2014年7月31日木曜日

ザッセンハウス・プジョー・KONO式(コーノ式)ミル(F101・F205・F303)の比較 まとめ

 今までザッセンハウス、プジョー、KONO式(コーノ式)ミルF205・F303・F101を見てきました。項目を同じようにして、比較しやすいようにしたつもりでしたが、改めて読み返してみると、結論が出ていない回が多く、冗長という印象があります。 また、適切な刃の形状とは何かという結論も出ていませんでした。ここでまとめたいと思います。

軽快な挽き心地を実現するための条件としてわかったこと。

今まで言われてきたこと

プジョーの特徴
  • 二重螺旋臼刃(内刃)
  • 鋭い刃(内刃)
  • 硬質な金属(内刃)
ザッセンハウスの特徴
  • 二重螺旋臼刃(内刃)
  • 鋭い刃、非常に切れ味が良い(内刃)
  • 硬質特殊鋼製(内刃)
***プジョーとザッセンハウスの比較でわかったこと***
  • ミル本体を固定すること
  • ホッパーの勾配を緩く、段差を作るなどして、引き込む豆の量を少なくすること。
  • ホッパーの勾配を緩すると、豆が飛び散り汚れる。
 KONO式(コーノ式)ミル F205の特徴
  • 均等な螺旋形状ではなく、不揃いな「斜面」(内刃)
  • ほとんどエッジが立っていないと言い切れる、なだらかな刃(内刃)
  • ネットでは、切れ味が悪いとされる鋳物製(内刃)
***F205を加えてわかったこと***
  • 内刃は形状さえ「適切」であれば、鋭さ・硬さは関係ない
  • ホッパーを浅くすることで問題となる汚れやすさも、以下の3点で解決
         外刃上部をすぼめること
         内刃の上部を小さくすること
         内刃を外刃に対して下に配置すること

KONO式(コーノ式)ミル F303の特徴
  • 打ち抜いた板を重ねた形状(内刃)
  • ほとんどエッジが立っていない、なだらかな筋(外刃)
***F303を加えてわかったこと***
  • なだらかな螺旋
  • 外刃も豆が引っ掛かれば、鋭さ・硬さは関係ない
  • 外刃も鋭さをなくして、豆を滑らせることで、さらに軽く、汚れも少なくなる

KONO式(コーノ式)ミル F101の特徴
  • 均等な螺旋形状ではなく、不揃いな「斜面」(内刃)
  • 刃の上部は砕くのみ、下部を螺旋構造にして、豆を引き込む「三重」螺旋臼刃(内刃)
  • ストロークの短い細断部(内刃)
  • 螺旋のない破砕部(外刃)
***F101を加えてわかったこと***
  • 内刃の上部は、砕けさえすれば、均等な形状でなくとも良い(内刃)
  • 外刃の上部も砕くのみ、螺旋は不要(外刃)

まとめ

 KONO式(コーノ式)ミルの最大の特徴は、「螺旋が弱い」ことでしょうか。
  • 螺旋が弱いことで、圧着する力が弱くなる。軽い挽き心地を実現する手段の一つ。
  • 螺旋が弱いことで、引き込む速度が遅くなる。軽い挽き心地を実現する手段の一つ。
  • 螺旋が弱いことで、表面積が少なくなり、一度に豆・破片が接する面が少なくなる。結果、軽い挽き心地になる。
螺旋が弱く、小さな破片が螺旋の中に入り込むことがなくなることで、破片が常に外刃の刃に接触するため、挽き心地が軽くなります。ではここから導き出される「適切な形状」とは何でしょうか。

適切な形状とは、適度に豆を弾くこと、小さな破片が螺旋の中など、内外の刃が届かない場所に入り込まないこと、面で砕くのではなく、点・線で砕くことと言ってよいと思います。
左からF205・F101・F303・プジョー・ザッセンハウス

軽い挽き心地を実現する要素は、
  1. ミル本体を固定すること
  2. ホッパーの勾配を緩く、段差を作るなどすること
  3. 内刃・外刃ともに、鋭さは関係ないこと、逆に、適度になだらかなほうが軽くなること
  4. 内刃・外刃ともに、上部は螺旋を弱くし、過度に豆を噛みこまないこと
  5. 豆を砕く部分は、 面で砕くのではなく、点・線で砕くこと
と結論付けて良いでしょう。


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 ここで取り上げたミルの特徴、結論は、ブログを書く前から持っていて、わかっていたことを、出し惜しみをしているのではないか、と思われる方もいらっしゃるのではないかと思いますが、そのような事はありません。

 書くことで「わからないこと」が明確になり、もう一度考えなおすことで、書けるようになってきたというのが本当のところです。

 書き貯めてはいます。 しかし、合理的な説明ができないことが多く、とてもわかっているとは言えないことばかりです。そういう点では、「書き貯めている」のではなく、断片的なメモばかりが、たまり続けているというのが実情でしょうか。公開が少ない頻度なのも、うまくまとまらないからです。

 情けない話ですが、真剣に考えてきたつもりでしたが、全然わかっていませんでした。

 今までずいぶん無駄な事をしてきました。自己紹介欄に、考えて考え抜いた時間は無駄ではないと書きましたが、あきらかに真剣に考えていなかった時間を無駄にしてきました。もっと早く書き始めれば良かったと思っています。

2014年7月21日月曜日

KONO式(コーノ式)ミル F201を研究する(3)

 更新が遅れすみません。仕事が急に忙しくなったので、しばらく遠ざかっておりました。

 今回から、ちゃんとした研究です。

 KONO式(コーノ式)ミルといえば、この機種と言われるほど、圧倒的に有名なモデルです。形状、色が魅力的だからでしょうか。今でも特別に人気がありますね。
F201改:何度調整しても、色彩が明るくなりすぎます

 実際に使ってみると、実に使いやすいモデルです。握った時の大きさ、高さのバランスが良く、想像以上に挽いていて疲れることがありません。

 刃はF205と同じ形状のものが使われています。驚くべきことにF205と、挽いた時の重さがそれほど変わりません。バランスが良く、挽いていて疲れないため、一番使う頻度の高いF205とあまり変わらないのです。さすがに50回転(10グラム中粗挽き程度)位すると、まわした手が疲れますが、それはコーヒーミルとは無関係に疲れると思います。

 このミルの挽き心地は何が要因となっているのでしょう。今まで比較してきたのは主に刃の形状でした。今回は本体の形状を見て行きます。使いやすいコーヒーミルの形状とはどんなものか(1)では、

  • 絶対値として、動作が軽いこと
  • 底面が固定されること
  • 押さえる手に無理な力がかからないこと
  • 本体を押さえながら、ハンドルを廻した時に、押さえた手と干渉しないこと
を満たす形状として
  • 廻した時に左手に当たらない高さに、ハンドルが配置されている
  • 左手で押さえる際、親指と人差し指を開いて握るような形状は押さえやすい
  • 角のない受け皿
  • 分解しやすく、場合によっては洗える本体
を考案しました。そしてF201が上記の条件を満たしているのか、検証するのが今回の目的です。

廻した時に左手に当たらない高さに、ハンドルが配置されている

 F201は、ちゃんと適切な高さにハンドルがあります。いろいろな姿勢で挽いてみましたが、どんな時でも干渉することはありません。

 
左手で押さえる際、親指と人差し指を開いて握るような形状は押さえやすい

 手の大きさにもよるのでしょうが、私は下の青い部分(通常モデルは赤い部分)を包み込むように握ることができます。大き過ぎず、小さ過ぎず、ちょうど良い大きさです。

角のない受け皿


  「角のない受け皿」の条件を満たすだけあり、ふちに残るようなことはありません。容量も十分で粉があふれることもありません。オリジナルはどうかわかりませんが、再塗装した結果、粉の滑りはとても良い状態です。
F201受け皿:ウサギを描いてみました。粉だらけでかわいそうなので、毎回洗おうという気持ちになります


分解しやすく、場合によっては洗える本体

 ハンドルを除くと3箇所のネジを外せばすべて分解ができます。ベアリングを除き、すべて水洗いができます。大変気持ち良いです。


ハンドルの動作半径

 動作半径はF101と同じ110mmです。以前、F101のハンドルをつけた写真を載せましたが、F101の取り付け穴のほうが大きいので、残念ながら取り換えっこはできません。。

刃の形状・鋭さ・材質・硬度

 コーノF205の高さ(20mm)・径(40mm)・螺旋形状(11条不均等)と同じです。材質・硬度は同じく不明です。磁石の付き具合から、「鉄系の材質という「印象」です。硬さについては、どの程度なのかは、わかりません。

 今まで全てミルについて、使用感の違いを以下の6点になると思うと書いてきました。KONO式(コーノ式)ミル F201ではどうなのか、同じ項目について個別に見ていきます。
  1. 挽き心地が軽いか否か
  2. ホッパーに豆が残るか否か
  3. ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか) 
  4. 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か
  5. 分解がしやすいか 
  6. 豆の入れやすさ
  • 挽き心地が軽いか否か
  前述しましたがF205と、挽いた時の重さがそれほど変わりません。いろいろな姿勢で挽いてみたと書きましたが、椅子に座ってテーブルの上で挽いても、キッチンに立ってキッチンテーブルに置いて挽いても、また、この小型軽量のモデルならではだと思うのですが、立って宙に浮かせたまま使っても大丈夫です。というかこれが一番使いやすいです。今まで考えてもみなかったので、私には新鮮な驚きでした。実際に使って割り出した形状という印象を受けます。
 F201・F205とも大変軽い挽き心地なので、この刃の形状については、別に検証する必要があるのかもしれません。今後の課題にしたいと思います。
  • ホッパーに豆が残るか否か
外観からもわかる通り、かなり傾斜があり、豆が残るようなことはありません(今回の改造で、内側に塗装したためかも知れませんが)。また、穴から飛び散ることもありません。なぜか飛び散る量はF205よりも少なく、F303並みに少ないです。
 本体と刃の間に継ぎ目があり、どうしても細かい破片が残ります。この点、ザッセンハウスは面一(つらいち)になっており、そのようなことがありません。改めてザッセンハウスのつくりの良さを再認識しました。

  • ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか) 
  前項、「角のない受け皿」に記載しましたが、ふちに残るようなこともなく、容量も十分です。あたりまえのことですが、本体上部に残った粉をしっかり落とさないと、受け皿を外したとたん、周囲に残った粉がこぼれ落ちます。しかし、F201の場合は、すぐに横にすれば、粉が外にこぼれ落ちることはありません。本体上部のスカート部が大きく深く、すべてそこに落ちるのです。この時そのまま放置せず、毎回掃除をすれば、次回以降も、汚れが飛び散ることは少なくなります。通常のミルでは、ここまで本体を掃除するのは手間がかかるので、掃除のしやすいこの形状は、非常に優れたものといえるでしょう。
スカート内部の汚れ 30g位挽いた後

  • 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か
  調節機構は、F205同様、側面を落とした形状になっています。これにより、ハンドルを楽に取り外すことができます。何度も書きますが、この機構は大変優れモノです。ネジを緩めることな く、粗さの調節ができます。

  • 分解がしやすいか 
前述しましたが、ハンドルを除くと3箇所のネジを外せばすべて分解ができます。部品点数の少なさという点で、このミニマムな形状は、キャビネット型に比べ、基本構造として優れたものがあると思います。

  • 豆の入れやすさ 
  投入口と、飛び散り防止のための蓋を兼ねた構造になっています。形状から想像すると、穴が小さく、豆があふれそうに思えるのですが、ホッパー開口部の大きさが広いので、計量スプーンで入れる際も、豆がこぼれることはありません。ふちの高さが足りないと思うかもしれませんが、そのようなこともありません。また、挽く際には、豆はすべて穴に落としてから挽き始めるので、残った豆がこぼれることもないです。見た目からは想像できないほどに、この形状は使いやすいです。
穴から豆が落ちてしまったので、撮影のために30g位入れていますが、それでもこぼれません

  • 結論・評価
最後に評価です。この機種はKONO式(コーノ式)ミルとして高い評価をすべきかですが、私としては、今の時点で最高の評価を与えたいと思います。何もかもが、実によく考えられています。
  • 無理のない軽い挽き心地
  • 粉を入れやすい受け皿
  • 分解しやすく、場合によっては洗える本体
 のすべてを満たしているばかりか、
  • 汚れが飛び散りにくい本体形状
  • 毎回の掃除が苦にならないメンテナンス容易性
  • 小型にも関わらず、豆を入れやすいホッパー形状
など、理想形状と言って良いです。唯一、本体と外刃の間に粉が残る点だけは、いただけませんが、それにしても、ザッセンハウスを除く、他のどのミルよりも残りません。
 キャビネット型のミルには、なんともいえない雰囲気がありますが、掃除のしやすさという点で、この形状のミルがもっと普及しても良いと思います。


 F201は、間違いなく人気と、価格高騰に値する名機だと思います。