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2020年5月21日木曜日

既存のミルの欠点を取り除いた軽快な挽き心地、粉が飛び散りにくいミルを考案する(10)

 ずっと更新ができませんでした。理由は、未だにセラミックの刃の生産に目途が付かないこと、最新型のミルをと比較してコスト面で太刀打ちできないと思ったためです。

 以前、ときどき読者様より御教示頂いた最新型のミル、COMANDANTE C40TIMEMORE NANO1ZpressoQ2Helor101(公式サイトは削除されていました)を触ってみました。どれも素晴らしい品質です。機構面でも、ダブルベアリング機構を搭載してブレをなくしており、この点で私の考えるミルに優位性はありません。コストの削減方法についても、実に良く考えられています。そもそもコストのかからない形状で設計し、品質を落とすことなく安価に製造できる形状を選択した時点で、彼らの方が優れています。しかも、その形状が必然であるように見せ、コストがかからない形状であることを気付かせない・・・。会長の工場に通い、コスト削減の方法について考え抜いた経験から、彼らのデザインがいかに練り上げられたものであるか良くわかります。くびれを持つディアブロ型は、この形を選択した時点で、すでにコスト面で絶対に太刀打ちできません。

 ではどのくらいのコストでできるのか?自分でも考えてみました。
新設計のミル(3DCADによるレンダリング)
内部機構は今までのものと同じです。本体と受け皿のみ変えています。こうしてみるとセラミックスリムに似ていますね。

 継ぎ目のない一体型のハンドルを実現するための形状設計が終わった時点で、ザッセンハウス(Zassenhaus)のQUITOというモデル(これも廃番?)が、サイズは別にして外観面でほぼ同じ特徴(細身でくびれのない本体、継ぎ目のない一体型のハンドル、切れ目を入れたフタ、ガラスの受け皿)を備えたものとして存在しているのを知りました。この衝撃は大きく、すでに存在するなら、新たに作る必要はないではないか。しかも、既存品より高い価格では売れないではないかと言う気持ちになり、しばらくミルの設計から遠ざかってしまいました。


 会長にそのような話をしたところ、勤め人と会社経営者は、そこが違うとおっしゃられました。売れないということはない。なぜなら売れない理由を徹底的に潰してから売るから。絶対の自信があるものしか売らない。この問題を正面から解決しない限り先はない。絶対の自信を持ったものを作り、それを世に問おう。そのためにずっとやってきたのではないか。それらのミルに欠点はないのか、コーヒー趣味人さんが考えてきた条件をすべて満たしているのか。満たしていないのなら、満たしたものを作ろう。考えに考え抜いて、絶対の自信のあるものを作ろう。それは間違いなく、世に問う価値があるはずだ。

 会長はそうおっしゃいました。

 その通りだと反省しました。

 最新型のミルCOMANDANTE、TIMEMORE、1ZpressoQ2、Helor101以前、私が考えた7つの条件を満たしているのか。これを上回る性能を持てば、存在する意味があるのではないか。もう一度、原点に立ち返って考えてみました。

第一条件 古い豆、粉がミルの中に残らないこと
第二条件 分解・掃除・組立がしやすいこと
第三条件 挽き心地が軽いこと
第四条件 周囲を汚さないこと
第五条件 収納しやすいこと
第六条件 意図した粒度で挽けること
第七条件 満足感の高いこと

 どのミルも水洗いによる分解掃除を前提としていないため第ニ条件を満たしません(Helor101は、洗えると思いますが)。また、精密な固定を実現するため、必ずしも誰でも分解・掃除・組立がしやすいとは言い難いです(なにしろ、カリタのダイヤカットミルですら、プラスネジが3本あるだけで、分解が大変と言う人がいるのです・・・)。最新型のミル群も使い始めは良いですが、一般的な使い方をする限り、一ヶ月後、清掃した別のミルと、どちらがおいしい粉を挽けるか比べたら、間違いなく清掃したミルです。


 一方、私の考えるミルは、ハンドルの収納ができないため、最新型のミル群に比べ第五条件を満たしません。
 ではなぜ一体型のハンドルにこだわるのか。それは人間がいろいろな姿勢で手回しをする限り、荷重が図の赤丸部分に集中するからです。

 手回し式ミルは、必ずブレやガタがここから発生します。その結果、長い使用期間の間には部品の組み付けが悪くなり、ハンドルにガタがくるか、内刃のブレにつながるか、あるいは両方になります。
 今までの経験から、外刃、内刃を固定すると、豆の逃げ場所がなくなり、挽き心地が重くなります。このことは、実は外刃、内刃がズレることで豆が挽きやすい位置に移動していることを意味します。精度を良くするために外刃、内刃を固定した機構を持つミルは、そのまま固い挽き心地に直結するのです。
 最新型のミル群は鋭い切れ味の刃でこれを回避していますが、私の採用するF101相似形の刃は、鋭い切れ味を持ちません。引きこむ量を少なくすることで負荷を低くしていますが、細身の本体では豆の逃げる場所がありません。挽き心地が重くなる可能性があるのです。実機で挽き心地の重さを確認していない現在、ハンドルに負荷をかける設計をするわけにはいきません。

 また、ハンドルのガタは操作感を悪くします。ネジで固定すれば、ブレを防ぐことはできるではないかと思われる方もいると思いますが、過去にセラミックスケルトンの使用したときの経験から、頻繁に分解しないとネジが固く締まり、容易に分解ができなくなることはわかっています。

 水洗いができ、安価で簡単にハンドルを確実に固定、分解できる方法があればよいのですが、思いつきません。ロックピンは有力な手段ですが、高いですし、水洗い後に内部に水が残る不安があります。六角穴ではガタが来ることはセラミックスリムで経験済みです。ヘクサロビュラは効果的だと思いますが、安価にできるのでしょうか。

 もはや、ダメだとわかっていることを採用する選択は私にはありません。従来型のミルに加え、もう一つの選択肢として、この形状も考えたいと思います。

2016年10月15日土曜日

ザッセンハウスの刃とF201のボディを組み合わせる(5) & 貝印 THE COFFEE MILLを研究する(3)

前回、急に思い立った、The Coffee Millとの比較です。


 比較項目は、F201+ザッセンハウス同様、挽き時間(ハンドルの回転回数)、挽き心地、粒度のバラツキについて粗挽き・中挽き・細挽きを、同じ豆、同じ量で検証します。

豆の種類 : アラビカブレンド深煎り
豆の量   : 約10g カリタコーヒーメジャーカップ#44059 すり切りいっぱい

①The Coffee Mill
                           回転数       挽き心地                                       バラツキ     
 ①-1 粗挽き:  25回  最後まで滑らか。非常に軽い。              大きな粒が混じる 
 ①-2 中挽き:  32回  最後まで滑らか。トルクが一定。            ほぼ粒度が揃う
 ①-3 細挽き:  82回  最後まで滑らか。トルクが一定。            非常に粒度が揃う 

②F201+ザッセンハウス(スタビライザーあり)
                           回転数       挽き心地                                       バラツキ     
 ②-1 粗挽き:  26回  最後まで滑らか。非常に軽い。               大きな粒が混じる
 ②-2 中挽き:  35回  最後まで滑らか。                                 ほぼ粒度が揃う
 ②-3 細挽き:  70回  最後まで滑らか。途中で固いことがある。 非常に粒度が揃う


★粗挽きの評価

 最新のThe Coffee Millでも大きな粒が多く混じります。しかし、シャフトをガッチリと固定しているだけあり、かなり粒度は揃っています。刃は既存のポーレックスのものを流用しているわけですから、固定することの大切さがわかります。

 挽き心地は、粗い粉を挽くときは、どの機種でも軽くなります。回数も変わりません。The Coffee Millは、底面を固定しないと使いにくいのですが、まったく苦になりません。

ザッセンハウスの刃とThe Coffee Mill 粗挽き比較.JPG
左がThe Coffee Mill 右がF201+ザッセンハウス


★中挽きの評価
 
 最新のThe Coffee Millでも大きな粒が多く混じります。挽いたときはわかりませんでしたが、写真で見ると、両者ともかなり粗いものが多く混じっています。

 挽き心地は、The Coffee Millの方が滑らかです。一回も豆を噛みこむ感覚なしに、最後まで同じトルクでひっくことができます。これには驚きました。ホッパーの形状もだいぶ寄与していると推測されます。空廻しの時は、F201改の方がずっと滑らかですが、実際に豆を挽いたときは、The Coffee Millに軍配が上がります。もっとも使用者数が多いと推測される中挽きの品質が高いことは、大きなアドバンテージだと思います。

ザッセンハウスの刃とThe Coffee Mill 中挽き比較
左がThe Coffee Mill 右がF201+ザッセンハウス
 ★細挽きの評価

 今回も刃がガリガリとかみ合わないギリギリの隙間、刃の限界点です。

 挽き心地は、The Coffee Millの方が滑らかです。というか、トルクが常に一定なので滑らかに感じます。今までいろいろな形状の刃を試作してきましたが、急に重くなったり、軽くなったりすることがなく、一定のトルクで動作するものに良い印象を抱きました。そういう意味では「挽くときにかかる力・重さ」は、(極端なものでなければ)あまり意味がないのかもしれません。

 粒度の比較ですが、申し訳ないのですが、これが良くわかりません。写真では両者とも、非常に細かく粒度が揃っているように見えます。ザッセンハウス+スタビライザー有りの細挽きは、「ふわっとした粉が挽けた」という感じがすると書きました。「THE COFFEE MILL」で挽くとどうなるのか、とても楽しみにして挽いたのですが、静電気が凄く、受け皿にびっしり付着してしまい、ふわっとした粉なのかはわかりませんでした。The Coffee Millの受け皿の素材であるAS(アクリロニトリルスチレン共重合体 SAN)は、まったくお勧めできないです。

ザッセンハウスの刃とThe Coffee Mill 細挽き比較
ザッセンハウスの刃とThe Coffee Mill 細挽き比較

The Coffee Mill 細挽き 受け皿
The Coffee Mill 細挽き 受け皿  周囲(内側)にびっしり微粉が付着しています
 The Coffee Millは、「雑味の元となる微粉が出にくい構造を新たに開発しながら、挽きやすさと・・・」、と開発コンセプトでもうたうだけあり、大変安定した品質の粉を得られることがわかりました。現時点で、普通に手に入れることのできる最高のミルの一つであることは間違いありません。いろいろ書きましたが、御自身で豆を挽かれるコーヒー好きの方には、自信を持って勧められます。

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 手前味噌になりますが、空廻ししたの時の滑らかさで、改造したF201に比べられる機種など、どこにもありません。ボールベアリングを使った滑らかさ、音もなく、軽くハンドルに触れるだけで何周も廻る様子は、純粋に持つ喜びを満足させます。

 挽いている時にも、The Coffee Millを上回る滑らかさを得ることのできる刃は存在するのか。今後の検証が楽しみです。

2016年10月8日土曜日

ザッセンハウスの刃とF201のボディを組み合わせる(4)

 「君の名は。」ばかり更新して、ザッセンハウスの方は、いったいどうなっているのか?とお叱りを頂戴しまして、今夜は連投をいたします。今度こそ、F201にザッセンハウスの刃を組み込んでみた結果のお知らせです。

 比較項目は、スタビライザーの有無で、挽き時間(ハンドルの回転回数)、挽き心地、粒度のバラツキについて粗挽き・中挽き・細挽きを、同じ豆、同じ量で検証します。

豆の種類 : アラビカブレンド深煎り
豆の量   : 約10g カリタコーヒーメジャーカップ#44059 すり切りいっぱい

①スタビライザーなし
                           回転数       挽き心地                                       バラツキ     
 ①-1 粗挽き:  24回  最後まで滑らか。非常に軽い。              大きな粒が混じる 
 ①-2 中挽き:  35回  最後まで滑らか。                                大きな粒が混じる
 ①-3 細挽き:  64回  最後まで滑らか。途中で固いことがある。 粒度が揃う 

②スタビライザーあり
                           回転数       挽き心地                                       バラツキ     
 ②-1 粗挽き:  26回  最後まで滑らか。非常に軽い。              大きな粒が混じる
 ②-2 中挽き:  35回  最後まで滑らか                                  ほぼ粒度が揃う
 ②-3 細挽き:  70回  最後まで滑らか。途中で固いことがある。 非常に粒度が揃う


★粗挽きの評価

 スタビライザーの有無に関係なく、かなり大きな粒が混じっています。皆さんの予想通り、スタビライザーなしの方が、より大きな粒が多く混じります。

 挽き心地は、スタビライザーの有無にかかわらず、最後まで非常に軽く滑らかに挽けます。挽くスピードは、スタビライザーなしのほうが若干早いです。たった2回転ですが、最後のほうは、スタビライザーなしの方は急に軽くなるので、早い感じがします。

 ところで皆さんは、どういった粗さの粉を「粗挽き」として認識されているのでしょう。受け皿を開けた瞬間、目に入るのは大きな破片ですが、その量を目安にされているのでしょうか。そうだとしたら、スタビライザーなしの方が「粗挽き」のようは気がします。しかし、自分の狙った粒度の粉が一番多く含まれるように調節しているというのでしたら、スタビライザーありの方が、間違いなく安定した品質が得られます。
 そうだとしても、細かい粒も多々あり、挽いた粉を見れば見るほど、いったい何を持って粗挽きとするのか?という疑問が浮かび上がります。

ザッセンハウスで挽いた粗挽きの粉
左がスタビライザーなし 右がスタビライザーあり


★中挽きの評価

 写真ではもわかる通り、スタビライザーなしの粉が粗いものが多く混じっています。明らかにスタビライザーの効果が表れています。

 挽き心地は、スタビライザーの有無にかかわらず、最後まで滑らかに挽けます。ただ、どの粒度でもそうでしたが、途中で、豆を大量に噛みこむ感覚があり、重くなる時があります。挽くスピードは、何回か試しましたが、スタビライザーの有無に関係なかったです。ただ、粗挽き同様、最後のほうは、スタビライザーなしの方は急に軽くなるので、早い感じがします。

今回、狙った粒度が出ているかを見るために、いろいろ試したのですが、特に中挽きの場合、一度挽いたものを、もう一度同じ粒度で挽くと、ほぼ狙った粒度のものが得られます。一度に大きな力がかかることがないため、刃がぶれることが少ないからだと推測されます。スタビライザーありの方が顕著に効果が表れます。
ザッセンハウスで挽いた中挽きの粉
左がスタビライザーなし 右がスタビライザーあり

★細挽きの評価

 前回も書きましたが、刃がガリガリとかみ合わないギリギリの隙間です。細挽というよりは、刃の限界点です。

 挽き心地は、スタビライザーの有無にかかわらず、最後まで滑らかに挽けます。挽くスピードは、スタビライザーなしのほうが6回ほど早いです。ただ、60回位でスタビライザーなしの方は急に軽くなるので、絶対的な回数が多いこともあり、もっと早い感じがします。

 写真ではスタビライザーの有無にかかわらず、非常に細かく粒度が揃っているように見えますが、実際には、受け皿を開けた時の印象が異なります。スタビライザー有りの細挽きは、本当に「ふわっとした粉が挽けた」という感じがします。これは、今まで感じたことのない感覚です。
 ただ、今までこんなに細かく挽くことがなかったので、そのせいかも知れません。と、ここまで書いて、「THE COFFEE MILL」で挽くとどうなのか比較してみようと思いました。

ザッセンハウスで挽いた細挽きの粉
左がスタビライザーなし 右がスタビライザーあり

 特筆すべきは、周囲があまり汚れなかったことです。今回は、スタビライザーの取り外し、取り付けがあったので、若干粉が周囲にこぼれましたが、それでも本当にわずかです。写真は細挽き直後のものですが、どれほど少なかったか、おわかりかと思います。

ザッセンハウスの刃をつけて挽いた直後の様子
ザッセンハウスの刃をつけたF201改で挽いた直後の汚れ具合
 今回のテストは、ほぼ時間を置かずに行ったのですが、一番の印象は、これだけ連続して挽いても苦にならないということでした。「本物のザッセンハウス(ラパス・167)」でこのテストを行ったら、間違いなく途中で嫌になります。周囲が汚れないことも相まって、ディアボロ型ミルの形状効果は本当に大きいと感じます。

2016年10月1日土曜日

ザッセンハウスの刃とF201のボディを組み合わせる(3)

 大変お待たせいたしました。F201にザッセンハウスの刃を組み込んでみた結果のお知らせです。


いきなりで申し訳ないのですが、比較を開始する前に、まずは、作った部品群がうまく機能するか検証したところ、プジョーがうまく動作しないことが判明しました。

 プジョーの内刃は、内部まで焼きが入っており、後から加工することが非常に困難です。そのため、工作上の工夫を考えていただきました。

「この構造は旋盤等で使用する回転刃物の固定にも使用されることもあるそうで、その機構とロック強度はかなり強固であることが想像されます」とあり、私もまず大丈夫だと思っていたのですが、どうも途中で空回りするのです。負荷をかけないときは、かなりの力で廻してもびくともしないのですが、コーヒー豆ってそんなに固いのでしょうか・・・。

 「挽くこと」はできるのですが、粒度ごとのハンドルの回転数、挽いたときの感触など官能部分での比較ができません。部品を作っていただいた自作野郎様と相談中です。

 とりあえず、ザッセンハウスについて、組み立てた際の写真と、豆を挽いた写真を撮りましたので、それを報告するようにします。粒度など、これより粗くとか、細かくとか、リクエストを戴けると助かります。


ザッセンハウスを組み込んだ状態

コーノ式 F201 zassenhaus
F201とザッセンハウスの刃を組み込んだ状態




①「中挽き」で挽いてみました。私がいつも挽いている粒度です。印象としては最初に粒度の揃わない、大きな粉が出てきて、その後だんだん落ち着いてくるといった感じです。これは、どのミルでもそうですが、豆を砕くときにかかる力が強すぎて、内外の刃がそれぞれねじるように動かされ隙間ができるので、そこから大きな破片が出てきてしまうといった動きのようです。刃の隙間は、写真程度で挽いています。色目が明るいのは、細かい粒子まで確認できるようにするためです。





zassenhaus シャフト両抑え 粗挽き
中挽き(?)





②細挽です。刃がガリガリとかみ合わないギリギリの隙間で挽いてみました。細挽というよりは、刃の限界点といった感じでしょうか。

 ザッセンハウスの刃は、実に細かく挽くことができます。今回、プジョー、F101を機能検証のために挽いてみたのですが、細挽きについては、ザッセンハウスがダントツにきれいです。


zassenhaus シャフト両抑え 細挽き
細挽き(?)

 今回、改造パーツを作りましたが、材質、形状などいろいろ課題があることがわかりました。おいおい書いていきますが、「失敗したなぁ」と思うことが多いです。

 理想のミルの形状をどうすべきか、非常に貴重なデータとなりました。

2016年9月3日土曜日

ザッセンハウスの刃とF201のボディを組み合わせる(2)

 前回の投稿からだいぶ経ってしまいましたが、部品群ができましたので、報告いたします。
シャフトは自作野郎さまに作成していただきました。実はザッセンハウスのみならず、プジョー、FISCO、F101、F201用のシャフトも作成しておりました。まったく情けない話なのですが、すべての部品で図面に不備があり、うまく機能しなかったのを、何度も作り直して、ちゃんと組み合わさるようにしてくださいました。このミルが機能するのは間違いなく、自作野郎様のおかげです。改めて感謝申し上げます。
左からF303、F202、F101、FISCO、プジョー、ザッセンハウスの改造部品

 早速、組み合わせて動かそうと思ったところで、下側からシャフトを支えるスタビライザーを作るのを忘れていたのを思い出しました。このスタビライザーは、ザッセンハウス、プジョー、FISCO、F101の刃で共通で使えるよう考えていたのですが、度重なる設計不備のご連絡をいただく間に、自身の設計に不安を覚え、全ての部品が届いてから、寸法に間違いないのを確認した上で、作ろうと思っていたのでした・・・。
 先ほど問題ないことを確認したので、発注をすることにしました。本当は、これも自作野郎さまにお願いをしていたのですが、HDPE・PP・POMなどの素材による、この形状の部品は難しいとのことで、プロの試作業者に頼むことにしました。

 このミルで比較する内容ですが、以前、「KONO式(コーノ式)ミル F101とF303の刃を比較する」で、宇宙の旅人さまより、「(F101とF303の刃で)同じ豆の同じ量、同じ粗さで、挽き時間、挽き心地、粒度のバラツキ比較などして頂けたら幸いです」との要望をいただいておりました。

今後の比較項目を考えてみました。

・ザッセンハウスの刃(スタビライザー有無)
・プジョーの刃(スタビライザー有無)
・F101の刃(スタビライザー有無)
・F303の刃(スタビライザー有無)
・F201の刃(スタビライザー有無、スタビライザーを作っていないので、先になる可能性があります)
・FISCOの刃(スタビライザー有無、変換アダプターを作っていないので先になる可能性があります)

の機種について、それぞれ、空回ししたときの感触の違いと、同じ豆、同じ量で

・同じ粗さ(粗挽き・中挽き・細挽き)で、それぞれ挽き時間(ハンドルの回転回数)
・同じ粗さ(粗挽き・中挽き・細挽き)で、それぞれ挽き心地
・同じ粗さ(粗挽き・中挽き・細挽き)で、それぞれ粒度のバラツキ

を試してみたいと思います。比較項目にリクエストなどございましたら、コメント欄などでご連絡ください。

 ただ、粒度(粗挽き・中挽き・細挽きの粗さ)については、個人差があるのと、それが本当に狙った粒度なのかわからないところもあるので、時間、バラツキは厳密な比較にならないことをお断りしておきます。特に粗挽きは、今までの経験から大きな粒度の粉が多くなるほどバラつきが目立ち、自分が挽いている粗さが、何なのかわからなくなることがありました。

2016年5月8日日曜日

ザッセンハウスの刃とF201のボディを組み合わせる(1)

 以前、F303の刃とF201の本体を組み込んだことがございました。この記事は大変な好評を博しました(といっても、このブログ自体、読者が非常に少ないので、実は数人かもしれないのですが・・・)。

 今回は、ザッセンハウスの刃をF201に組み込んでしまうという、これまた皆さんの心の叫びを実現する企画です。

 KONO式ミルのファンのみならず、コーヒーミルをお好きな方なら、誰もが一度は考えたであろう、ザッセンハウスの刃とF201の本体という「ミルの理想形」を作ってみることにします。

 まず、組み込むことが可能かを確かめます。
  • 外刃の大きさは問題ありません。F303が外刃が組み込めるのですから、大丈夫です。
  • シャフトは、最初のザッセンハウスの改造の段階で切っていますので、新たに作ることにします。
 さらに、F303同様、刃の下にもシャフトをつけ、上下から固定する構造に変更しました。これで、オリジナルのザッセンハウスよりも、精度良く豆を挽くことができます。

 図面を描いて、HDPEで作成しました。F303の時はPPでしたが、これは素材による違いを検証したかったためです。

ザッセンハウス用 F201アダプター(左)とスタビライザー用の下シャフト(右)


 シャフトは自作野郎さまに作成していただきました。図面通りに作っただけでは、うまく機能しなかったであろう状態を、ちゃんと組み合わせてくださいました。私のような素人に、毎回、大変親切で丁寧なアドバイスを下さいました。このミルが機能するのは間違いなく、自作野郎様のおかげです。改めて感謝申し上げます。

 部品作成に当たり、本体の部品群をお渡ししているので、帰ってきたら、組み合わせた写真の記事を書きます。

2014年12月13日土曜日

コーヒーの味の評価と良い手動式ミルの条件について 当ブログのスタンス(2015/4/25 条件を追加)

 味の評価について、今まで何も書きませんでした。ここで、改めて当ブログのスタンスを明らかにしたいと思います。なぜ、一番重要な味の評価をしないのか。

理由は、わからないからです。

 客観的な評価をするには、限りなく似たような条件を作りだすことが必須だと思っています。誰が行っても、同じ環境で行えば、同じ結果が出るというのでなければ、科学的とは言えません。

 ミルを比較してわかったことは、似たような形状の刃でも、本体の大きさ、設置の仕方で挽き心地が大きく異なる事(逆も真なりで本体はほぼ同じでも、刃が異なれば挽き心地は大きく異なります)でした。 さらに言えば、同じ個体を使っても、設置の仕方ひとつで全然違ったものになります。

 味は、さらに繊細で、微妙なものだと思います。

 厳密にいえば、比較するなら同じ釜で焙煎した、同じロットの豆を、同じ粒度で、同じ温度、同じ方式のドリップ、同じ形状のカップ、同じ温度で飲むことが必要でしょう。しかし、これは、比較対象が多くなればなるほど、現実的ではありません。同じ温度に至っては不可能といってよいでしょう。しかし、全て「同じ」ではないにせよ、可能な限り条件を近づけようとするのは、まじめに比較をしようとする者にとっては常識だと思います。
 さらに、前提としてコーヒーの味が分かることが必要です。私は官能検査の訓練を受けたわけでもなく、特別にコーヒーの味に詳しいわけではないという自覚があります。

 では、そんな私が何を持って良いミルとするのか。

 コーヒーの味は 煎りたて・挽きたて・淹れたての「三たて」がおいしいとされています。そのうち、コーヒーミルにできるのは、挽きたてです。古い粉が混ざったコーヒーでは、挽きたてのコーヒーとは言えないでしょう。それは、たとえ一杯飲むごとに豆を挽いていても、ミルの中に古い豆、粉が残っていたら、同じことだというです。古い豆、粉がミルの中に残らないこと、これが第一の条件です。

 第二の条件は 、分解・掃除・組立がしやすいことです。これは第一の条件と同じように思えますが、若干異なります。第一の条件は毎回分解しなくとも、粉が残りにくい構造にすることです。現実的には、毎回分解掃除をすることはないでしょうから、分解しなくとも粉が残りにくくすることが一番重要です。第二の条件に上げたのは、分解掃除をしたくなったときに、それが気軽に行えるようにすることです。これが億劫になると、いつまでも古い粉が残り続けることになります。また、構造的に分解・掃除・組み立てがしやすいのはもちろんですが、材質的にも柔らかすぎて変形してしまうものは避け、錆びにくい材質を使うことも重要です。第一の条件、第二の条件とも、古い豆、粉をミルの中に残さないという目的は同じですが、ミルの構造としては別条件です。

 第三に、挽き心地が軽いことです。当ブログを始めようと思ったきっかけは、知人にコーヒーミルを贈ったのに、疲れるから使うのをやめてしまったことでした。どんなにおいしいコーヒーが挽けるミルでも、使われなくては意味がありません。軽快な挽き心地は、手動式ミルの必須条件と考えます。

 第四に、周囲を汚さないことです。いろいろなミルを使ってみて思ったのは、想像以上に周囲が汚れることです。コーヒーを一杯入れるだけで、いろいろなところを掃除しなければいけないのでは、使うのが億劫になるでしょう。周囲を汚さないことも、良いミルの条件です。

 第五に、収納しやすい事です。あまりに大きかったり、食器棚に収納しにくい形状では、邪魔になるばかりです。気軽に使いたいと思えるようにするには、一般の家庭事情に合わせた形状も考慮すべき条件と思います。

 第六に、意図した粒度で挽けることです。いろいろなミルを使った結果、意外と粒度にばらつきがあることに気がつきました。特に挽き始めのころ、大きく粗い、意図した粒度以外の粉が出てくることがあります。どのミルにも調節機構があるにも関わらず、それが機能しないのは、なんらかの問題があるはずです。機械の基本機能として、意図した粒度に安定して挽けることも良いミルの条件です(2015/4/25追加 「第七の条件」にせず、すみません「満足感の高さ」だけが抽象的なので、最後の条件にしたかったためです)。

 第七に満足感の高いことです。この項目だけが抽象的なものになりますが、HARIOのミルを研究しているときに認識しました。いかにもおいしそうなコーヒーが挽けそうだという気持ちにさせることは、嗜好品だけに大変重要です。それがデザインなのか、ブランドなのか、何かはわかりません。おいしいコーヒーを入れてもらったという経験、思い出であることもあるでしょう。
 コーヒーを飲もうと、ミルを取りだす時から気持ちが高まり、挽いている時もちろん、挽き終わった後も飲む時に横に置いて眺めたい。たとえ挽かない時でも、持っているだけで豊かな気持ちになれるミル。矛盾した話ですが、これは前項に挙げた1~6を凌駕します。どんなに欠点の多いものでも、気持ちが豊かになるものは、それだけで価値があるものです。

 当ブログの作成するミルは、「過剰品質」を目指したいと思います。愛情と高い志で、持つ人はもちろん、見る人の心を豊かにすることを目指します。

単純だと思われるミルの設計ですら、困難の連続です。

 その中で、何度か一流の職人と出会う機会がありました。キサゲの名人、伊勢神宮の式年遷宮に神宝を奉製した職人、名前を書けば、誰でも知っているような世界的な絞り職人・・・。世界的な絞り職人に紹介してくださるとのお話は、結局お断りしました。

 私のしていることは、極論を言えば、既存の製品のコピーを作るだけ。それもいくつ作るかわからないほどの少ない個数で、コストの話しかできないというものです。有名人会いたさに、そんな人間がノコノコ出て行ったのでは、紹介者の顔までつぶしてしまいます。

 個人で資金も潤沢でない私が、彼らに認めてもらうためには、作る製品はもちろん、自分にも魅力がなければなりません。何のために作るのか、明確にする必要がありました。
 
 動機、善なりか

 世の中に、その製品を必要とする人がいるか。その人のことを思って、仕事ができるか。

 答えは、善なり。両方に合致すると言い切れます。私は機能、形状はもちろん、愛情と高い志で、持つ人はもちろん、見る人の心を豊かにするコーヒーミルをつくることを目指します。


 サン=テクジュペリの「夜間飛行(堀口大學 訳 新潮文庫 1972年版の文庫本の装丁が美しい)」に‘大地に光る家々のかすかな光を見ながらこう思う。「あの農夫たちは、自分たちのランプは、その貧しいテーブルを照らすだけだと思っている。だが、彼らから80キロメートルも隔たった所で、人は早くもこの灯火の呼びかけに心を感受しているのである」’といった一文があります。
 
 この世の中のどこかにいらっしゃる、価値観を共有した人のための灯を照らしたいと思います。

  

2014年7月31日木曜日

ザッセンハウス・プジョー・KONO式(コーノ式)ミル(F101・F205・F303)の比較 まとめ

 今までザッセンハウス、プジョー、KONO式(コーノ式)ミルF205・F303・F101を見てきました。項目を同じようにして、比較しやすいようにしたつもりでしたが、改めて読み返してみると、結論が出ていない回が多く、冗長という印象があります。 また、適切な刃の形状とは何かという結論も出ていませんでした。ここでまとめたいと思います。

軽快な挽き心地を実現するための条件としてわかったこと。

今まで言われてきたこと

プジョーの特徴
  • 二重螺旋臼刃(内刃)
  • 鋭い刃(内刃)
  • 硬質な金属(内刃)
ザッセンハウスの特徴
  • 二重螺旋臼刃(内刃)
  • 鋭い刃、非常に切れ味が良い(内刃)
  • 硬質特殊鋼製(内刃)
***プジョーとザッセンハウスの比較でわかったこと***
  • ミル本体を固定すること
  • ホッパーの勾配を緩く、段差を作るなどして、引き込む豆の量を少なくすること。
  • ホッパーの勾配を緩すると、豆が飛び散り汚れる。
 KONO式(コーノ式)ミル F205の特徴
  • 均等な螺旋形状ではなく、不揃いな「斜面」(内刃)
  • ほとんどエッジが立っていないと言い切れる、なだらかな刃(内刃)
  • ネットでは、切れ味が悪いとされる鋳物製(内刃)
***F205を加えてわかったこと***
  • 内刃は形状さえ「適切」であれば、鋭さ・硬さは関係ない
  • ホッパーを浅くすることで問題となる汚れやすさも、以下の3点で解決
         外刃上部をすぼめること
         内刃の上部を小さくすること
         内刃を外刃に対して下に配置すること

KONO式(コーノ式)ミル F303の特徴
  • 打ち抜いた板を重ねた形状(内刃)
  • ほとんどエッジが立っていない、なだらかな筋(外刃)
***F303を加えてわかったこと***
  • なだらかな螺旋
  • 外刃も豆が引っ掛かれば、鋭さ・硬さは関係ない
  • 外刃も鋭さをなくして、豆を滑らせることで、さらに軽く、汚れも少なくなる

KONO式(コーノ式)ミル F101の特徴
  • 均等な螺旋形状ではなく、不揃いな「斜面」(内刃)
  • 刃の上部は砕くのみ、下部を螺旋構造にして、豆を引き込む「三重」螺旋臼刃(内刃)
  • ストロークの短い細断部(内刃)
  • 螺旋のない破砕部(外刃)
***F101を加えてわかったこと***
  • 内刃の上部は、砕けさえすれば、均等な形状でなくとも良い(内刃)
  • 外刃の上部も砕くのみ、螺旋は不要(外刃)

まとめ

 KONO式(コーノ式)ミルの最大の特徴は、「螺旋が弱い」ことでしょうか。
  • 螺旋が弱いことで、圧着する力が弱くなる。軽い挽き心地を実現する手段の一つ。
  • 螺旋が弱いことで、引き込む速度が遅くなる。軽い挽き心地を実現する手段の一つ。
  • 螺旋が弱いことで、表面積が少なくなり、一度に豆・破片が接する面が少なくなる。結果、軽い挽き心地になる。
螺旋が弱く、小さな破片が螺旋の中に入り込むことがなくなることで、破片が常に外刃の刃に接触するため、挽き心地が軽くなります。ではここから導き出される「適切な形状」とは何でしょうか。

適切な形状とは、適度に豆を弾くこと、小さな破片が螺旋の中など、内外の刃が届かない場所に入り込まないこと、面で砕くのではなく、点・線で砕くことと言ってよいと思います。
左からF205・F101・F303・プジョー・ザッセンハウス

軽い挽き心地を実現する要素は、
  1. ミル本体を固定すること
  2. ホッパーの勾配を緩く、段差を作るなどすること
  3. 内刃・外刃ともに、鋭さは関係ないこと、逆に、適度になだらかなほうが軽くなること
  4. 内刃・外刃ともに、上部は螺旋を弱くし、過度に豆を噛みこまないこと
  5. 豆を砕く部分は、 面で砕くのではなく、点・線で砕くこと
と結論付けて良いでしょう。


****


 ここで取り上げたミルの特徴、結論は、ブログを書く前から持っていて、わかっていたことを、出し惜しみをしているのではないか、と思われる方もいらっしゃるのではないかと思いますが、そのような事はありません。

 書くことで「わからないこと」が明確になり、もう一度考えなおすことで、書けるようになってきたというのが本当のところです。

 書き貯めてはいます。 しかし、合理的な説明ができないことが多く、とてもわかっているとは言えないことばかりです。そういう点では、「書き貯めている」のではなく、断片的なメモばかりが、たまり続けているというのが実情でしょうか。公開が少ない頻度なのも、うまくまとまらないからです。

 情けない話ですが、真剣に考えてきたつもりでしたが、全然わかっていませんでした。

 今までずいぶん無駄な事をしてきました。自己紹介欄に、考えて考え抜いた時間は無駄ではないと書きましたが、あきらかに真剣に考えていなかった時間を無駄にしてきました。もっと早く書き始めれば良かったと思っています。

2014年5月26日月曜日

KONO式(コーノ式)ミル F101を研究する(1)

 KONO式(コーノ式)ミルのF101です。
KONO F101:管理人
Web上でもなかなかお目にかからない、大変珍しいモデルです。ナミキデザイン様のカタログにある標準モデルでありながら、Thumb Under (サムアンダー)さま昌’sCoffee( Masa's Coffee )さま画像が唯一と言ってよいほどで(2014/1月~5月頃)で、それも管理人所有のモデルと刃が違うなど、謎が多いモデルです。内刃はF303と形状が似ていますが、どうも小さいようですし、外刃の形状がF303のように「筋だけ」というわけでもありません。分解して比較したいものです。

追記:先日YAHOOオークションで、F101の画像を見つけま した。Thumb Under (サムアンダー)さま昌’sCoffee( Masa's Coffee )さまの刃と同じようです。管理人の個体が特殊なのでしょうか(2014/6/7)


F-101の刃:昌’sCoffee(Masa'sCoffee)さま

YAHOO JAPAN ID:i_am_ancients様

(以下の記述は、管理人の所有する個体についてです)

 実際に使ってみると、これまた非常に使いやすいモデルです。通常はF205より若干重い程度でしょうか。ときどき重くなるようなことがありますが、ザッセンハウスのように、逆回転しなければらならないほどではありません。

 このミルの挽き心地は何が要因となっているのでしょう。今まで比較して分かったことは、
  • ミル本体を固定すること
  • ホッパーの勾配を緩く、段差を作るなどして、引き込む豆の量を少なくすること
  • 螺旋を不均等にして、同時にかかる力を少なくすること
  • 外刃の鋭さをなくして、豆を滑らせること
が軽い挽き心地を決定する要因だということでした。

 しかし、このミルの刃を見た時は衝撃的でした。その度合いは、F205のさらに上を行きます。なにしろ、互換性のある均質な品質を維持することが近代の工業製品という概念を、完全に無視したとしか思えない形状だったからです。逆に、この形状を再現するほうが難しいのではないでしょうか。

ザッセンハウス・プジョー
  • 刃の形状が良い(二重螺旋臼刃)
  • 鋭い刃
  • 硬質な金属
F205(F201)
  • 均等な螺旋形状ではなく、不揃いな「斜面」(二重螺旋臼刃ではあります)
  • ほとんどエッジが立っていないと言い切れる、なだらかな刃
  • ネットでは、切れ味が悪いとされる鋳物製
F303 (共通刃:F301・F303・F305・F307・F702・F703) 

  • 打ち抜いた板を重ねた形状(二重螺旋臼刃)
  • ほとんどエッジが立っていないと言い切れる刃
  • 硬質な金属
F101
  • 均等な螺旋形状ではなく、不揃いな「斜面」
  • 刃の上部は砕くのみ、下部を螺旋構造にして、豆を引き込む「三重」螺旋臼刃
  • 鋭い刃
  • 均質な品質こそが近代の工業製品という概念を無視したとしか思えない加工精度
KONO F101の刃
KONO F101の刃 別角度
KONO F101の刃 別角度
  加工精度について散々書いてきましたが、形状は実に良く考えられています。刃の上部は砕くのみ、下部で初めて螺旋構造にして、豆を引き込むようにしています。最初から噛みこまないことで、軽さと、挽く速度を両立させているのです。
 粗さを最終的に調整する部分も、ザッセンハウスとの比較画像でもわかる通り、ここまで少なくて済むのかと思うくらいの長さです。

左がザッセンハウス 右がF101
考え抜かれた形状と、「いいかげん」な加工。優れた機能を持たせながら、必要のないところは大胆にコストを削減する。このメリハリは、考えに考え抜き、実際に検証しなければ、できる形状ではありません。よほどの自信がなければ、この刃を世に問えるものではないでしょう。KONO式(コーノ式)ミルの設計者の熱意には、本当に頭が下がります。

 以下、いつも通り、他の項目について、大きさなどを、ひとつひとつ見ていくことにします。


ケースの固定しやすさ(大きさ)

 本体の大きさは、F303を除いてあまり変わりません。F101は、一回り小さいですが、樹脂の加工容易性にあると思います。これは、後述しますが、受け皿の形状を見て思いました。樹脂のほうが薄くできるのです。

ザッセンハウス  138×138×H不明 (改造したので、既製品の高さが測れない) 
プジョー            133×133×H210 (公式データは130×130×210)
コーノF205        127×127×H183
コーノF303        162×160×H260
コーノF101        109×110×H205

ハンドルの動作半径

 動作半径も、F303を除いて、それほど変わらないです。こうしてみると、改めてF303が大きいことがわかります。

ザッセンハウス  113mm
プジョー             85mm
コーノF205    108mm
コーノF303    120mm
コーノF101    110mm

刃の形状・鋭さ

 高さは、22mmありますが、機能していると思われる部分は(下の台を含まないと)15mm程度です。底でのシャフトの固定は雑で、立てると斜めになります。

ザッセンハウス   高さ(22mm程度)・径(30mm程度)・螺旋形状(五条)
プジョー              高さ(22mm程度)・径(30mm程度)・螺旋形状(五条)
コーノF205     高さ(20mm)・径(40mm)・螺旋形状(11条不均等)
コーノF303     高さ(18.5mm)・径(45mm)・螺旋形状(五条)
コーノF101          高さ(22mm程度)・径(33mm程度)・螺旋形状(五条不均等)


F101 底の固定部分 左下側、溶接した金属がはみ出て、盛り上がっている

刃の材質・硬度

 不明です。ザッセンハウスとプジョーを比較する(2)でも書きましたが、磁石の付き具合から、「鉄系の材質という「印象」です。硬さについては、どの程度なのかは、よくわかりません。

ザッセンハウス 鉄系・硬度不明
プジョー      鉄系・硬度不明
コーノF205     鉄系(鋳物)・硬度不明
コーノF101     鉄系・硬度不明


ホッパーの形状

 比較的プジョーの形状に近いです。段差があり、一度に引き込む豆の量は少ないです。
F101 ホッパーは均質な勾配、外刃の間に段差がある

プジョー ホッパーの下半分の勾配が緩く、外刃の間に段差がある

 今回は、刃の上部は砕くのみ、下部で初めて螺旋構造にして豆を引き込むようにし、最初から噛みこまないことで、軽さと、挽く速度を両立させることがわかりました。しかし、細部の形状については、多少の個体差があっても気にする必要がないと結論付けてもおかしくないような、衝撃的な結果が出ました。このミルには、まだ驚かされることがあります。

 次回は、KONO式(コーノ式)ミル F303 (共通刃:F301・F303・F305・F307・F702・F703) を研究する(2)と同じく外刃の形状について考えます。

2014年5月10日土曜日

KONO式(コーノ式)ミル F303 (共通刃:F301・F303・F305・F307・F702・F703) を研究する(3)

 今まで、使用感の違いを以下の6点になると思うと書いてきました。当初の予定通り、KONO式(コーノ式)ミル F303ではどうなのか、同じ項目について個別に見ていきます。
  1. 挽き心地が軽いか否か
  2. ホッパーに豆が残るか否か
  3. ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか) 
  4. 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か
  5. 分解がしやすいか 
  6. 豆の入れやすさ
  • 挽き心地が軽いか否か
何度も書きますが、大変軽快な挽き心地です。プジョーの上を行きます。ほとんど抵抗らしい抵抗がないと言って良いほどです。ただ、これも何度も書きますが、挽くのには、非常に時間がかかります。

 本機には大きな特徴である、両受けシャフトが使われています。実際、内刃と外刃が当たらないところまで緩めてハンドルを廻すと、驚くほど良く回ります。片側だけの保持機構のモデルは軸がブレて蛇行するため、緩めてもきれいに回りません。ここは明らかに差があります。ザッセンハウスの「ラパス(La Paz MJ-0801)」も、上下で保持していますが、シャフトの保持ではありませんから、ここまで軽くは回りません。実際、下のブッシュは固定金具と接触する部分が若干削れており、ブレの大きさ、かかる力の大きさを感じさせます。そういえば、ザッセンハウスの保持機構も削れていました。

 上はF205同様ベアリング機構を持っています。下はベアリング機構なしのブッシュですが、粉塵にさらされることを考えると、至極妥当な選択です。ボールベアリングでも両側鋼板シールドシールドタイプ(ZZ型)を使えば、粉塵環境でも大丈夫なのかなと思いますが、コストの問題でしょうか。10倍以上の価格差がある部品が2個、シャフトの保持のために使うだけで、しかも挽いた時の軽さに、ほとんど寄与しないとなれば、仕方ないと思います。そもそも、下側の保持機構すらないものが圧倒的に多いのです。
F303上部 ベアリングが使用されている


F303下部 固定金具と接触、若干削れている
ザッセンハウス下側 保持機構 削れている

  • ホッパーに豆が残るか否か
  ほとんど平面に近い勾配です。板部分に豆が残ることはほとんどありません。また、ホッパーと外刃にも段差がなく豆は残りません。 ただし、ホッパーの上部形状に問題があり、豆がいっぱい残ります。
F303のホッパー形状 写真では段差に見えますが、溝はないので豆は残りません
F205のホッパー形状


 このホッパー(上部)は本体の間に隙間があり、豆が残ります。写真は、さかさまに振ったりして、極力豆や粉を取り除いた後、分解した様子です。カラカラと音がしなくなるまで取り除きましたが、それにも関らず、ここまで豆が残っていました。このホッパーはいただけません。
F303ホッパー 本体との間に隙間がある


さかさまに振ったりして取り除いても、こんなに豆が残ります
  外周部は手を切らないよう丸く丸めてあり、水洗いすると、水が残ります。つなぎ目もあり、ここはさらに問題ありです。今回の撮影に当たり、水洗い後にエアーダスターで吹き飛ばしましたが、かなり丁寧に飛ばさないと錆びてしまいます。
水洗いすると、水が残ります


つなぎ目に水が入ると、なかなか乾かせません

 最近、ひとつの記事が長くなっているので、「3.ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか) 」以降は、次回に分けます。

2014年4月29日火曜日

KONO式(コーノ式)ミル F303 (共通刃:F301・F303・F305・F307・F702・F703) を研究する(2)

 前回、「直接挽き心地に関係ないと思われる要素を書きたいと思います」と書きましたが、予定を変更して、外刃の形状について考えます。挽き心地に直接関係ないと思われる要素の検証前に、書いたほうが良いと思われたためです。

 今まで外刃の形状にはあまり触れてきませんでした。というのも、ザッセンハウス・プジョー・F205は程度の差はあるにしても、基本的には同じ形状で、F205でも違うのは、鋭さは別にして、高さと、上の口のすぼまり方と思われたからです。
ザッセンハウスの外刃 鋭い

プジョーの外刃 鋭い
F205の刃(「鋳物」のため鋭さがない)

 しかし、F303では「鋭さ」がまったく問題にされていません。加工方法も、型を外側から押し出しているだけです。
F303の刃 鋭さが最初から考慮されていない

外側から押し出して筋をつけているだけ
F303の刃(下から内側を見たところ)

 ザッセンハウス・プジョー・F205では、曲がりなりにも、外刃側でも豆を砕こうとしている姿勢が見られましたが、F303にはまったくそういった姿勢が見られません。「単に押し出された形状の筋」があり、内刃が砕く際に「豆が共回りしなければ良い」という思想で作られているように思えます。

 しかし、その結果、「引っかからないものは弾く」に加え、「引っかからないものは無理に噛み合わせない」ことになりました。

 このことは、挽くのに時間がかかることからもわかります。粒度によって挽く時間は変わるので厳密な比較はできませんが、ほぼ同じ大きさの粒度に挽いた時、 ザッセンハウス・プジョー・F205の1.5倍はかかる印象です(80回の回転のところが、150回くらい)。
 
 F303では、一度にたくさんの豆を砕かないこと、噛み合わない部分の豆を弾くことだけでなく、そもそも噛み合わせないことで、さらに挽き心地を軽くしていると言えるでしょう。

 ホッパー上部を汚さないことについては、F205では
  • 外刃上部の入り口をすぼめること
  • 内刃の上部を小さくすること
  • 内刃を外刃に対して下に配置すること
 で破片を飛び散りにくくしていますが、F303では、
  • 刃の大きさを大きくして、 相対的に内刃の上部を小さくすること
  • 外刃の鋭さをなくして、豆を滑らせること
で、破片を飛び散りにくくしていると言えるでしょう。

 刃の鋭さについては、内刃だけでなく、外刃も関係ないことが分かってきました。大きさについては、隙間を大きくすると、破片が飛び散りにくくなることはわかりましたが、「適切な形状」が何であるかは、まだ分かりません。 

 次回は、ザッセンハウスとプジョーを比較する(4)KONO式(コーノ式)ミル F205(共通刃 F201・F205)を研究する(2)で書いたように、直接挽き心地に関係ないと思われる要素を書きたいと思います。

2014年4月13日日曜日

KONO式(コーノ式)ミル F205(共通刃 F201・F205)を研究する(2)

 プジョーのミルとザッセンハウスのミルの挽いた時の使用感の違いは、挽いた粉の品質は別にすると、以下の6点になると思うと書きました。KONO式(コーノ式)ミル F205ではどうなのか、同じ項目について個別に見ていきます。
  1. 挽き心地が軽いか否か
  2. ホッパーに豆が残るか否か
  3. ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか) 
  4. 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か
  5. 分解がしやすいか 
  6. 豆の入れやすさ
  • 挽き心地が軽いか否か
  ザッセンハウスの様に、ときどき重くなるようなこともありませんし、プジョー程ではありませんが、十分に軽快な挽き心地です。両者にない特徴としては、F205は軸にベアリング機構を持っています。ただ、これが軽い挽き心地に、どの程度寄与しているかはわかりません。なお、軸は上側だけの片軸保持です。
F205 上部ベアリング
  • ホッパーに豆が残るか否か
  ほとんど平面に近い勾配ですが、板部分に豆が残ることはほとんどありません。これには驚かされました。ホッパーと外刃に段差がありますが、ここには豆が残ります。 本体を振るなどして、刃の中に落とすことが必要です。残念ながら、挽いている時の振動だけで落ちるようなことはないです。
ほとんど平面に近いホッパー 外刃との間に段差がある

 段差があり、ホッパーの形状が浅いと、プジョーのミルと同じく、破片が飛び散る量が多そうですが、それほどでもありません。もちろん飛び出ますが、絶対量が少ないです。

 なぜでしょう。理由を考察してみます。

 破片が飛び散りにくいのは、蓋の形状も関係すると思いますが、大きな理由は外刃と内刃の高低差、内刃の上部の小ささにあるように思えます。F205外刃を上から見ると、入口がすぼまっており、引き込んだ豆が、上から飛び出しにくくなっています。また、内刃が外刃に対してかなり下にあること、内刃の上部が小さいので、上の部分で砕くこと自体が少なくなっています。

F205の刃 上がすぼまっている
F205:外刃の入口より、内刃が下にある。また内刃の上部の径が小さい
プジョー:外刃の入口より、内刃が上にある
 

 プジョーのミルは、内刃の上の部分で砕き、砕けなかった豆は、上に弾いていましたが、F205では内刃が下にあること、内刃の上部の径を小さくし上部で砕く量を少なくすることで、上に弾く量を少なくしています。
     ・ 外刃上部の入り口をすぼめること
     ・ 内刃の上部を小さくすること
     ・ 内刃を外刃に対して下に配置すること

この3点で、F205は浅いホッパーにもかかわらず、破片の飛び散る量を減らしているのでした。

  • ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか) 
  ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るようなことはありません。また形状も、F205の受け皿のほうが、側面の板が薄く、内側の幅が大きく取れています。ただ、材質は悪く、表面がザラザラなため、挽いた粉が付着します。掃除もしにくいです。
左側がF205 右側がプジョー 全体の大きさはそれほど変わりありません

ザッセンハウスと同じく、プジョーの側板の厚さ分だけ差があります

  • 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か
  調節機構は、側面を落とした形状になっています。これにより、ハンドルを楽に取り外すことができます。この機構は大変優れモノです。ネジを緩めることなく、粗さの調節ができます。ザッセンハウス、プジョーのように、使っていくうちにネジが締まって行くことがなく、大変使いやすいです。

側面を落としているため、ハンドルが楽に取り外しできます
ハンドルとバネを外したところ

  • 分解がしやすいか 
  上記の通り、ハンドルはネジ留めではないので、大変楽に組み立てができます。ここはぜひ、他社も見習ってほしいです。
 一番上の袋ナットは、残念ながらザッセンハウス、プジョー同様、ネジの締まる回転方向と、ハンドルを回転させる方向が一緒なので、どんどん食い込んでいきます。今回の撮影に当たり、分解したのですが、袋ナッ トは養生したにも関わらず、かじってしまいました。 材質は柔らかく、お世辞にも良い材質を使っているとは言い難いです。

F205 袋ナットかじり・・・。

  • 豆の入れやすさ 
  ザッセンハウス、プジョーほどではありませんが、豆を入れる開口部は比較的広いほうです。ただ、分解掃除ができないので、個人的にはこの構造は好きではありません。


  • 結論・評価
さて、この機種はKONO式(コーノ式)ミルとして高い評価をすべきかですが、私としては、大変バランスが取れた機種だと思います。使いやすく、無理がありません。周囲もほとんど汚れません。外刃とホッパーの接合部などに残る豆の破片だけは結構なものですが、定期的に分解掃除をすることは、どの機種でも必要です。その際も、蓋以外は分解できない個所もなく、分解組み立ても苦になりません。オークションの落札価格も割安です。ザッセンハウス、プジョーのミルと十分比較対象になります。コンディションにもよりますが、よほど悪いものでなければ、同じだけの金額をかけても、落札する価値は十分にあると思います。

 F205は、十分にKONO式(コーノ式)ミルの評価を高めていると言って良いと思います。