2015年4月19日日曜日

カリタ ダイヤカットミルを研究する(2)

 今まで、全て使用感の違いを以下の6点になると思うと書いてきました。ダイヤカットミルではどうなのか、同じ項目について個別に見ていきます。
  1. 挽き心地が軽いか否か
  2. ホッパーに豆が残るか否か
  3. ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか) 
  4. 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か
  5. 分解がしやすいか 
  6. 豆の入れやすさ
  • 挽き心地が軽いか否か
  カリタダイヤカットミルを研究する(1)でも書きましたが、まったく違うレベルで挽きやすいモデルです。ただし、挽く時間はF303よりもさらにかかります。
 重さに関係なく、長時間ハンドルを廻し続けるほど、横廻しの良さがよくわかります。長時間、高頻度で廻す場合、腕の動きが自然な方が疲れないのは明白です。それは過去の業務用のミルがそうであったことからも明らかです。横廻しであることは明らかに「楽な挽き心地」に関係があります。
  • ホッパーに豆が残るか否か
  非常に急こう配です。カリタダイヤカットミルを研究する(1)で、豆が残ることは、まったくないと書きましたが、それは「挽き切れば」の話で、なかなか噛みこまれず残る豆が必ずあります。そうした点ではホッパーではなく、刃の中に豆が残ることは多々あります。

 横型のミルでは原理的にすべての粉を排出できないので、刃の部分にかなりの量の粉が残り続けます。
  • ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか) 
  それほどでもありません。側板が薄いこと、粉が円周状に排出されないので、飛び散ることが少なくなっています。ただ、挽き残した粉が本体にかなりの量で残っているので、それがいつまでも落ち続け、粉が本体の奥に散らばり続けます。
  • 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か

  調節機構は、非常に使いやすいです。ネジ式で簡単に調節できます。ただ、細かく挽くことはできません。
  • 分解がしやすいか 
ダイヤカットミルは組み立てに方向があるので、項目を分けます。

本体の分解方法

ハンドルのネジを取ります

本体右側のネジを取ります
反対側の粗さ調節ネジを外します
回転刃・固定刃などの部品を抜き取り、反対側の「フタ」も外します。分解できるのはここまでです。

 分解すると、本体内部にあまりに大量の粉が残ってることに驚かれると思います。部品はすべて水洗いできますが、錆を防止するため、すぐに水をふき取ります。タワシや歯ブラシなどを使うのが良いと思います。油などを差す必要はありません。



本体の組み立て方法

(写真の組み立て案内は、右利きの人がハンドルを手前から奥に廻す際の組み立て順序です)
部品一覧 組み上がった時の順番に並べてあります

 1.受け皿の取っ手を手前にして、左側の蓋を固定します。
最初に左側の蓋をネジ止めしておきます。この方が組立方法がはっきりします。
2.回転刃をシャフトにはめます。

  回転刃はどちらでも構いません。本来ならば、回転刃の突起部分の垂直面が回転方向に対して来るほうが良いのですが(みるっこの刃は、そのような組み方になっています)、反対側の刃も同じ形状なので、どちらかが必ず逆になってしまいます。ですので、組み合わせはないです。
赤丸の組み合わせが良いが、反対側は必ず青丸になるので、どちらを組み合わせても同じ

 3.固定刃「2」をはめます

鋭く切られていない側が右にある方の刃を先に組み込みます
4.固定刃「1」、反対側の回転刃をはめ、バネを入れます


 5.反対側の「固定部品?」をはめます

最初の回転刃が奥まで入っていないと、上手く組み上がりません
6.本体に組み込む。右利きの人が、手前から奥にハンドルを回す場合、この方向で入れます。


赤丸の鋭くない側が奥。
青丸の部品は外した状態で組み込む(バラバラになるので、写真撮影のためにつけただけ)

赤丸の側に鋭くない部分が入るように入れます
7.右側の蓋を締め、ハンドルをつけて完成です。
ねじを留めます。ハンドルをつけて組み立て完了。

組み上がり完成状態(市販品の写真です)

  • 豆の入れやすさ 
  それほど大きくないように見えますが、真ん中にシャフトがなく、径をフルに使えるため、大変入れやすいです。
  • 結論・評価
  さて、ダイヤカットミルの評価ですが、F303同様、評価に困る機種です。大変使いやすい機種であることは間違いありません。挽いていて嫌になることがなく、もう一杯飲みたくなっても、まったく苦になりません。一番、「使わなくなった」と言われないのはこれです。ご夫婦ともにコーヒー好きで、ご家庭のスペースに余裕があれば、これ以上のものはありません。年配のご家庭でも楽に挽けます。ただ、周囲が汚れるのと、考えられないほど挽き残しの粉が溜まるのもまた事実で、こまめな掃除は必須です。

 横廻しのミルは、明らかに楽に弾けます。当ブログの考える良いミルの第三の条件「挽き心地が軽いこと」を、これほど満たすミルは他にありません。しかし、ダイヤカットミルは考えられないほど、本体に粉が残ります。これは、第一条件「古い豆、粉がミルの中に残らないこと」に明らかに反します。結果、第四の条件「周囲を汚さないこと」も満たしません。しかし、それを凌駕する第七の条件、「満足感の高い」ことも、また事実なのです(2015/4/25 第六から第七に変更)。

 これらの問題をどう解決するのか、横廻しの軽さと、粉が残らないことをどう両立させるのか、そのうえで、持つ喜びを満たすミル形状はどのようなものか。試行錯誤が続きます。

2015年4月11日土曜日

カリタ ダイヤカットミルを研究する(1)

今回はカリタ ダイヤカットミルを研究します。電動ミルやHARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MCSC-2TBを買う前から使っていたのですが、書きそびれてしまいました。しかし、刃の試作や他のミルを買ってからわかったことも多く、半分以上書きなおすほど、情報量が増えました。
カリタ ダイヤカットミル
大変ポピュラーなモデルです。コーヒーミルと言えばこれをイメージする人が多いのではないでしょうか。京都ではイノダコーヒスマート珈琲太秦店など、お店のシンボル的な存在になっていますね。電動ミルができる前、業務用に使われていたミルはこのような形状だったようです。
ELGIN(アメリカ製)のMILL 華やかですね

 このブログを始めた時、ザッセンハウスを改造する際に、横廻しなので調査の候補から外れたと書きました。そして、ザッセンハウス、プジョー、KONO(コーノ式)のモデルをいろいろ研究した結果、軽い挽き心地を決めるのは横廻し方式ではなく、適度に豆を弾くこと、小さな破片が螺旋の中など、内外の刃が届かない場所に入り込まないこと、面で砕くのではなく、点・線で砕くことにあると書きました。HARIOのMSCS-2TBの新旧モデルを検証した結果は、それを裏付けるものでしたが、同時に重い挽き心地の時は、形状によって大きな差が出ること=挽きやすい形状はあるという結果が出ました。

 改めて、そうした目でELGIN・ダイヤカットミルを見ると、挽く側が嫌にならない形状(疲れにくい形状)は、横廻しなのかなと思います。ずいぶん遠回りをしてきました。

長所

非常に軽い挽き心地。
分解が楽。あえて言うならネジまわしが必要な事くらい。

管理人は掃除が苦にならないから、そんなことが書けるのだとお叱りを頂戴するかもしれませんが、プジョーやF303の分解組み立ては苦になるので、やはり楽なのだと思います。

短所

重く、大型。
内部の汚れ方が凄く、考えられないほど、粉がたまる。頻繁な掃除は必須。
挽くのに時間がかかる(これは挽き心地と大きな関係があります)。

 実際に使ってみると、まったく違うレベルで挽きやすいモデルでした。縦廻し式のミルの重い軽いといったレベルではなく、何杯分でも挽くことができるものでした。 挽いていて嫌になることがないです。「挽くだけ」なら、これが一番です。

 このミルの挽き心地は何が要因となっているのでしょう。今まで比較して分かったことは、
  • ミル本体を固定すること
  • ホッパーの勾配を緩く、段差を作るなどして、引き込む豆の量を少なくすること
  • 螺旋を不均等にして、同時にかかる力を少なくすること
  • 外刃の鋭さをなくして、豆を滑らせること
が軽い挽き心地を決定する要因だということでした。

 横型の刃でも、上記の条件は合致するのでしょうか。

 以下、いつも通り、他の項目について、大きさなどを、ひとつひとつ見ていくことにします。

ケースの固定しやすさ(大きさ)

 幅190×奥行180×高さ250 大きさもさることながら、非常に重いです。3.3kgもあります。電動のナイスカットミル2.3kgより重いです。本体が重いことは、本体の固定に有利に働いています。

ハンドルの動作半径 

 大きく見えますが、80mmしかありません。横廻し式のミルが軒並み100㎜をこえながら、動作が重いことを考えると、このミルがいかに軽く動作するかがわかります。

 注目すべきは、シャフトです。今まで最も太かったシャフトは、ザッセンハウスの8mmでした(HARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MCSC-2TB新形は7mm、他のモデルは軒並み6mm)。ところがダイヤカットミルは16mmもあります。材質もザッセンハウスはアルミですが、ダイヤカットミルは鋼鉄製です。しかも、長さも短い上に、両側で保持しています。このことによって、よりトルクが伝わりやすくなっています。シャフトの形状・材質、保持方法は、動作の軽さに大きく関係があります。

刃の形状・鋭さ

回転側 高さ(5mm 真ん中の四角枠を除く)・径(48mm)・三重突起(2mm)
固定側 高さ(15mm程度)・径(30mm程度)・三重突起(2mm)

横型であることに目を奪われますが、向きを変えれば縦型のミルと基本原理が変わらないことがわかります。

固定側の刃を外刃、シャフトを内刃、回転・固定刃の突起部分を細かく砕く部分と考えれば原理は同じ
シャフト・固定刃ともに螺旋はなく、鋭さも全くない

刃の形状を個々に見れば
  • 螺旋はなく、引き込む力を少なくすること
  • 外刃の鋭さをなくして、豆を滑らせること
など、挽き心地を構成する要素は、横型でもまったく同じだということがわかります。

刃の材質・硬度

 不明です。ザッセンハウスとプジョーを比較する(2)でも書きましたが、磁石の付き具合から、「鉄系の材質という「印象」です。硬さについては、どの程度なのかは、よくわかりません。鋳物であることは確かです。

ホッパーの形状

 非常に急こう配です。豆が残ることは、まったくありません。軽い挽き心地の要因である 「ホッパーの勾配を緩く、段差を作るなどして、引き込む豆の量を少なくすること」が、当てはまらないことは事実です。ただ、刃に螺旋がなく、引き込む力がないに等しいので、その分、急な勾配のホッパーが必要になります。
 挽いてみると良くわかるのですが、ダイヤカットミルは実によく豆を弾きます。固定刃の切り込まれた部分に豆が入ってからも、なかなか噛みこまれない豆が必ずあります。あまりに長時間弾かれ続けるので豆に傷がつき、余計な微粉が出るのではないかと気になるほどです。螺旋が全くないのも考えものという気がします。
急な勾配です。首の部分はザッセンハウスのように垂直に近く、豆が残ることはありません。
この形状は非常に使い心地が良いです。
ダイヤカットミルは、その形状から、横廻しであることが、軽い挽き心地を実現するものとして認識されていますが、刃の形状から見れば、
  1. F101の研究で明らかになった、「螺旋は必ずしも必要な形状ではない」こと
  2. 引き込む力を自然落下にとどめ、豆を弾き、一度に噛みこむ量を少なくすること
  3. 刃の鋭さをなくし、豆を滑らせること

という考え方が、さらに推し進められたものと言えるでしょう。
 
 次回は、今までと同じく、直接挽き心地に関係ないと「思われる」要素を書きたいと思います。