2019年1月14日月曜日

HARIO セラミックスリム・MSS-1を研究する(4)

前回、HARIO セラミックスリム・MSS-1について、改造した部品をつけるとどうなるのか、挽いた粉の品質を比較すると書きました。早速挽いてみたので、結果をレポートします。
HARIO セラミックスリム MSS-1 改造部品群(白)
細挽き

 改造部品を使用しても、ほとんど変わりません。よく最近のミルの売り文句に「ここまで細かく挽けます」といった性能のアピールがありますが、あまり意味がないものと思うようになりました。というのも、ほとんどの最近のディアボロ型のミルに採用されているHARIO社、ポーレックス社のセラミック刃を使ったミルであれば、ギリギリまで隙間をなくせば(空廻しすると刃のこすれる音はしますが)、このくらいの細かい粉は挽けるからです。両社の刃を使用するミルであれば、すべてこのレベルを満たすと考えて良いでしょう。



MSS-1 細挽き比較 左オリジナル 右改造
中挽き

 改造部品の使用で明らかに変わります。改造後のモデルの方がずっと粒度が揃います。
 写真で見ると、右(改造モデル)の方が細かい粉が多いように見えますが、実際には左(オリジナル)の方が(求める粒度より)細かい粒度の粉の割合が多くなっています。右(改造モデル)のほうが、「中挽きの大きさの粉」が占める割合がずっと多いのです。粉を揺さぶると粒度の粗いものが上の方に浮き出してきますが、左のオリジナルの方は、そのような状態です。
MSS-1 中挽き比較 左オリジナル 右改造
右の方が細かい粉が多いように見えますが、実際には左の方が細かい粒度の粉の割合が多くなっています
今回、粒度の設定は刃の隙間をどうするかではなく、挽いた粉の粒度から判断するようにしました。狙った粒度の粉が最も多い割合の設定が「求める粗さの設定」とした訳です。
 オリジナル(左)では、粒度を粗めに設定すると、すぐに大きな粒が混じります。そのため、大きな粒が混じらず、中挽きの粉が多くなるようにするために、ずいぶん細かい粒度に設定しています。
 写真で見ると、つい大きな粒に目が行きますが、実際にはそれほど多い割合を占めるわけではありません。中挽きに挽いたように見える粉でも、均してみるとそうでもないのです。設定はどうであれ、求める粒度の粉が得られれば良いのですが、オリジナルで中挽きの粒度を求めると、細かい粒度の粉が多く含まれてしまいます。

粗挽き

 中挽きよりもさらに改造部品の効果があります。写真で見ると、右(改造モデル)も左(オリジナル)も変わらないように見えますが、左(オリジナル)は、想定以上の大きさの粒(赤丸)が混じるようになり「制御範囲を超えた」という印象を受けます。先ほど中挽きの説明で、「オリジナル(左)では、粒度を粗めに設定すると、すぐに大きな粒が混じります」と書きましたが、粗挽きの設定は非常に難しいです。右下のあたりに細かい粉(青丸)が多く含まれていますが、これは中挽きの設定と大して変わらないためです。わかりやすくするために今以上に粗くすると、あまりに大きな粒ばかりになり、「悪意」を感じさせる写真になってしまいます。それは私の本意ではありません。
 右の改造モデルにも、もちろん細かい粉は含まれますが、割合が異なります。大きな粒も混じっているのですが、狙った大きさ以上の「制御範囲を超えた」粒は出ていません。粗挽きの粉が挽けているという印象を受けます。
MSS-1 粗挽き比較 左オリジナル 右改造
青丸部分の粉が最も多いにもかかわらず、想定以上の大きな粒(赤丸)が混じる


評価
 改造部品を使用することで、実用範囲の粒度についてコントロールできる範囲が広くなり、かつ、求める大きさの粒が多くなる粉を簡便に得られるようになりました。
 こうしてみると、限界点を超えた途端、突然大きな粒が混じり始めるオリジナルモデルは、粗挽きの側で制御できる粒度の範囲が狭いことがわかります。これでは、得られたベストポジションを失わないため、分解掃除をためらってしまいます。洗った後に、また時間をかけて何度も調整することになるのかと思うと、分解掃除が億劫になるのも無理もないと思います。せっかく分解掃除がしやすく、簡便な構造を持つ本機の長所を生かすことができません。
 改造部品は、分解掃除のハードルを下げます。この部品は、当ブログの考える良いミルの第六条件「意図した粒度で挽けること」を得るという直接的な効果だけでなく、HARIO セラミックスリム・MSS-1を研究する(3)で明らかになった第三条件の「挽き心地が軽いこと」、このミルの圧倒的に素晴らしい長所である第二条件「分解・掃除・組立がしやすいこと」をさらに推し進めると言えると思います。

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 しかし、粉の比較写真は非常に難しいです。言葉による説明がないと理解が及ばないのでは失格ですね。また、何度も挽いていると大きな粒をなくそうとする意識が働くようで、気が付くと細かい設定になっています。その結果、比較と言いながら、あまり変わらない写真になってしまいました。
「わかりやすい絵」にすることも可能ですが、悪意が感じられたり、どうにも嘘っぽくて、私の性分に合いません。挽けばわかりますが、「制御できる範囲が広くなり、求める大きさの粒が多くなる」という効果で、わかりやすい絵などほとんどないのです。