2019年3月21日木曜日

コーヒーミルの刃なのか、歯なのか、臼なのか

この部品は、コーヒーミルの刃なのか、歯なのか、臼なのか?

KONO F101相似形のオリジナル設計 外刃・内刃

先日、刃物の専門メーカーの技術者と話をする機会がありました。

①コーヒー豆を挽くのに適した刃の形状は、どのようなものか
②ミルは豆を切っているのか、砕いているのか
③この部品は刃なのか、歯なのか、臼なのか

について聞いてみました。私にとっては大変明快な答えが出たので、それを書きたいと思います。

①コーヒー豆を挽くのに適した刃の形状は、どのようなものか

「どのような形状にしたいのか」によって刃物の形は異なる

 私としては「最適な形状」というものがあるのではないかと思ったのですが、それについては、「どのような形状にしたいのか」によって刃物の形は異なるという、極めて当たり前ですが、非常に難しい答えが返ってきました。
 そういえば、私は今まで「挽いた豆をどのような形にしたいのか」については考えたことがありませんでした。いったん、「粒度を揃える」という質問でお茶を濁すことにしました。

 固くて大きなものを細かくするには、二段階経る必要がある。第一段階である程度の大きさに砕く、第二段階で粒度を整えるという異なる機能が必要だ。この形状を見ると、上のほうで大まかに粉砕しており、下のほうで粒度を整えている。ちゃんと異なる機能を持つ形状になっているので、問題ないと思うとの回答を戴きました。

②ミルは豆を切っているのか、砕いているのか

どんなミルでも「砕いている」と即答されました。理由は「微粉が発生するから」です。「完全に切断」すると、微粉は発生せず、切断された物体だけになります(紙を例にとるとわかりやすいです。切れ味が良い刃物で紙を切ると紙粉は発生しませんが、だんだん切れ味が悪くなってくると、紙粉が発生するようになります)。微粉が発生するということは、ちゃんと切れていないので、砕かれているか、破断されているからです。微粉の発生しないコーヒーミルは存在しないので、砕いているというのが回答でした。

③刃なのか、歯なのか、臼なのか

刃だと思うとの回答です。歯は歯車など「噛み合うもの」に使うが、これは噛み合っていない。臼については、何とも言えないが、この形状は大きなものを砕き、粒度を整えるという二つの機能を異なる形状で行っているので、違うような気がする。それに臼は明確な形状の特徴(六分画・八分画・反時計回りなど)があるため、「臼機能」であっても、臼ではないだろうとのことでした。
言葉は悪いが「切れ味の悪い刃」というのが適当だと思う。というのが回答でした。

今までずっと疑問に思っていたことが、とてもすっきりしました。

2019年3月2日土曜日

既存のミルの欠点を取り除いた軽快な挽き心地、粉が飛び散りにくいミルを考案する(8)

 先日、3Dプリンターで試作した際、「3D-CADの画面上では、それなりに凹みをつくったつもりですが、実際に見て見ると浅い」と書きました。早速、再設計、作成し直したのですが、試作メーカーに渡すために複数個作っておきました。
 これで挽いてみたらどうなるのか、2~3回なら大丈夫かもしれないと思い、壊れることを前提に挽いてみました。すると、ちゃんと挽けるではありませんか!3Dプリンターによる粉末造形は、思ったよりずっと耐久性があることがわかりました。
 せっかくなので、どんな粉が挽けるのか、粒度を変えて試してみました。

F101の形状を参考に一体型で作成 Ver2
細挽き

 前回のHARIO セラミックスリム・MSS-1を研究する(4)で書いたように、新世代の設計であるHARIO、ポーレックス社製の刃と同じく細かく挽くことができます。私の設計したモデルは、基本設計をF101をベースにしており、オリジナルの刃ではそれほど細かく挽けませんでしたが、細挽きに関してい言えば、アップデートされています。べたっとした感覚はなく、実にふんわりと挽けます。一番最初に挽いたのですが、これなら時間がかかると納得しました(後で間違いだと気が付きましたが)。
細挽き 粒子は非常に細かく、ふわっと挽けます


中挽き

 受皿を開けて挽いた粉を見た瞬間、少々大げさですが感動しました。写真では逆さに開けたので印象が変わりましたが、とにかく粒の揃い方が美しいのです。HARIO MSS-1の改造部品を完全に上回ります。「中挽き」として粒度が適切か否かはともかく、この粗さで挽こうと思った場合の粒度の揃い方としては、非常にそろっています。このミルのベストな粒度なのかもしれません。

中挽き 見た瞬間、粒度の揃い方に思わず感嘆の声が出ました。


中粗挽き

 中挽きに次いで揃っています。中挽きと比較すれば揃い方が粗いように見えますが、これだけを見たら、揃い方に驚くと思います。
中粗挽き 

中挽きほどではありませんが、相当揃っています


粗挽き

ここまで粗いと大きな粒が混ざります。特筆すべきは、細かい粉の割合が非常に低いことです。HARIOセラミックスリムMSS-1(3)の改造部品で試したから言えるのですが、「極端に粗い粒のが出ないようにするために細かい設定にする」のではなく「粗い粒度の粉を挽きたいと思った設定」でこの粉を挽くことができるのです。しかも、他のミルにありがちな、極端に大きく、粗く、意図しない大きな破片が出てくることがありません。

粗挽き 極端に大きく、意図しない粒度の破片は出てきません。

 この刃は当ブログの考える良いコーヒーミルの第六条件である「意図した粒度で挽けること」をかなりのレベルで満たしていると思います。特に中挽きの粒度の揃い方については、特筆すべきものがあります。粗挽きの際も「大きく粗い、意図しない粒度の粉が出てくること」がありません。

 動作は非常に滑らかです。1号機よりもさらに滑らかになり、全くと言って良いほど引っかかりがありません。常に同じ負荷で回すことができるため実に快適です。さらには無抵抗と言って良いほどの軽さで最初から最後まで回すことができます。もう少し重くてもいいかなと思えるほどです。
 しかし、挽くのに気が遠くなるほど時間がかかります。感覚的には5倍以上です。いくら挽き続けても終わらない気がします・・・。
 以前の研究から、豆を引き込む量と動作の軽さは大きく関係することがわかっています。しかし、それにしても時間がかかります・・・。挽く速度を上げるために、引き込む豆の量を多くしたいと思います。しかし、この問題を解決するにはスペースを捻出しなければなりません。すでにギリギリの寸法で作っているので、どこからスペースをねん出するのか、頭の痛い問題です。