2015年5月31日日曜日

F303の刃とF201のボディを組み合わせる(3)

 改造したF201ですが、上部にもZZ型のベアリングを奢りました。NSKのF698ZZ、もちろん国産です。

NSK F698ZZを追加しました

 ハンドルの感触はさらにスムースになり、軽く押すだけでハンドルが何回転もします。廻した時の滑らかさたるや、なんとも言葉にしがたく、もう何度も廻してしまいます。空廻しがスムースなのはもちろんですが、豆を挽いても実に滑らかなのです。F698ZZをつけて以来、この感触を味わいたいがために豆を挽いて、コーヒーを飲んでいます。

 手前味噌になりますが、当ブログの考える良い手動式ミルの第七条件「満足感の高いこと」を、これほど満たすものはないです。

外観。ほとんど変化はないのですが・・・。

 ミルを作る際には、この感触を皆さまにも味わっていただけるものを作りたいと思います。

2015年5月16日土曜日

HARIO セラミックスリム・MSS-1を研究する(2)

 前回は、形状の違いを写真で見てきました。今回は、形状と使い勝手の関係を明らかにしていきたいと思います。比較のため、他機種と同じ項目で追っていきます。使いやすいコーヒーミルの形状とはどんなものか(1)では、
  • 絶対値として、動作が軽いこと
  • 底面が固定されること
  • 押さえる手に無理な力がかからないこと
  • 本体を押さえながら、ハンドルを廻した時に、押さえた手と干渉しないこと
を満たす形状として
  • 廻した時に左手に当たらない高さに、ハンドルが配置されている
  • 左手で押さえる際、親指と人差し指を開いて握るような形状は押さえやすい
  • 角のない受け皿
  • 分解しやすく、場合によっては洗える本体
を考案しました。セラミックスリム・MSS-1は上記の条件を満たしているのか、検証することにします。
  • 廻した時に左手に当たらない高さに、ハンドルが配置されている
  セラミックスリム・MSS-1は、ちゃんと適切な高さにハンドルがあります。いろいろな姿勢で挽いてみましたが、どんな時でも干渉することはありません。というか、ディアボロ型のミルではこの項目は必要ないかもしれません。
  • 左手で押さえる際、親指と人差し指を開いて握るような形状は押さえやすい
  ホッパーの上部は若干膨らんでおり(逆富士山型)、豆が多く入るようになっていますが、上部を同じ太さの円筒にした方が良かったと思います。それは、膨らんだところを「握ることができる」ためです。力の弱い人に挽いてもらったところ、ハンドルと近いところに左手を移動させました。実際に試してみると、ハンドルと、本体を持つ手の距離が近いほうが挽きやすいことがわかります。ホッパー上部が握れないほど太ければ問題にならないのですが、実際に「握れる太さ」ため、握る部分の太さが問題となったわけです。形状設計の変数の多さ、難しさを感じさせます。
  • 角のない受け皿
  「角のない受け皿」の条件を満たすのはもちろん、プラスチック素材ですので気軽に洗うこともできます。粉もほとんど残らず、大変使い心地が良いです。
 内部は口の大きさが小さいので、若干洗いにくいかもしれません。また、構造的に「外壁」と「粉の受け部分」の間に水が残ります。ふき取るのも簡単というわけにはいきません。デザインのバランス上、あまり低いのも格好悪いので、ある程度高さを確保するため、末広がりにしたためだと思います。プラスチック素材はあまり肉厚にすると凹みますから、ソリッドで成形することもできません。細い形状は好感が持てるのですが、ホッパー上部の逆富士山型といい、細部には再考の余地があります。
「外壁」と「粉の受け部分」の間
挽いた粉には影響ありませんが、水滴はふき取りにくいです
  • 分解しやすく、場合によっては洗える本体
  私の知る限り、工具を使わずに分解できる唯一のミルです。純粋に手だけで、無理な力をかけずにすべて分解ができます。組み立ても、粒度を考慮せず、ただ組み上げるだけなら1分もかかりません。また、セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TB同様、すべての金属部品にステンレスを使用しており、水洗いができます。技術の進歩とはこういうものかと思います。今までに見てきたどのミルよりも、格段に優れた機構設計です。

  • 刃の形状・鋭さ・材質・硬度
  セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TB同様、セラミックで作られており、内刃はザッセンハウス・プジョーに近い形状になっています。今回、比較撮影のためにMSCS-2TBを分解したところ、セラミックの刃が少し摩耗しているのに気が付きました。最初は手で触ると、とがった部分で手が切れそうだったのですが、「あたり」が柔らかくなっています。使用頻度は、毎月500gで、これを9か月程度。これをどう評価してよいのかわかりませんが、金属であれ、セラミックであれ、摩耗については、今後、考えていきたいと思います。


 今まで全てミルについて、使用感の違いを以下の6点になると思うと書いてきました。HARIOのセラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBではどうなのか、同じ項目について個別に見ていきます。
  1. 挽き心地が軽いか否か
  2. ホッパーに豆が残るか否か
  3. ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか)
  4. 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か
  5. 分解がしやすいか
  6. 豆の入れやすさ
  • 挽き心地が軽いか否か 
決して軽くはないです。ハンドルと近いところに左手を移動したくなります。また、(実際には抜けないのでしょうが)ハンドルが抜けそうで怖いので、ハンドルを下に押し付けながら挽きたくなります。セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBのほうが、ブレが少なく安定するので、特別に手の小さい方でない限り、疲れは少ないと思います。
  • ホッパーに豆が残るか否か
  内部は構造的に外刃を固定するための平面段差があり、ここに豆がたまります。しかし、ディアボロ型のミルは本体を斜めにしたりして、すぐに豆を動かすことができるため、それほど問題になりません。また、今までの考察から、段差によって一度に噛みこむ量を減らす効果もあり、一概に段差があることは否定できません。しかし、せっかく内側の表面を平滑にして、滑りを良くしているのですから、砕いた際に飛び散ったカケラすら残らないようにしたいと考えれば、段差はないほうが良いようにも思えます。
    • ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか) 
      HARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBを研究する(2)でも書きましたが、ディアボロ形状のミルでは、本体上部に残った粉をしっかり落とさないと、受け皿を外したとたん、周囲に残った粉がこぼれ落ちます。しかし、セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TB同様、セラミックの刃は静電気を帯びにくいので、ほとんど粉がこぼれません。セラミックスリム・MSS-1はスカート部がないのもかかわらず、粉が外にこぼれ落ちることもなく、ネジ山に粉が入り込んで取れなくなることもありません。電動ミルしか使ったことのない人は、にわかには信じられないのではないでしょうか。細い本体を実現するのにも、セラミック製の刃は大きく貢献しています。

    挽いた直後にも関わらず、微粉の付着はほとんどありません
    • 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か
     調節機構は、内刃の下で行う方式です。今まではすべてシャフトの上で調節してきたので、ここは大きく異なります。ハンドルを装着して、「ミツバ型の部品」を廻すだけです。簡単に思ったところに移動させることができます。機構的に無理がなく、大変よく考えられています。
    • 分解がしやすいか 
     前述しましたが、工具を使わずに分解・組み立てができます。何度も書きますが、大変優れた設計思想です。特筆すべきはハンドルの固定方法です。今まで見てきたミルは、特にハンドルと、一番上の袋ナットは、ネジの締まる回転方向と、ハンドルを回転させる方向が一緒なので、どんどん食い込んでいきましたが、それが原理的に発生しません。
     しかし、ちゃんと固定されていないので廻す際にブレが発生し、ハンドルを下に押し付けながら挽きたくなるのもまた事実です。
     この問題をどう解決するのかが大きな課題です。

     セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TB同様、シャフトのネジ部分は転造方式で作成されています。切りくずが出ず、強度もアップし、大量生産ならコスト的にも有利な製造方式です。6mmのシャフトを元に、ネジ部分をあらかじめ細く5mmで作成しておく、ハンドルの取り付け部分も、一体鍛造加工など、このシャフトはかなりコストがかかっています。ハンドル部分との接触跡を見ると、焼き入れはなされていないようですが、焼き入れは、この製品の価格では、大変多くのコストを占めることになるので、これ以上のコストアップは避けたかったのでしょう。
      
      赤丸部分が、あらかじめ細くしてから転造加工したネジ部分
      青丸部分が、ハンドルを取り付けるための六角加工
    • 豆の入れやすさ
     投入口は細い本体にもかかわらず、ハンドルを取り外しできることもあり、とても使いやすいです。絶対的に容量が小さいので、豆の飛び散り防止フタは必須です。フタの開け閉めは、ハンドルの取り外し、装着が非常に楽なので、まったく苦になりません。
    • 結論・評価
     最後に評価です。セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBと並ぶ、ディアボロ形状の最新機種として、どう評価をすべきかですが、MSCS-2TBと並ぶ、高い評価を下したいと思います。

     どちらを選ぶかは、握って廻した時(ほぼ無理ですが、できれば豆が入った状態)の好みで選ぶので良いのではないでしょうか。確実にハンドルを固定し、挽き心地が安定するMSCS-2TBを選ぶか、よりコンパクトで握りやすく置き場所を選ばないMSS-1を選ぶか。MCSC-2TBの太さが問題にならなければ、そのほうが使いやすいと思います。

     細かく見れば、欠点がないわけではありません。より握りやすく、優れたデザインのミルの形状はどのようなものか。水洗いの後、確実にふき取りやすい形状にできないか。そして、このミルの一番の問題点である「ハンドルを確実に固定し、かつ取り外しが容易で、しかも安いコストでそれを実現する構造」はどんなものか。どれも、簡単には答えが見つからないであろう問題が残ります。

    2015年5月3日日曜日

    HARIO セラミックスリム・MSS-1を研究する(1)

     今回は気軽に手に入るHARIOの現行モデル「HARIOセラミックスリム・MSS-1」を取り上げることにします。KONO式(コーノ式)ミルF201、HARIOの「セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TB」は非常に合理的で使いやすかったので、またディアボロ(≒中国独楽)形状のミルを研究してみます。

      ディアボロ型の例にもれず、このモデルも、構造的に実によく考えられています。部品点数は「セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TB」よりもさらに少なく 12点(分解可能な部品)しかありません。

     今回は、セラミックスケルトン・MSCS-2TBと セラミックスリム・MSS-1形状の違いを写真で見ます。次回以降、形状と使い勝手の関係を明らかにしていく予定です。
    • ホッパーの形状
    非常に細い形状です。実際問題として、手回し式のミルでは一度に大量の豆を挽くわけではないので、持ちやすさを優先した現実的な形状は、とても好感が持てます。両機種とも一度挽いただけで、周囲が汚れたり、掃除をするの必要があるわけではないので、高頻度で挽くことも苦になりません。毎回、挽きたての粉を得るのが苦にならないことは、結果的においしいコーヒーを飲むことにつながることがわかります。


      • ハンドル長
      100mmです。「セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TB」(112mm)より若干短いです。握り玉はほぼ同じ形状です。
      左がセラミックスケルトンMSCS-2TB、右がセラミックスリムMSS-1

      • 刃の形状

      内刃は、「セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TB」にほぼ、相似の刃がついています。内刃はほんの少し、外刃ははっきりわかるほど背が低いです。

      左がMSS-1 シャフトを取り外しできます

      左がMSS-1 高さが低いです。細かくする部分の長さは変わりません。砕く部分の長さが短くなっています

      細かくする部分の形状は、それほど変わりません

      砕く部分の長さ、刃の数が異なります

      次回は、形状と使い勝手の関係を明らかにしていきたいと思います。