だと思う。というのが回答でした。

今までずっと疑問に思っていたことが、とてもすっきりしました。

2019年3月2日土曜日

既存のミルの欠点を取り除いた軽快な挽き心地、粉が飛び散りにくいミルを考案する(8)

 先日、3Dプリンターで試作した際、「3D-CADの画面上では、それなりに凹みをつくったつもりですが、実際に見て見ると浅い」と書きました。早速、再設計、作成し直したのですが、試作メーカーに渡すために複数個作っておきました。
 これで挽いてみたらどうなるのか、2~3回なら大丈夫かもしれないと思い、壊れることを前提に挽いてみました。すると、ちゃんと挽けるではありませんか!3Dプリンターによる粉末造形は、思ったよりずっと耐久性があることがわかりました。
 せっかくなので、どんな粉が挽けるのか、粒度を変えて試してみました。

F101の形状を参考に一体型で作成 Ver2
細挽き

 前回のHARIO セラミックスリム・MSS-1を研究する(4)で書いたように、新世代の設計であるHARIO、ポーレックス社製の刃と同じく細かく挽くことができます。私の設計したモデルは、基本設計をF101をベースにしており、オリジナルの刃ではそれほど細かく挽けませんでしたが、細挽きに関してい言えば、アップデートされています。べたっとした感覚はなく、実にふんわりと挽けます。一番最初に挽いたのですが、これなら時間がかかると納得しました(後で間違いだと気が付きましたが)。
細挽き 粒子は非常に細かく、ふわっと挽けます


中挽き

 受皿を開けて挽いた粉を見た瞬間、少々大げさですが感動しました。写真では逆さに開けたので印象が変わりましたが、とにかく粒の揃い方が美しいのです。HARIO MSS-1の改造部品を完全に上回ります。「中挽き」として粒度が適切か否かはともかく、この粗さで挽こうと思った場合の粒度の揃い方としては、非常にそろっています。このミルのベストな粒度なのかもしれません。

中挽き 見た瞬間、粒度の揃い方に思わず感嘆の声が出ました。


中粗挽き

 中挽きに次いで揃っています。中挽きと比較すれば揃い方が粗いように見えますが、これだけを見たら、揃い方に驚くと思います。
中粗挽き 

中挽きほどではありませんが、相当揃っています


粗挽き

ここまで粗いと大きな粒が混ざります。特筆すべきは、細かい粉の割合が非常に低いことです。HARIOセラミックスリムMSS-1(3)の改造部品で試したから言えるのですが、「極端に粗い粒のが出ないようにするために細かい設定にする」のではなく「粗い粒度の粉を挽きたいと思った設定」でこの粉を挽くことができるのです。しかも、他のミルにありがちな、極端に大きく、粗く、意図しない大きな破片が出てくることがありません。

粗挽き 極端に大きく、意図しない粒度の破片は出てきません。

 この刃は当ブログの考える良いコーヒーミルの第六条件である「意図した粒度で挽けること」をかなりのレベルで満たしていると思います。特に中挽きの粒度の揃い方については、特筆すべきものがあります。粗挽きの際も「大きく粗い、意図しない粒度の粉が出てくること」がありません。

 動作は非常に滑らかです。1号機よりもさらに滑らかになり、全くと言って良いほど引っかかりがありません。常に同じ負荷で回すことができるため実に快適です。さらには無抵抗と言って良いほどの軽さで最初から最後まで回すことができます。もう少し重くてもいいかなと思えるほどです。
 しかし、挽くのに気が遠くなるほど時間がかかります。感覚的には5倍以上です。いくら挽き続けても終わらない気がします・・・。
 以前の研究から、豆を引き込む量と動作の軽さは大きく関係することがわかっています。しかし、それにしても時間がかかります・・・。挽く速度を上げるために、引き込む豆の量を多くしたいと思います。しかし、この問題を解決するにはスペースを捻出しなければなりません。すでにギリギリの寸法で作っているので、どこからスペースをねん出するのか、頭の痛い問題です。

2019年1月14日月曜日

HARIO セラミックスリム・MSS-1を研究する(4)

前回、HARIO セラミックスリム・MSS-1について、改造した部品をつけるとどうなるのか、挽いた粉の品質を比較すると書きました。早速挽いてみたので、結果をレポートします。
HARIO セラミックスリム MSS-1 改造部品群(白)
細挽き

 改造部品を使用しても、ほとんど変わりません。よく最近のミルの売り文句に「ここまで細かく挽けます」といった性能のアピールがありますが、あまり意味がないものと思うようになりました。というのも、ほとんどの最近のディアボロ型のミルに採用されているHARIO社、ポーレックス社のセラミック刃を使ったミルであれば、ギリギリまで隙間をなくせば(空廻しすると刃のこすれる音はしますが)、このくらいの細かい粉は挽けるからです。両社の刃を使用するミルであれば、すべてこのレベルを満たすと考えて良いでしょう。



MSS-1 細挽き比較 左オリジナル 右改造
中挽き

 改造部品の使用で明らかに変わります。改造後のモデルの方がずっと粒度が揃います。
 写真で見ると、右(改造モデル)の方が細かい粉が多いように見えますが、実際には左(オリジナル)の方が(求める粒度より)細かい粒度の粉の割合が多くなっています。右(改造モデル)のほうが、「中挽きの大きさの粉」が占める割合がずっと多いのです。粉を揺さぶると粒度の粗いものが上の方に浮き出してきますが、左のオリジナルの方は、そのような状態です。
MSS-1 中挽き比較 左オリジナル 右改造
右の方が細かい粉が多いように見えますが、実際には左の方が細かい粒度の粉の割合が多くなっています
今回、粒度の設定は刃の隙間をどうするかではなく、挽いた粉の粒度から判断するようにしました。狙った粒度の粉が最も多い割合の設定が「求める粗さの設定」とした訳です。
 オリジナル(左)では、粒度を粗めに設定すると、すぐに大きな粒が混じります。そのため、大きな粒が混じらず、中挽きの粉が多くなるようにするために、ずいぶん細かい粒度に設定しています。
 写真で見ると、つい大きな粒に目が行きますが、実際にはそれほど多い割合を占めるわけではありません。中挽きに挽いたように見える粉でも、均してみるとそうでもないのです。設定はどうであれ、求める粒度の粉が得られれば良いのですが、オリジナルで中挽きの粒度を求めると、細かい粒度の粉が多く含まれてしまいます。

粗挽き

 中挽きよりもさらに改造部品の効果があります。写真で見ると、右(改造モデル)も左(オリジナル)も変わらないように見えますが、左(オリジナル)は、想定以上の大きさの粒(赤丸)が混じるようになり「制御範囲を超えた」という印象を受けます。先ほど中挽きの説明で、「オリジナル(左)では、粒度を粗めに設定すると、すぐに大きな粒が混じります」と書きましたが、粗挽きの設定は非常に難しいです。右下のあたりに細かい粉(青丸)が多く含まれていますが、これは中挽きの設定と大して変わらないためです。わかりやすくするために今以上に粗くすると、あまりに大きな粒ばかりになり、「悪意」を感じさせる写真になってしまいます。それは私の本意ではありません。
 右の改造モデルにも、もちろん細かい粉は含まれますが、割合が異なります。大きな粒も混じっているのですが、狙った大きさ以上の「制御範囲を超えた」粒は出ていません。粗挽きの粉が挽けているという印象を受けます。
MSS-1 粗挽き比較 左オリジナル 右改造
青丸部分の粉が最も多いにもかかわらず、想定以上の大きな粒(赤丸)が混じる


評価
 改造部品を使用することで、実用範囲の粒度についてコントロールできる範囲が広くなり、かつ、求める大きさの粒が多くなる粉を簡便に得られるようになりました。
 こうしてみると、限界点を超えた途端、突然大きな粒が混じり始めるオリジナルモデルは、粗挽きの側で制御できる粒度の範囲が狭いことがわかります。これでは、得られたベストポジションを失わないため、分解掃除をためらってしまいます。洗った後に、また時間をかけて何度も調整することになるのかと思うと、分解掃除が億劫になるのも無理もないと思います。せっかく分解掃除がしやすく、簡便な構造を持つ本機の長所を生かすことができません。
 改造部品は、分解掃除のハードルを下げます。この部品は、当ブログの考える良いミルの第六条件「意図した粒度で挽けること」を得るという直接的な効果だけでなく、HARIO セラミックスリム・MSS-1を研究する(3)で明らかになった第三条件の「挽き心地が軽いこと」、このミルの圧倒的に素晴らしい長所である第二条件「分解・掃除・組立がしやすいこと」をさらに推し進めると言えると思います。

+++++++++++++++++++

 しかし、粉の比較写真は非常に難しいです。言葉による説明がないと理解が及ばないのでは失格ですね。また、何度も挽いていると大きな粒をなくそうとする意識が働くようで、気が付くと細かい設定になっています。その結果、比較と言いながら、あまり変わらない写真になってしまいました。
「わかりやすい絵」にすることも可能ですが、悪意が感じられたり、どうにも嘘っぽくて、私の性分に合いません。挽けばわかりますが、「制御できる範囲が広くなり、求める大きさの粒が多くなる」という効果で、わかりやすい絵などほとんどないのです。