2014年12月31日水曜日

HARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBを研究する(3)

 ナイスカットミル・みるっこを、設計のため工場に預けており、この3か月ほど、手動式のコーヒーミルを使うことが多くなってきました。

 いろいろ使うようにしているのですが、一番頻度が高いのはHARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBです。なんといっても、メンテナンスが楽です。本体はほとんど汚れませんし、周囲はまったくと言って良いほど汚れません。分解掃除も楽、保管場所も取りません。木製のキャビネット型のミルは、ほとんど使わなくなりました。

 いったん評価が定まったかのように思えたHARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBについて、書き足したいと思います。


 まず、挽く際の評価について、訂正しなければなりません。前回「ホッパーとガラスの受け皿をねじ止めしている部分の径が大きいので、とても疲れます」と書きましたが、台や机の上に置かず、手に持って挽けば、それほど苦にならないことも明らかになってきました。1人分(10g)程度なら、豆が飛び散ることもありませんし、蓋をすれば飛び散る心配自体なくなります。KONO F303ほどの軽さではないにせよ、1人分挽いたら、もう嫌だという気持ちにはならない重さです。電動式のミルを使うようになってから、しばらく手動式のミルから遠ざかっていましたが、これなら毎日、毎回その都度挽こうという気になり、実際、その通りになっています。


 また、冬場になり、静電気が気になる季節になってきました。コーヒーミルを愛用する方にとっては、微粉の処理が気になる季節でもあります。HARIO セラミックコーヒーミル・スケルトンMSCS-2TBは刃にセラミックを使用するだけあり、微粉のつく量が少ないです。これは、明らかに使い勝手が電動ミルを大幅に上回っています。 ナイスカットミル・みるっこをお使いの方はわかると思いますが、静電気による粉の出る口の周辺に付着する微粉の多さと、掃除の大変さは、毎回、大変なものです。その点、HARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBは、周囲が全く汚れないので、掃除が不要です。もしかしたら、電動ミルが戻ってきても、使わなくなるかもしれません。


冬場に挽いた直後の状態。こぼれた量も、たったこれだけです

 自然に手が伸びるミルというのが、使いやすいミルだと思いますが、HARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBは、間違いなく、もっとも使いやすいミルです。前回の投稿も一部を訂正したいと思います。
 

2014年12月28日日曜日

コーヒーミルを作ることにしました(7)

先日、工場に出向き、新しく設計した替刃の試作をしてきました。
  •  豆を挽き込むスペースを設けること
前回の反省を踏まえ、かなりのスペースを割いたつもりでしたが、それでもまだスペースが足りないようです。また、豆をひきこむ形状が、加工上、困難なものとなっていました。目の前で、汎用フライス盤にセットするのですが、どう部品を置いたら良いのか非常に迷いました。自動機器なら問題にならないのでしょうが、工数を減らすことも目的としているので、無駄に複雑な形状は見直す必要があります。

豆を引き込むスペースをなくした状態にまで設計を戻しました
 年内には完成させるつもりでしたが、まだまだのようです。


 旋盤やフライス盤で作業するのを見ると、実際に形にするには、実に多くの制約があることに気づかされます。CADのレンダリングではなんともないように見えるものでも、 加工するには、多くの手順が必要だったりすることがあります。日本の工場の職人たちは、それをなんとか工夫して、最小の手順で実物にしてきました。その過程には大きな智慧を感じます。人それぞれに異なるアプローチから考えた手順があり、傍目には同じに見えるものでも、その過程は、決して同じではありません。どれが正解というわけではなく、使っている機械のクセによっても手順は変わります(精度が出ている機械なら、ゆるくはめて、何度も少しずつ削るのが良いでしょうし、馬力のある機械なら、がっちり噛みこんで、一度に削る方が早く、生産性も上がるかもしれません)。

 工夫の跡を知った時は、静かな感動があります。先人の知恵を知り、敬意を払うことができることに幸せを感じます。

 工場に通い、熟練職人の機械の操作を見るようになってから、わずかですが、頭の中だけで設計したものと、機械の制約のなかで設計したものの区別がつくようになってきました。

 純粋に好みの問題ですが、私は機械の制約の中で設計したものの方に魅力を感じます。

2014年12月13日土曜日

コーヒーの味の評価と良い手動式ミルの条件について 当ブログのスタンス(2015/4/25 条件を追加)

 味の評価について、今まで何も書きませんでした。ここで、改めて当ブログのスタンスを明らかにしたいと思います。なぜ、一番重要な味の評価をしないのか。

理由は、わからないからです。

 客観的な評価をするには、限りなく似たような条件を作りだすことが必須だと思っています。誰が行っても、同じ環境で行えば、同じ結果が出るというのでなければ、科学的とは言えません。

 ミルを比較してわかったことは、似たような形状の刃でも、本体の大きさ、設置の仕方で挽き心地が大きく異なる事(逆も真なりで本体はほぼ同じでも、刃が異なれば挽き心地は大きく異なります)でした。 さらに言えば、同じ個体を使っても、設置の仕方ひとつで全然違ったものになります。

 味は、さらに繊細で、微妙なものだと思います。

 厳密にいえば、比較するなら同じ釜で焙煎した、同じロットの豆を、同じ粒度で、同じ温度、同じ方式のドリップ、同じ形状のカップ、同じ温度で飲むことが必要でしょう。しかし、これは、比較対象が多くなればなるほど、現実的ではありません。同じ温度に至っては不可能といってよいでしょう。しかし、全て「同じ」ではないにせよ、可能な限り条件を近づけようとするのは、まじめに比較をしようとする者にとっては常識だと思います。
 さらに、前提としてコーヒーの味が分かることが必要です。私は官能検査の訓練を受けたわけでもなく、特別にコーヒーの味に詳しいわけではないという自覚があります。

 では、そんな私が何を持って良いミルとするのか。

 コーヒーの味は 煎りたて・挽きたて・淹れたての「三たて」がおいしいとされています。そのうち、コーヒーミルにできるのは、挽きたてです。古い粉が混ざったコーヒーでは、挽きたてのコーヒーとは言えないでしょう。それは、たとえ一杯飲むごとに豆を挽いていても、ミルの中に古い豆、粉が残っていたら、同じことだというです。古い豆、粉がミルの中に残らないこと、これが第一の条件です。

 第二の条件は 、分解・掃除・組立がしやすいことです。これは第一の条件と同じように思えますが、若干異なります。第一の条件は毎回分解しなくとも、粉が残りにくい構造にすることです。現実的には、毎回分解掃除をすることはないでしょうから、分解しなくとも粉が残りにくくすることが一番重要です。第二の条件に上げたのは、分解掃除をしたくなったときに、それが気軽に行えるようにすることです。これが億劫になると、いつまでも古い粉が残り続けることになります。また、構造的に分解・掃除・組み立てがしやすいのはもちろんですが、材質的にも柔らかすぎて変形してしまうものは避け、錆びにくい材質を使うことも重要です。第一の条件、第二の条件とも、古い豆、粉をミルの中に残さないという目的は同じですが、ミルの構造としては別条件です。

 第三に、挽き心地が軽いことです。当ブログを始めようと思ったきっかけは、知人にコーヒーミルを贈ったのに、疲れるから使うのをやめてしまったことでした。どんなにおいしいコーヒーが挽けるミルでも、使われなくては意味がありません。軽快な挽き心地は、手動式ミルの必須条件と考えます。

 第四に、周囲を汚さないことです。いろいろなミルを使ってみて思ったのは、想像以上に周囲が汚れることです。コーヒーを一杯入れるだけで、いろいろなところを掃除しなければいけないのでは、使うのが億劫になるでしょう。周囲を汚さないことも、良いミルの条件です。

 第五に、収納しやすい事です。あまりに大きかったり、食器棚に収納しにくい形状では、邪魔になるばかりです。気軽に使いたいと思えるようにするには、一般の家庭事情に合わせた形状も考慮すべき条件と思います。

 第六に、意図した粒度で挽けることです。いろいろなミルを使った結果、意外と粒度にばらつきがあることに気がつきました。特に挽き始めのころ、大きく粗い、意図した粒度以外の粉が出てくることがあります。どのミルにも調節機構があるにも関わらず、それが機能しないのは、なんらかの問題があるはずです。機械の基本機能として、意図した粒度に安定して挽けることも良いミルの条件です(2015/4/25追加 「第七の条件」にせず、すみません「満足感の高さ」だけが抽象的なので、最後の条件にしたかったためです)。

 第七に満足感の高いことです。この項目だけが抽象的なものになりますが、HARIOのミルを研究しているときに認識しました。いかにもおいしそうなコーヒーが挽けそうだという気持ちにさせることは、嗜好品だけに大変重要です。それがデザインなのか、ブランドなのか、何かはわかりません。おいしいコーヒーを入れてもらったという経験、思い出であることもあるでしょう。
 コーヒーを飲もうと、ミルを取りだす時から気持ちが高まり、挽いている時もちろん、挽き終わった後も飲む時に横に置いて眺めたい。たとえ挽かない時でも、持っているだけで豊かな気持ちになれるミル。矛盾した話ですが、これは前項に挙げた1~6を凌駕します。どんなに欠点の多いものでも、気持ちが豊かになるものは、それだけで価値があるものです。

 当ブログの作成するミルは、「過剰品質」を目指したいと思います。愛情と高い志で、持つ人はもちろん、見る人の心を豊かにすることを目指します。

単純だと思われるミルの設計ですら、困難の連続です。

 その中で、何度か一流の職人と出会う機会がありました。キサゲの名人、伊勢神宮の式年遷宮に神宝を奉製した職人、名前を書けば、誰でも知っているような世界的な絞り職人・・・。世界的な絞り職人に紹介してくださるとのお話は、結局お断りしました。

 私のしていることは、極論を言えば、既存の製品のコピーを作るだけ。それもいくつ作るかわからないほどの少ない個数で、コストの話しかできないというものです。有名人会いたさに、そんな人間がノコノコ出て行ったのでは、紹介者の顔までつぶしてしまいます。

 個人で資金も潤沢でない私が、彼らに認めてもらうためには、作る製品はもちろん、自分にも魅力がなければなりません。何のために作るのか、明確にする必要がありました。
 
 動機、善なりか

 世の中に、その製品を必要とする人がいるか。その人のことを思って、仕事ができるか。

 答えは、善なり。両方に合致すると言い切れます。私は機能、形状はもちろん、愛情と高い志で、持つ人はもちろん、見る人の心を豊かにするコーヒーミルをつくることを目指します。


 サン=テクジュペリの「夜間飛行(堀口大學 訳 新潮文庫 1972年版の文庫本の装丁が美しい)」に‘大地に光る家々のかすかな光を見ながらこう思う。「あの農夫たちは、自分たちのランプは、その貧しいテーブルを照らすだけだと思っている。だが、彼らから80キロメートルも隔たった所で、人は早くもこの灯火の呼びかけに心を感受しているのである」’といった一文があります。
 
 この世の中のどこかにいらっしゃる、価値観を共有した人のための灯を照らしたいと思います。

  

2014年11月16日日曜日

コーヒーミルを作ることにしました(6)

  前回作ったナイスカット用の試作替刃の欠点を取り除いたものを設計しました。ポイントは以下の3点です。
  • 豆を挽き込むスペースを設けること
前回の反省を踏まえ、かなりのスペースを割くことにしました。また、豆を砕く「列」は対の刃と数を変え、一度に同時に力がかからないようにしています。
  • 外周の隙間を一定にすること
直線放射状に変更しました。また、併せて刃の形状も見直しました。加工上の問題として、山形の刃は価格が高くなります。前回までは単価を下げるために、角が直線状の刃で考案してきましたが、機能的に不安がでてきました。いくら安くても、機能的に満足しないのでは本末転倒ですので、山形の刃に見直しました。
  • 内径を極力小さくすること
内径を小さくする案を考えましたが、どうやっても無理がありそうです。刃を分割して組み込めば、ギリギリまで迫ることができます。隙間にどの程度、微粉が溜まるかが課題となりそうです。

豆を挽き込むスペースを大きくしました。刃は山形に変更しました
豆を砕く「列」は、対の刃と一致しないようにしています。内径部は豆が入るスペースをなくしました。

  試作の検証には非常に時間がかかります。設計、工場での打ち合わせ、実際の工作(機械が空いている、隙間の時間に作っていただくことで、安くしていただいています)、実物の検証を、平日に普通の会社員が行うのには、かなりスケジュール的に難しいものがあります。また費用面も、そうそう気軽に行えるものではありません。次の更新も遅れると思いますが、どうぞご容赦ください。

コーヒーミルを作ることにしました(5)

 前回作ったナイスカット用の試作替刃ですが、スペーサーを作り、実際に動かしてみました。

 もちろん、ちゃんと挽けましたが、非常に時間がかかりました。同じ粒度で1.5倍程度の時間がかかる印象です。上から豆の挽き込まれる様子を見ると、なかなか豆が減りません。どうやら、豆を挽き込むスペースが足りないようです。片側だけ豆を挽き込むスペース分を削り、もう片方の刃の突起部分で砕いたほうが早く砕けると考えたのですが、ダメだったようです。

緑部分だけでは豆を挽き込むスペースが足りません。赤丸部分の隙間が一定ではありません。
反対側の刃。緑部分に突起を設けました。赤丸部分の隙間は一定です。
  実物を見習い、刃が斜め放射状に広がるように配列したのですが、これを突起状の刃で実現しようとすると、隙間が一定にならず、挽かれる粉の粒度が安定しない可能性があることが判明しました。高速で挽けば問題ないのかもしれませんが、視覚的に明らかに異なるので、気持ちの良いものではありません。また、工作的にも角度の割り出しなどで時間がかかり、コスト的に望ましい形状ではないことから、次回からは単純な放射形状にしたいと思います。角度による割り出しのほうが簡単なものだと思っていたのですが、そうではないようです。この辺は、機械を実際に使っている人でないと、なかなかわからないですね。

 内径は既製品に合わせた大きさで作成したのですが、隙間に豆が挟まります。既成品でも豆が挟まるのですが、「切り欠き」があったため、挟まる個所が少なくて済んでいました。それが、試作替刃では、切り欠きがないのでたくさん挟まってしまいました。

 さて、また考え直しです。

2014年10月5日日曜日

コーヒーミルを作ることにしました(4)

 先日出来上がったナイスカットミル用の試作替刃を、動作検証してみました。


 焼きを入れてからと思っていたのですが、職人の方から、「一度動かしたら、形を変えたい所があるかも知れない。焼きを入れる前に機械に入れて動かしてみたほうが良い」とのアドバイスを受けてのことです。


 さっそく挽いてみたのですが、刃と刃の隙間が大きすぎて、粉にならず、大きな塊のまま出てきてしまいました。
 今までと同じダイヤルの位置(刃の初期位置)が問題のようなので、刃の初期位置の値を変え、一番奥まで入れましたが、中挽き程度の粒度にしかなりません。しかも回転側の刃を固定する突起部分が干渉してしまいました。思ったより、正規品の刃は隙間が多い状態で動作していることがわかりました。作った刃の厚みが、図面より薄くなっていました。同じ厚さで作ったとばかり思い込んでいたので、まったく気がつきませんでした。訂正します(2014/11/14)。

本来の部品と組み立てられた状態


本体と干渉して削れてしまいました

 職人の方と相談して、スペーサーを作って、チューニングしようと思います。まだまだ、いろいろありそうです。

2014年9月22日月曜日

コーヒーミルを作ることにしました(3)

ナイスカットミル用の試作替刃ができました。

工場に出向き、旋盤とフライス盤を操る職人の方と、一緒に加工方法を考えながら形状に反映しました。



やっと実物ができました。これから焼きを入れて、既成の刃と、何が違うのか(挽いた粉の品質、挽く速度、動作音など)を検証したいと思います。

回転側形状 ツールマークの跡が残る完全切削加工です


固定側形状 形状を見るための試作なのでS45Cです

2014年8月30日土曜日

コーヒーミルを作ることにしました(2)

 今まで、軽い挽き心地の刃にこだわってきました。しかし、いろいろなブログを読む限り、鋭い刃が求められているのも事実です。

 これまで書いてきた通り、手動式では挽き心地が重いと疲れて嫌になってしまい、結果的に使われなくなるという考えに変化はありません。しかし、電動式のミルでは「軽い挽き心地」を無視し、鋭い刃に特化することが可能です。

 そこで、ナイスカットミルの替刃を作ることにしました(ナイスカットミルの研究は別の時に書きます)。刃の形状はフジローヤルの「みるっこ」に似せることにします。これは業務用のミルで大型になればなるほど、そうした形状の刃を持っているため、この形状に意味があると考えたからです。

回転側形状 サイズはナイスカットミルに完全互換で設計しました

固定側形状 素材はSK材 HRC60以上の硬度の予定です
  いろいろな工場に声をかけていますが、コスト的に厳しいですね・・・。なにしろ標準品は2枚セットで5400円で存在するのです。素人がどんなに頑張っても、5400円では1枚もできないです。利益が出る出ないの問題ではなく、作ることすらできません。設計を始めてから、これらの製品群がいかに安い値段でできているのか、そしてコーヒーミルに限らず、あらゆる製品がなぜ中国で作られているのかがわかりました。

 しかし、私は日本製にこだわりたいと思います。品質の高さもさることながら、素人の私にアドバイスを下さった職人の皆さまに少しでも恩返しがしたい、日本でのモノづくりをしている方々に少しでも貢献したいためです。

 試作品だけでも出来上がったら、ナイスカットミルの研究に合わせ報告する予定です。

2014年8月23日土曜日

コーヒーミルを作ることにしました(1)

 ザッセンハウスのコーヒーミルを改造して以来、自分で使いやすいコーヒーミルを作ろうと試行錯誤してきました。特に、前回のHARIOセラミックコーヒーミル・スケルトン・MCSC-2TBの研究では、理想形状がおぼろげながら見えてきたにも関わらず、コスト的に断念せざるをえませんでした。

 新しく作ることは断念し、HARIOセラミックコーヒーミル・スケルトン・MCSC-2TBに取り付けられる軽い挽き心地の刃を設計することにします。


 ザッセンハウス・プジョー型の刃だから挽き心地が重くなり、本体形状の見直しが検討課題になるのなら、逆に旧型のように軽い挽き心地の刃を搭載すれば問題ないのではないかというものです。前回の結論では、趣味性の満足度は低いと書きましたが、なんといっても機能的に優れたHARIOの形状には抗しがたい魅力があります。


 現実的な対処方法として、セラミックコーヒーミル・スケルトン・MCSC-2TBに互換性のある軽い挽き心地の刃を作成してみたいと思います。


軽い挽き心地を実現する刃の条件
  1. 内刃・外刃ともに、上部は螺旋を弱くし、過度に豆を噛みこまないこと
  2. 豆を砕く部分は、 面で砕くのではなく、点・線で砕く形状にすること

内刃:動作が軽く、評判の良い、F303の刃をベースにします。
外刃:F101の直線形状をベースに考えることにします。

 同じものをコピーしようと思っても、なかなかできないのが機械部品です。そっくり同じ寸法通り作っても、材質・加工方法・仕上げが少しでも違えば、間違いなく違ったものになります。


 F303とまったく同じものを作ろうにも、そもそも、材質が特定できません。硬度もわからずじまいです。加工方法も内刃は板を金型で打ち抜いたものを重ねていますが、これも小ロットの場合、レーザー加工かワイヤー加工になるでしょう。そうなれば、鋭いエッジの立った形状になります。レーザー加工、ワイヤー加工の部品は見た目も素晴らしく、間違いなく「高品質」になるのですが、エッジが立っていることで、豆を噛み込む量が多くなり、明らかに挽き心地は異なることが予想されます。
 また、F303の外刃の形状は、加工が非常に困難です。加工を依頼した多くの職人が、再現は極めて困難だと口をそろえます。


 到底同じものができそうにない状況にある今、F303の外刃を積極的に採用する動機は薄くなってきました。すでに、直線にすることで、引き込む力を弱くできることもわかっています。


 内刃はF303ベース、外刃はF101の思想を元に設計しました。

F303に似せた形状


F101と同じく螺旋をなくしてみました

シャフトはF303同様、上下両支え
いくつかの工場に相談していますが、現実的な価格になる加工方法は何か、試行錯誤が続いています。

2014年8月17日日曜日

HARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBを研究する(2)

 前回は、形状の違いを写真で見てきました。今回は、形状と使い勝手の関係を明らかにしていきたいと思います。

 肝心の使い心地ですが、両者を比較したところ、形状はほとんど同じと言って良いにも関わらず、挽き心地はまったく異なることがわかりました。旧型はF303をさらに軽くした感じ、新型はザッセンハウスに良く似た感じと、ほぼ両極端でした。


比較のため、F201と同じ項目で追っていきます。使いやすいコーヒーミルの形状とはどんなものか(1)では、
  • 絶対値として、動作が軽いこと
  • 底面が固定されること
  • 押さえる手に無理な力がかからないこと
  • 本体を押さえながら、ハンドルを廻した時に、押さえた手と干渉しないこと
を満たす形状として
  • 廻した時に左手に当たらない高さに、ハンドルが配置されている
  • 左手で押さえる際、親指と人差し指を開いて握るような形状は押さえやすい
  • 角のない受け皿
  • 分解しやすく、場合によっては洗える本体
を考案しました。MSCS-2TBは上記の条件を満たしているのか、検証することにします。


廻した時に左手に当たらない高さに、ハンドルが配置されている

 MSCS-2TBは、ちゃんと適切な高さにハンドルがあります。いろいろな姿勢で挽いてみましたが、どんな時でも干渉することはありません。

左手で押さえる際、親指と人差し指を開いて握るような形状は押さえやすい

 手の大きさにもよるのでしょうが、私には大きいです。ホッパーとガラスの受け皿をねじ止めしている部分の径が大きく、手首が若干曲がります。もう少し細ければ使いやすいのにと思います。


角のない受け皿

  「角のない受け皿」の条件を満たすのはもちろん、ガラス素材の長所をいかんなく発揮しています。ネジのピッチも大きく、ネジ山に粉が入り込んで取れなくなることもありません。容量も2人分(30g)以上挽いても半分以上余りますし、そもそも中身が見えるので、挽きすぎることもありません。材質も強化ガラスを使用しており、強度的にも問題ありません。粉の滑りもとても良いです。

分解しやすく、場合によっては洗える本体

  構造的・材質的に理想的な形状と言って良いでしょう。ハンドルを除くと4箇所のネジを外せばすべて分解ができます。特に新型はハンドル・シャフト・ネジなどすべての金属部品にステンレスを使用しており、水洗いができます。洗いやすく、乾かしやすく(ふき取りやすく)、扱いも簡単です。

ハンドルの動作半径

 動作半径は旧型85mm、新型112mmです。それでも旧型のほうが圧倒的に軽いです。


刃の形状・鋭さ・材質・硬度

  旧型は金属製、新型は刃はモデル名にセラミックとあるようにセラミックで作られています。新型は、よりザッセンハウス・プジョーに近い形状になっています。この形状の変化の根底には「鋭い形状の刃が良い刃」という考え方があると思います。加工精度的には間違いなく進歩していますが、それが軽い挽き心地にはつながっていません。今までの研究結果から、鋭さを増すことが良いことなのか、当ブログ的には疑問です。

 旧型の材質は不明ですが、銅系の金属にめっきをかけたような跡があります。
めっきの下から銅のような金属が・・・。硬度的に大丈夫なのでしょうか?

 硬度は新旧ともに不明です。根拠はありませんが、旧型は柔らかい気がします。これは銅系のような気がするためです。


 今まで全てミルについて、使用感の違いを以下の6点になると思うと書いてきました。HARIOのセラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBではどうなのか、同じ項目について個別に見ていきます。
  1. 挽き心地が軽いか否か
  2. ホッパーに豆が残るか否か
  3. ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか)
  4. 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か
  5. 分解がしやすいか
  6. 豆の入れやすさ
  • 挽き心地が軽いか否か
旧型は驚くほど軽いです。F303以上です。しかし、挽くのに非常に時間がかかります。なかなか豆がなくならないです。
刃よりも豆が大きく、なかなか挽き込まない
  新型の動作は、軽くありません。と言うか重いです。新形の動作ですが、台に置いて挽くと重いですが、台や机の上に置かず、手に持って挽けば、それほど苦になりません。鋭い刃を持つこと、強い螺旋、多孔質セラミックの食いつきの良さで、豆をひきこむ力が大きいためだと思われます。また本体形状も、ホッパーとガラスの受け皿をねじ止めしている部分の径が大きいので、[台に置いて挽くと(2014/12/31追記)]、とても疲れます。最新モデルには、ガラスの受け皿にはまるシリコンの「マット」がついていますが、これがないととても挽けません。旧型は動作が非常に軽く、マットの必要性を感じません。省略していたのではなく、不要です。 (2014/12/31 HARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBを研究する(3)の追加と合わせ、訂正しました)
  • ホッパーに豆が残るか否か
外観からもわかる通り、かなり傾斜があり、豆が残るようなことはありません。シャフトを支える支柱も、樹脂加工ならではの自由形状で、豆が引っ掛かりにくくなっています。新旧で形状が異なっており、新型のほうが細くなっています。構造分析と加工技術の進歩がみられます。
 新旧ともに内側もきれいにラップ加工(鏡面加工)されており、滑りについては、かなり気をつかっていると言って良いでしょう。(2015/6/27訂正)

 旧型は本体と刃の間に継ぎ目があり、どうしても細かい破片が残ります。新型はまったくそのようなことはなく、どこまでも配慮が行き届いています。


  • ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか)
特にディアボロ形状のミルでは仕方がないのですが、本体上部に残った粉をしっかり落とさないと、受け皿を外したとたん、周囲に残った粉がこぼれ落ちます。 F201では本体上部のスカート部が大きく深く、すぐに横にすれば、粉が外にこぼれ落ちることはなかったのですが、残念ながら、MSCS-2TBではスカート部がないため、本体上部に残った粉がこぼれ落ちます。 しかし、新型のセラミックは静電気を帯びにくいのと掃除が楽なので、この時そのまま放置せず、毎回掃除をすれば、次回以降も、汚れが飛び散ることは少なくなります。しかも、このミルは水洗いができるのです。
新型:刃がスカートの外に出ているので粉がこぼれ落ちる。しかし、セラミックは静電気を帯びにくいのと、掃除が楽なので、こまめに掃除をすれば、周囲への汚れもかなり抑えられる。

旧型:金属製のほうが静電気を帯びやすい

  • 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か
調節機構は、KONO式(コーノ式)ミル同様、側面を落とした形状になっています。これにより、ハンドルを楽に取り外すことができます。何度も書きますが、この機構は大変優れモノです。ネジを緩めることなく、粗さの調節ができます。しかし、留めているネジの直径が小さく、長く使ってから調整しようとする と、ネジが固くなります。
  • 分解がしやすいか 
前述しましたが、ハンドルを除くと4箇所のネジを外せばすべて分解ができます。部品点数の少なさという点で、F201よりも確実に進化しています。
  • 豆の入れやすさ
投入口は広く深いため、とても使いやすくなっています。旧型はまったく飛び散ることはありませんが、新型は若干飛び散ります。新型に、豆の飛び散り防止フタが付属するようになったのがわかります。旧型は省略していたのではなく、不要です。
  • 結論・評価
ミルの本体形状で、挽く軽さが変わると思っていましたが、刃の形状は予想以上に大きな影響があることがわかりました。そうでなければ、まったくと言ってよいほど同じ形状にもかかわらず、これほど挽き心地に差があることの説明ができません。動作が軽ければ、ある程度支えにくい形でも、どうにかなりますし、重い場合はわずかな欠点も見逃してくれません。本体形状も大切ですが、動作の軽い刃は、手動式では必須と言ってよいでしょう。改めて思いました。

 最後に評価です。この機種はディアボロ形状の最新機種として、どう評価をすべきかですが、残念ながら、高い評価を下すことができません。これだけ褒めておきながら、一体最後になって何なんだと思われるかもしれません。しかし、最後まで読めば納得してくださると思います。

 理由は、旧型の刃で挽くことを前提に作られた形状だと思うからです。旧型の刃の場合は、動作が非常に軽く、ホッパー とガラスの受け皿をねじ止めしている部分の径が大きくても問題ありませんでした。抑えのシリコンがなくても滑ることはなく、手で持って挽くこともできました。

 しかし、新型の刃ではそうはいきません。豆の飛び散り防止フタをし、本体をいろいろ動かせば何とかなりますが、くびれ部分を手で持って挽くことなど到底できません。机の上において挽く場合は、マットがないと、とても挽けません。そして実際に保持しようとすると、ねじ止めしている部分の径が大きく、非常に抑えにくいのです。これでは、一杯分挽くだけで嫌になってしまいます。新型のリニューアルは、旧型の欠点を丁寧につぶしたものですが、逆に元々の形状が問題になってしまいました。

  第二に、満足感がないことです。このコーヒーミルは、良いミルの条件を考えれば理想的です。ほぼ、すべての要素を満たしています。研究すればするほど、その素晴らしさが際立ちます。しかし、では「欲しいミル」なのかと言われると、疑問になります。非合理的な話ですが、どんなに優れた機能を持っていても、所有する満足感はそれを凌駕するということです。
 思うに、このミルは 「便利で機能的なキッチンツール」といった視点から設計されているのではないでしょうか。そうだとすると、すべてが納得できます。
 大変残念ですが「おいしいコーヒーが挽ける雰囲気」がありません。便利で機能的ですが、でもコーヒーミルはそういったものではないでしょう。

 機能的には、間違いなく最高です。その優れた機能、構造を生かしつつ、新型の刃に合わせた形状にし、おいしいコーヒーが挽ける雰囲気にデザインしなおせば、間違いなく現代の最高機種になると思います。

++++++++++


 実は、ひそかにそう思い、形状を考え続けてきました。研究の視点がいつになく細かいのは、そうしたことからです。自分で作るなら、これだ!と思っていた要素がすべて満たされています。しかし、価格的に競争になりません。なにしろ、ネットで安い販売店を探せば、2000円程度から存在するのです。2000円といえば、素人がいくらがんばっても、シャフト部品群すら作れません。ステンレスの規格シャフトにネジの追加工するだけでおしまいです。刃など片方だけで、5000円はかかるでしょう。

 このモデルは価格競争力が圧倒的で、とても素人が太刀打ちできるものではありません。仮に理想的な形状のモデルを作ることはできても、売れる値段ではできないでしょう。

HARIOには素直に敬意を表したいと思います。

2014年8月16日土曜日

HARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBを研究する(1)

 前回取り上げた、KONO式(コーノ式)ミルF201があまりに合理的で使いやすかったので、すっかりこのディアボロ(≒中国独楽)形状の虜になってしまいました。他に何か存在しないか調べたところ、HARIOで作られているのを見つけました。

 今まで廃番のKONO式(コーノ式)ミルばかり取り上げてきたので、今回は気軽に手に入るHARIOの現行モデル「セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TB」を取り上げることにします。

 気軽に手に入るモデルを取り上げるといいながら、いきなりですが、これには旧型が存在していることがわかりました。
  このモデルは、構造的に実によく考えられています。良心的なコストダウンをしつつ、明らかな品質向上も実現しており、新型は高レベルで進化したと断言してよいでしょう。今までは、F201を除けば、どのミルも、ある意味「工作レベル」といっても許されると思いますが、これは工業製品として高度に完成されています。新旧でどこが変わったのかもあわせ、その違いを見ていきたいと思います。

 今回は、形状の違いを写真で見ます。次回以降、形状と使い勝手の関係を明らかにしていく予定です。
  • ホッパーの形状
ほとんど同じ形状です。新型は保存用のフタの取っ手がありませんが、実際に使うときはガラス本体を持つほうが使いやすいので、取っ手の有無は使いやすさには関係ないです。それよりも、取っ手がないことで、パッケージの箱を小さくすることができ、輸送費を削減することができます。こうした地味な取り組みが大事なんですよね。
MSCS-2TB 左の黒が新型 右の水色が旧型 保存用の蓋を除けば、ほぼ旧型形状を踏襲
本体は、型を縦半分で作成しています(PPは接着が困難なので、一体加工だと思われます)。新型は若干薄くすることで材料の使用量を減らしていますが、握った感触が頼りないことなど、まったくありません。シャフトが通る穴もきれいに成型されており、加工精度の高さがわかります。新旧ともに内側はラップ加工(鏡面仕上げ)されており、継ぎ目もなく、豆が引っ掛かりることもありません。大事なところはコストをかけています。(2015/6/27修正)
同一形状のように見えるが、豆の通る穴を拡大している。また若干薄くなっている
新型の豆の飛び散り防止フタをつけると、厚みが違うのがわかる。ガラスの受け皿は完全互換。
  • ハンドル長
若干長くなっており、軽い挽き心地を実現しようとした意図が見えます。握り玉は同じ形状に見えますが、中心の固定部分が若干低くなっており、洗った後の水の残り方が少なくなっています。地味な改良ですが、使い勝手は確実に良くなっています。実際に洗って乾かした時、実感しました。こういう細かい配慮は、日本製ならではですね。
新型になりハンドルが長くなった。握り玉の固定部分も、若干ピンの長さが短くなっている
  • 金属部品群
形状はほとんど同じですが、全部品にステンレスを採用、水洗い後のフリーメンテナンスを実現しています。また、加工精度も向上し、面取りがされ感触が向上しています。
右が新型 全部品にステンレスを採用 基本的に形状は踏襲しているが、面取りがされ感触が向上
右が旧型 鉄製のためサビが発生
外刃と本体のネジ止め箇所は、あらかじめネジ穴は切らず、木ネジで締めることでタップを立てています。設計・生産工程ともに大変合理的です。
ネジ止め部分の形状を見直し、ネジの短さ、規格に貢献
  • 刃の形状
新旧モデルで最も異なる個所です。形状、大きさとも明らかに異なります。

 旧型の刃は、今まで見たミルの中で最も小さいです。新型の刃はセラミックですが、原型は切削加工で作られています。かみ合わせ部を含め、今まで見た刃の中で最も精度が良いです。セラミックの形状の再現性、均一性は素晴らしいの一言に尽きます。

  新旧ともに、シャフトのネジ部分は転造方式で作成されています。切りくずが出ず、強度もアップし、大量生産ならコスト的にも有利な製造方式です。7mmのシャフトを元に、ネジ部分を8mmで作成、これで穴径とも合うようになっており、何もかもが細かく考えられています。
左が新型 明らかに大型化され、形状も見直されている。
刃を上から見たところ。新型はザッセンハウス・プジョーに酷似。旧型は四条。


左が新型 内刃以上に大きさが異なることが分かる。旧型は「ホッパー」と一体化されており分解できない

右が旧型 粉を細かくする部分がない・・・。これでも機能することに驚愕。

次回は、形状と使い勝手の関係を明らかにしていきたいと思います。

2014年7月31日木曜日

ザッセンハウス・プジョー・KONO式(コーノ式)ミル(F101・F205・F303)の比較 まとめ

 今までザッセンハウス、プジョー、KONO式(コーノ式)ミルF205・F303・F101を見てきました。項目を同じようにして、比較しやすいようにしたつもりでしたが、改めて読み返してみると、結論が出ていない回が多く、冗長という印象があります。 また、適切な刃の形状とは何かという結論も出ていませんでした。ここでまとめたいと思います。

軽快な挽き心地を実現するための条件としてわかったこと。

今まで言われてきたこと

プジョーの特徴
  • 二重螺旋臼刃(内刃)
  • 鋭い刃(内刃)
  • 硬質な金属(内刃)
ザッセンハウスの特徴
  • 二重螺旋臼刃(内刃)
  • 鋭い刃、非常に切れ味が良い(内刃)
  • 硬質特殊鋼製(内刃)
***プジョーとザッセンハウスの比較でわかったこと***
  • ミル本体を固定すること
  • ホッパーの勾配を緩く、段差を作るなどして、引き込む豆の量を少なくすること。
  • ホッパーの勾配を緩すると、豆が飛び散り汚れる。
 KONO式(コーノ式)ミル F205の特徴
  • 均等な螺旋形状ではなく、不揃いな「斜面」(内刃)
  • ほとんどエッジが立っていないと言い切れる、なだらかな刃(内刃)
  • ネットでは、切れ味が悪いとされる鋳物製(内刃)
***F205を加えてわかったこと***
  • 内刃は形状さえ「適切」であれば、鋭さ・硬さは関係ない
  • ホッパーを浅くすることで問題となる汚れやすさも、以下の3点で解決
         外刃上部をすぼめること
         内刃の上部を小さくすること
         内刃を外刃に対して下に配置すること

KONO式(コーノ式)ミル F303の特徴
  • 打ち抜いた板を重ねた形状(内刃)
  • ほとんどエッジが立っていない、なだらかな筋(外刃)
***F303を加えてわかったこと***
  • なだらかな螺旋
  • 外刃も豆が引っ掛かれば、鋭さ・硬さは関係ない
  • 外刃も鋭さをなくして、豆を滑らせることで、さらに軽く、汚れも少なくなる

KONO式(コーノ式)ミル F101の特徴
  • 均等な螺旋形状ではなく、不揃いな「斜面」(内刃)
  • 刃の上部は砕くのみ、下部を螺旋構造にして、豆を引き込む「三重」螺旋臼刃(内刃)
  • ストロークの短い細断部(内刃)
  • 螺旋のない破砕部(外刃)
***F101を加えてわかったこと***
  • 内刃の上部は、砕けさえすれば、均等な形状でなくとも良い(内刃)
  • 外刃の上部も砕くのみ、螺旋は不要(外刃)

まとめ

 KONO式(コーノ式)ミルの最大の特徴は、「螺旋が弱い」ことでしょうか。
  • 螺旋が弱いことで、圧着する力が弱くなる。軽い挽き心地を実現する手段の一つ。
  • 螺旋が弱いことで、引き込む速度が遅くなる。軽い挽き心地を実現する手段の一つ。
  • 螺旋が弱いことで、表面積が少なくなり、一度に豆・破片が接する面が少なくなる。結果、軽い挽き心地になる。
螺旋が弱く、小さな破片が螺旋の中に入り込むことがなくなることで、破片が常に外刃の刃に接触するため、挽き心地が軽くなります。ではここから導き出される「適切な形状」とは何でしょうか。

適切な形状とは、適度に豆を弾くこと、小さな破片が螺旋の中など、内外の刃が届かない場所に入り込まないこと、面で砕くのではなく、点・線で砕くことと言ってよいと思います。
左からF205・F101・F303・プジョー・ザッセンハウス

軽い挽き心地を実現する要素は、
  1. ミル本体を固定すること
  2. ホッパーの勾配を緩く、段差を作るなどすること
  3. 内刃・外刃ともに、鋭さは関係ないこと、逆に、適度になだらかなほうが軽くなること
  4. 内刃・外刃ともに、上部は螺旋を弱くし、過度に豆を噛みこまないこと
  5. 豆を砕く部分は、 面で砕くのではなく、点・線で砕くこと
と結論付けて良いでしょう。


****


 ここで取り上げたミルの特徴、結論は、ブログを書く前から持っていて、わかっていたことを、出し惜しみをしているのではないか、と思われる方もいらっしゃるのではないかと思いますが、そのような事はありません。

 書くことで「わからないこと」が明確になり、もう一度考えなおすことで、書けるようになってきたというのが本当のところです。

 書き貯めてはいます。 しかし、合理的な説明ができないことが多く、とてもわかっているとは言えないことばかりです。そういう点では、「書き貯めている」のではなく、断片的なメモばかりが、たまり続けているというのが実情でしょうか。公開が少ない頻度なのも、うまくまとまらないからです。

 情けない話ですが、真剣に考えてきたつもりでしたが、全然わかっていませんでした。

 今までずいぶん無駄な事をしてきました。自己紹介欄に、考えて考え抜いた時間は無駄ではないと書きましたが、あきらかに真剣に考えていなかった時間を無駄にしてきました。もっと早く書き始めれば良かったと思っています。

2014年7月21日月曜日

KONO式(コーノ式)ミル F201を研究する(3)

 更新が遅れすみません。仕事が急に忙しくなったので、しばらく遠ざかっておりました。

 今回から、ちゃんとした研究です。

 KONO式(コーノ式)ミルといえば、この機種と言われるほど、圧倒的に有名なモデルです。形状、色が魅力的だからでしょうか。今でも特別に人気がありますね。
F201改:何度調整しても、色彩が明るくなりすぎます

 実際に使ってみると、実に使いやすいモデルです。握った時の大きさ、高さのバランスが良く、想像以上に挽いていて疲れることがありません。

 刃はF205と同じ形状のものが使われています。驚くべきことにF205と、挽いた時の重さがそれほど変わりません。バランスが良く、挽いていて疲れないため、一番使う頻度の高いF205とあまり変わらないのです。さすがに50回転(10グラム中粗挽き程度)位すると、まわした手が疲れますが、それはコーヒーミルとは無関係に疲れると思います。

 このミルの挽き心地は何が要因となっているのでしょう。今まで比較してきたのは主に刃の形状でした。今回は本体の形状を見て行きます。使いやすいコーヒーミルの形状とはどんなものか(1)では、

  • 絶対値として、動作が軽いこと
  • 底面が固定されること
  • 押さえる手に無理な力がかからないこと
  • 本体を押さえながら、ハンドルを廻した時に、押さえた手と干渉しないこと
を満たす形状として
  • 廻した時に左手に当たらない高さに、ハンドルが配置されている
  • 左手で押さえる際、親指と人差し指を開いて握るような形状は押さえやすい
  • 角のない受け皿
  • 分解しやすく、場合によっては洗える本体
を考案しました。そしてF201が上記の条件を満たしているのか、検証するのが今回の目的です。

廻した時に左手に当たらない高さに、ハンドルが配置されている

 F201は、ちゃんと適切な高さにハンドルがあります。いろいろな姿勢で挽いてみましたが、どんな時でも干渉することはありません。

 
左手で押さえる際、親指と人差し指を開いて握るような形状は押さえやすい

 手の大きさにもよるのでしょうが、私は下の青い部分(通常モデルは赤い部分)を包み込むように握ることができます。大き過ぎず、小さ過ぎず、ちょうど良い大きさです。

角のない受け皿


  「角のない受け皿」の条件を満たすだけあり、ふちに残るようなことはありません。容量も十分で粉があふれることもありません。オリジナルはどうかわかりませんが、再塗装した結果、粉の滑りはとても良い状態です。
F201受け皿:ウサギを描いてみました。粉だらけでかわいそうなので、毎回洗おうという気持ちになります


分解しやすく、場合によっては洗える本体

 ハンドルを除くと3箇所のネジを外せばすべて分解ができます。ベアリングを除き、すべて水洗いができます。大変気持ち良いです。


ハンドルの動作半径

 動作半径はF101と同じ110mmです。以前、F101のハンドルをつけた写真を載せましたが、F101の取り付け穴のほうが大きいので、残念ながら取り換えっこはできません。。

刃の形状・鋭さ・材質・硬度

 コーノF205の高さ(20mm)・径(40mm)・螺旋形状(11条不均等)と同じです。材質・硬度は同じく不明です。磁石の付き具合から、「鉄系の材質という「印象」です。硬さについては、どの程度なのかは、わかりません。

 今まで全てミルについて、使用感の違いを以下の6点になると思うと書いてきました。KONO式(コーノ式)ミル F201ではどうなのか、同じ項目について個別に見ていきます。
  1. 挽き心地が軽いか否か
  2. ホッパーに豆が残るか否か
  3. ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか) 
  4. 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か
  5. 分解がしやすいか 
  6. 豆の入れやすさ
  • 挽き心地が軽いか否か
  前述しましたがF205と、挽いた時の重さがそれほど変わりません。いろいろな姿勢で挽いてみたと書きましたが、椅子に座ってテーブルの上で挽いても、キッチンに立ってキッチンテーブルに置いて挽いても、また、この小型軽量のモデルならではだと思うのですが、立って宙に浮かせたまま使っても大丈夫です。というかこれが一番使いやすいです。今まで考えてもみなかったので、私には新鮮な驚きでした。実際に使って割り出した形状という印象を受けます。
 F201・F205とも大変軽い挽き心地なので、この刃の形状については、別に検証する必要があるのかもしれません。今後の課題にしたいと思います。
  • ホッパーに豆が残るか否か
外観からもわかる通り、かなり傾斜があり、豆が残るようなことはありません(今回の改造で、内側に塗装したためかも知れませんが)。また、穴から飛び散ることもありません。なぜか飛び散る量はF205よりも少なく、F303並みに少ないです。
 本体と刃の間に継ぎ目があり、どうしても細かい破片が残ります。この点、ザッセンハウスは面一(つらいち)になっており、そのようなことがありません。改めてザッセンハウスのつくりの良さを再認識しました。

  • ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか) 
  前項、「角のない受け皿」に記載しましたが、ふちに残るようなこともなく、容量も十分です。あたりまえのことですが、本体上部に残った粉をしっかり落とさないと、受け皿を外したとたん、周囲に残った粉がこぼれ落ちます。しかし、F201の場合は、すぐに横にすれば、粉が外にこぼれ落ちることはありません。本体上部のスカート部が大きく深く、すべてそこに落ちるのです。この時そのまま放置せず、毎回掃除をすれば、次回以降も、汚れが飛び散ることは少なくなります。通常のミルでは、ここまで本体を掃除するのは手間がかかるので、掃除のしやすいこの形状は、非常に優れたものといえるでしょう。
スカート内部の汚れ 30g位挽いた後

  • 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か
  調節機構は、F205同様、側面を落とした形状になっています。これにより、ハンドルを楽に取り外すことができます。何度も書きますが、この機構は大変優れモノです。ネジを緩めることな く、粗さの調節ができます。

  • 分解がしやすいか 
前述しましたが、ハンドルを除くと3箇所のネジを外せばすべて分解ができます。部品点数の少なさという点で、このミニマムな形状は、キャビネット型に比べ、基本構造として優れたものがあると思います。

  • 豆の入れやすさ 
  投入口と、飛び散り防止のための蓋を兼ねた構造になっています。形状から想像すると、穴が小さく、豆があふれそうに思えるのですが、ホッパー開口部の大きさが広いので、計量スプーンで入れる際も、豆がこぼれることはありません。ふちの高さが足りないと思うかもしれませんが、そのようなこともありません。また、挽く際には、豆はすべて穴に落としてから挽き始めるので、残った豆がこぼれることもないです。見た目からは想像できないほどに、この形状は使いやすいです。
穴から豆が落ちてしまったので、撮影のために30g位入れていますが、それでもこぼれません

  • 結論・評価
最後に評価です。この機種はKONO式(コーノ式)ミルとして高い評価をすべきかですが、私としては、今の時点で最高の評価を与えたいと思います。何もかもが、実によく考えられています。
  • 無理のない軽い挽き心地
  • 粉を入れやすい受け皿
  • 分解しやすく、場合によっては洗える本体
 のすべてを満たしているばかりか、
  • 汚れが飛び散りにくい本体形状
  • 毎回の掃除が苦にならないメンテナンス容易性
  • 小型にも関わらず、豆を入れやすいホッパー形状
など、理想形状と言って良いです。唯一、本体と外刃の間に粉が残る点だけは、いただけませんが、それにしても、ザッセンハウスを除く、他のどのミルよりも残りません。
 キャビネット型のミルには、なんともいえない雰囲気がありますが、掃除のしやすさという点で、この形状のミルがもっと普及しても良いと思います。


 F201は、間違いなく人気と、価格高騰に値する名機だと思います。

2014年6月28日土曜日

KONO式(コーノ式)ミル F201を研究する(2)


完成したKONO式(コーノ式)ミルのF201(改)。梅雨でなかなか塗ることができす、遅くなりました。
今回は写真だけです。

 F101の青いハンドルをつけた感じが気に入ったので、せっかくなので、青に塗ってみました。
赤の本物と並べてみたいですね。


 なんだかずいぶん青が明るいですが、実際はもう少し地味です。アップロードすると、なぜか色調がこうなります。


KONO コーノ F201
本物と並べたら面白そうです。

KONO コーノ F201 分解写真
刃が錆びて見えますが、真鍮のブラシで磨いたので、金色になっているだけです

2014年6月14日土曜日

KONO式(コーノ式)ミル F201を研究する(1)

 早速、F201を入手することにします。いろいろ探しまわった結果、かなり程度の悪い個体を発見、F201としては安い金額で手に入れました。しかし、ハンドルが違うものがついていたり、全体に錆が回っていたり、安いだけのことはありました。
F201 ボロボロです ハンドルも違う機種のものがついています

ホッパーの内側も錆びています
バラしたところ・・・。タグが錆びていないのが救いです
ここまで程度がひどいと、オリジナルを維持することの意味を見出せません。思い切って塗装をはがし、塗り直すことにしました。とりあえず錆を取り磨きます。

 こうしてみると、なんだかストイックで恰好良いですね。

磨いて錆を取りました
内側の錆を取るのは大変でした

バラしたところ

F101のハンドルをつけてみました(笑) 青もいいですね
今回は錆に悩まされましたので、二度と錆ないように下地に錆止めを塗ります。何が良いのか調べましたが、私は徹底する性格なので、JIS-K5629にします。本来は屋外に使用するものなので、これなら間違いないでしょう。亜鉛系ということで、ローバルも候補に挙がりましたが、上塗りできないので、こちらを選択しました。

 軍艦色でミリタリー調になりました。本形状を調べていて知ったのですが、似たようなプジョーのディアボロは軍用だったために、こうした形になったのですね。

錆止めを塗ったところ さらにストイックになりました
ハンドルも白に塗りました
 次回は、完成した状態をアップする予定です。しかし、塗装は思いのほか難しいです。


2014年6月7日土曜日

使いやすいコーヒーミルの形状とはどんなものか(1)

 使いやすいコーヒーミルとはどんなものか、もうひとつの重要な要素であるミルの固定方式から、考えてみることにします。

 ここで改めてかつおぶし削り機「オカカ」を使ってみます。オカカは下面に吸盤があり、固定できるようになっています。本体の固定という点では申し分ないです。しかし、かつおぶしを上から強く押さえないとなかなか削れません。この上から押さえる力に該当するのが、今まで検証してきた螺旋の強さです。

 コーヒーミルの場合、ホッパーの斜面と螺旋により、豆を引き込み、挽くことができました。引き込む力が強すぎると、一度にかかる力が多く疲れましたが、オカカのように、押さえる力がまったくないと、押さえる手が疲れます。こんなことを考えながら、かつおぶしを押さえながらハンドルを廻すと、左手の手首が干渉し、それを避けるために無理な押さえ方をするので、左手の手首が疲れることが分かりました。

 早速、コーヒーミルを使ってみたところ、やはり、ハンドルを廻した時に、押さえる側の左手と干渉するモデルは、疲れることが分かりました。 いろいろなブログを読みますと、本体が大きいモデルは疲れにくいことが書かれていますが、それは押さえる手に無理な力がかからないこと、本体を押さえながら、ハンドルを廻した時に干渉しないモデルを意味しているように思えます。

コーヒーミルにおける「固定のしやすさとは何か」を考えると、以下の4点があげられると思います。
  • 絶対値として、動作が軽いこと
  • 底面が固定されること
  • 押さえる手に無理な力がかからないこと
  • 本体を押さえながら、ハンドルを廻した時に、押さえた手と干渉しないこと
この点から見直すと、今まで見てきたモデルでは、F303が一番使いやすいです。
  • 抜群に軽い動作
  • ゴム足(刻印付きのモデル)
  • 左手で押さえる際の接地面の広さ
  • 廻した時に左手に当たらないだけの高さにあるハンドル
名機 F303 人気があるのもわかります
全ての要素を持っています。やはり、F303は使いやすいモデルでした。人気があるのもわかります。

 これでF101のように角のない受け皿と、分解掃除がしやすければ最高なのにと、腕が疲れず、受け皿が汚れにくい構造の要素を突き詰めていたところ、F201の形状が浮かんできました。
F201 ミニマムな形状

  • 廻した時に左手に当たらない高さに、ハンドルが配置されている
  • 左手で押さえる際、親指と人差し指を開いて握るような形状は押さえやすい
  • 角のない受け皿
  • 分解しやすく、場合によっては洗える本体
まさに最小限の形状で、上記の要素を満たしているように思えます。

 これだけコーヒーミルのことを考えながら、F201の存在を完全に失念するなんて不思議ですが、箱型のミルのことばかり考えていたので、思い浮かびませんでした。しかし、考えれば考えるほど、上記の条件を満たしているように思えます。こうなると、もう頭の中がそれだけでいっぱいになってしまいます。早速、Yahooオークションで探したところ、定期的に出品されています。落札することにしました。

 次回はKONO式(コーノ式)のミルで最高の人気を誇る、F201を取り上げます。

2014年5月31日土曜日

KONO式(コーノ式)ミル F101を研究する(3)


今まで、全て使用感の違いを以下の6点になると思うと書いてきました。KONO式(コーノ式)ミル F101ではどうなのか、同じ項目について個別に見ていきます。
  1. 挽き心地が軽いか否か
  2. ホッパーに豆が残るか否か
  3. ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか) 
  4. 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か
  5. 分解がしやすいか 
  6. 豆の入れやすさ
  • 挽き心地が軽いか否か
  KONO式(コーノ式)ミル F101を研究する(1)でも書きましたが、通常はF205より若干重い程度でしょうか。ときどき重くなるようなことがありますが、ザッセンハウスのように、逆回転しなければらならないほどではありません。F205、F303ではベアリングが使われていましたが、この機種はベアリングが使われていないです。
  • ホッパーに豆が残るか否か
  KONO式(コーノ式)ミル F101を研究する(1)でも書きましたが、比較的プジョーの形状に近いです。ホッパーと外刃の間に段差があり、ここには豆が残ります。 F205でもそうでしたが、本体を振るなどして、刃の中に落とすことが必要です。残念ながら、挽いている時の振動だけで落ちるようなことはないです。

 段差があり、ホッパーの形状が浅いと、プジョーのミルと同じく、破片が飛び散る量が多そうですが、それほどでもありません。もちろん飛び出ますが、絶対量が少ないです。KONO式(コーノ式)ミル F205(共通刃 F201・F205)を研究する(2)でも書きましたが、F101では特に、内刃の上部が小 さく、上の部分で砕くこと自体が少なくなっているのが特徴でしょう。
F101:内刃の上部の径が小さい

プジョー:螺旋が強い

F101では刃の上部に螺旋がないことで、噛みこむ力を減らし、噛みこめなかった豆が上に弾かれる量を少なくしています。「砕くことに専念して、無理に引き込まないこと」で、砕けなかった豆、破片を飛び散りにくくしていると言えるでしょう。

  • ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか) 
  F101の最大の美点です。樹脂製ならではの特徴を生かし、薄くすることでしホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るようなことをなくしています。また曲線に加工することで、無駄なく挽いた粉を入れることができます。実に使いやすく、これだけでも使用頻度が上がるものです。
左側がF101 右側がプジョー F101の有効面積の広さがわかります
こんなにも差があります

  • 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か
  調節機構は、F101独自のものです。ネジ式のように無段階に調節はできませんが、とても楽にできます。 丸いノブを引き上げ、5つある穴のどこかにはめます。この写真では、左側ネジが粒度が荒く、右側が細かくなります。構造部品は多くなりますが、大変使いやすいです。
F101 調節部

F101調節機構部品 取り外しできます

  • 分解がしやすいか 
F101は特筆すべき個所が多いので項目を分けます。

ハンドル

 F205・F303同様、ハンドルはネジ留めではないので、大変楽に組み立てができます。ここはぜひ、他社も見習ってほしいです。一番上の袋ナットは、残念ながら ザッセンハウス、プジョー同様、ネジの締まる回転方向と、ハンドルを回転させる方向が一緒なので、どんどん食い込んでいきます。ただ、F303よりも一回り大きく、かじることはありません。 プジョー、F205よりは材質は良いようです。
側面を落としているため、ハンドルが楽に取り外しできます
本体の分解方法
この状態ではじめて蓋を外せます

ホッパーと本体はネジ止めされています(写真はネジを外したところ)
前の所有者は取り扱いを間違えたようです。壊れていました


組み立て方法

樹脂のワッシャーから先に入れます
次に金属のワッシャーを入れます
内刃はこの部品で初めて固定できます

  • 豆の入れやすさ 
  F205と同程度の広さです。ただ、分解掃除ができないので、個人的にはこの構造は好きではありません。
 豆入れの位置が、管理人のF101は正面向って手前にあるのに対して、Thumb Under (サムアンダー)さま昌’sCoffee( Masa's Coffee )さま のミルは向って左にあるとの指摘がございました。 実は理由は単純で、前述、本体の分解方法でおわかりのように、管理人のミルは、ホッパーと本体のネジ止め部分が壊れているため、適当に置いたというのが真相です。向かって左にあるのが正しい組み立て方です。

  • 結論・評価
さて、この機種はKONO式(コーノ式)ミルとして高い評価をすべきかですが、私としては、大変使いやすい機種だと思います。なによ り、受け皿の形状が良いです。粉が受け皿に残らないだけで、これだけ印象が良くなるとは思いませんでした。分解掃除も、蓋以外は分解できない個所もなく、苦に なりません。私のように、外蓋を本体に固定しなければ、さらに掃除が楽になります(笑)。
本体に固定できないので、すぐに掃除ができます(笑)
F101は、隠れた名機だと思います。