2015年9月12日土曜日

PATEK PHILIPPEのこと(2)

 腕に載らなかったカラトラバオートですが、12-600ATには抗し難い魅力があります。Ref.425は普段使うには、ちょっと気を使うところがあるため、スクリューバックのものを探していました。いろいろな店で様子を伺っていたところ、大きめですが、コンディションの割には非常に安いRef.2552が出ていたので、買ってしまいました(といっても20年前ですが)。Ref.2552はカラトラバオートではありません。カラトラバオートを名乗れるのはRef.3403、Ref.3439、Ref.3438だけです。

PATEK PHILIPPE Ref.2552 12-600AT

 今回、この記事を書くために写真を撮りましたが、この時計を撮影するのは実に難しいです。バーインデックスのエッジの鋭さ、針の立体感を伝えることは至難の業です。この1枚を撮るのに半日以上費やしましたが、Ref.2552の持つ魅力の半分も伝えていません。時計雑誌が、どのように撮っているのか参考にしようと見直したのですが、まったくいい加減な写真しか撮っていないことがわかりました。

 確かに、証明写真大程度の紹介写真では、一枚にかけることができる時間が少ないので、他の時計と似たようなセッティングにしたのだと思われますが、それではこの時計は、ちゃんと写ってくれません。今回、Ref.425や他の時計も一緒に撮ったのですが、Ref.2552だけが格段に難しいです。

 光が十分に廻らないと、安っぽい金色になりますが、そうなるとこの時計の持つ鋭いエッジ感が伝わりません。別のライトを使って鋭さを出しますが、ひとつのインデックスの質感を出せても、別のインデックスの影がうまく出ません。すべてのインデックスの仕上げがあまりに素晴らしいので、うまく影の出ないインデックスが気になって仕方ないのです。

 Ref.2552を撮影することで、あらためて、このデザインの完成度の高さ、視認性の良さを再認識しました。

 この時計は、わずかな光さえあれば、鏡面加工されたインデックス、針が鋭く光を反射するので、時間がわかります。今回の撮影に当たり、インデックスに当たる光をコントロールするため暗闇を作ったのですが、ほんの少しの隙間から洩れてくる光にも反射してしまうため、ずいぶんと困りました。逆にいえば、それだけ視認性が良いということです。
 これこそ、用の美でしょう。本当に良いデザインというものは、美しいだけでなく、それだけで何種類もの機能を果たしてくれるものです。

 この時計も、存在するだけで多くのことを教えてくれました。

 今まで、この「カラトラバ」のデザインが素晴らしいということを言ってきましたが、他人の言葉で言っていたと思います。初めて、自分の言葉でこの時計の魅力を話せるようになりました。

 手に入れてから、ずいぶん時間がかかりました。

0 件のコメント:

コメントを投稿