2015年11月21日土曜日

既存のミルの欠点を取り除いた軽快な挽き心地、粉が飛び散りにくいミルを考案する(4)

 いつも大変お世話になっている機械加工会社の会長に、図面をお見せしたところ、これではせっかくのZZ型高性能ベアリングが、本来の機能を発揮できないとのアドバイスをいただきました。
  •  ベアリングというのは、ちゃんとした寸法の穴に、ちゃんと固定しないと意味がない。
  •  下のベアリングを固定しているのは、樹脂製の部品ということだが、これでは動いてしまう。
  •  本体に2個所はめれば、樹脂製の部品についたベアリングは、機械的に意味がない。
 機械を扱う方には、あたりまえの話のようなのですが、今まで見てきた部品は、もっと自由度が高かったので 気が付きませんでした。いただいたアドバイスの通り、青丸部分のベアリングをなくし、赤丸の部分にベアリングを固定することにしました。


ベアリングが機能するように設計を変更
会長のおかげで、挽き心地がはるかに良くなる可能性が出たばかりか、刃の下にベアリングを配置すると、第一条件を満たさなくなるという問題が解決しました。

 しかし、ベアリングが「固定されていない」にも関わらず、F201改があれほどスムースに動くということは、今までどれほど軸がぶれていたのか、考えさせられるものがあります。

 なお、スタビライザー(薄茶色の部品)を廃止すれば第二条件も満たすことが可能になりますが、外刃(黄色の部品)を本体に固定しないといけないのと、本体の材質をアルミの削り出しで考えているので、廃止すると本体と受け皿の間にコーヒーの微粉が入り込んだ際、本体に「カジリ」が発生してしまう可能性があるため、残すこととします。

++ 会長のこと ++++++++
 今日はお世話になっている方のことを書きます。

 今まで何度か職人の方と書いてきましたが、ご自身が、職人ではないとおっしゃるので、会長と書かせていただきます。

 機械修理からキャリアをスタートし、キサゲの名人でもある会長は、手動のフライス盤・旋盤・ボール盤を使って、目の前で試作品を作って下さいます。刃物も使いやすいように、自由自在に加工し、作り上げます。今時、こうしたことをして下さる工場は少ないのではないでしょうか。

 会長は大変温厚な方です。職人というと気難しいイメージがありますが、決してそんなことはありません。段取りの時など、素人の私が「これは何をしていらっしゃるのですか」といった不躾な質問に対しても、丁寧に教えて下さいます。

 「バリを取ったり、穴をあけるだけといった、大した作業はしていないけれど、段取りに時間がかかるんだよ」 

 作業1に対して、段取り8~9といった感じでしょうか。特に測定にかける時間、測定機器の豊富さは目を見張るほどです。

 「段取りに時間がかかるというけれど、結果的には、それが一番早いんだよ。手を抜くと、製品の不具合で戻ってきたりして、結果的に時間もかかるし、信用もなくなっていく。」

 会長はいつも、重みのある言葉をおっしゃいます。

 会長のお話は、いつもとても楽しく、ついつい長居をしてしまいます。経験豊富な会長は、どんな加工上、設計上の疑問を聞いても、即座に解決策を示して下さいます。しかも、機械修理の経験がおありなので、壊れやすい箇所や、その補強方法まで示してくださるのです。

 仕事の姿勢も、日本企業かくあるべしといったものです。

「同じ図面の製品があっても、うちで作ったものは、見るだけですぐわかるよ」
「納品先に持って行っても、『ここの製品は丁寧にできているから、ちゃんと扱わないといけないよ』と、相手も注意して大事に扱ってくれるものだよ」

 そうやって、似たような仲間でお仕事をして、それがさらに良い製品を作ることにつながっていく・・・。会長と接していると、私にはそれがよくわかります。

 私の作るミルは、間違いなく、そうした方々のネットワークの上で作られています。

2015年11月14日土曜日

既存のミルの欠点を取り除いた軽快な挽き心地、粉が飛び散りにくいミルを考案する(3)

  設計を進めているミルですが、当然のことながら、当ブログの考える「良い手動式ミルの条件」を満たす構造にしていきます。



 第一条件:古い豆、粉がミルの中に残らないこと。

 第二条件:分解・掃除・組立がしやすいこと。

 第三条件:挽き心地が軽いこと。

 第四条件:周囲を汚さないこと。

 第五条件:収納しやすいこと。

 第六条件:意図した粒度で挽けること。

 第七条件:満足感の高いこと。





いきなり残念なお話なのですが、刃の下にベアリングを配置すると、第一条件・第二条件を満たさなくなります。

赤丸の部分に粉が付着します

  第一条件:古い粉がミルの中に残らないことですが、ベアリングを固定するための「スタビライザー(薄茶色の部品)に、どうしても粉が付着します(画像、赤丸の部分)。わずかな量ではありますが、「部品がない」ミルに比べれば残るのは事実です。



  第二条件:分解・掃除・組立がしやすいことも、スタビライザーを本体に固定するにはネジ(赤い部品)が必要です。もう少し、スペースに余裕があればなんとかなるのかもしれませんが、少なくとも、ハリオのMSS-1のように、何の道具も必要とせずに分解・組立ができる構造になりません。

大変残念ですが、上下にベアリングを配置するのは、「大前提」と言っても過言ではない構造条件なので、ここだけは仕方がないです・・・・・。

2015年11月1日日曜日

既存のミルの欠点を取り除いた軽快な挽き心地、粉が飛び散りにくいミルを考案する(2)

 設計を進めます。実物が手に入り、うれしくなったので徹夜で、75mmに再設計した本体に、今まで設計してきた刃を組み込んでみました。

 構造的に、未確定な要素があり、詰め切れていないのですが、この方向で行きたいと思っています。

断面図 3DCADで設計してみました

緑色の部品がベアリングです。F303、F201改での経験をもとに、上下をZZ型のベアリングで支えます。

 上部ベアリングを本体に固定することで、F201改で得られた、あのなんとも言えないスムースな挽き心地を、はるかに上回る感触を、実現したいと思います(F201改では、上部ベアリングは単に、はさんだだけでした)。

 前回のモックアップもそうですが、実際に手に持った時の感触を知ることができるのは、モノを作る上で非常に大事なことです。今回も、F201改のスムースな感触を超えるまで、好きなだけ作りこむことができます。

 自己紹介にもある通り、「過剰品質」を目指します。