前回は、形状の違いを写真で見てきました。今回は、形状と使い勝手の関係を明らかにしていきたいと思います。比較のため、他機種と同じ項目で追っていきます。
使いやすいコーヒーミルの形状とはどんなものか(1)では、
- 絶対値として、動作が軽いこと
- 底面が固定されること
- 押さえる手に無理な力がかからないこと
- 本体を押さえながら、ハンドルを廻した時に、押さえた手と干渉しないこと
を満たす形状として
- 廻した時に左手に当たらない高さに、ハンドルが配置されている
- 左手で押さえる際、親指と人差し指を開いて握るような形状は押さえやすい
- 角のない受け皿
- 分解しやすく、場合によっては洗える本体
を考案しました。Spong80は上記の条件を満たしているのか、検証することにします。
- 廻した時に左手に当たらない高さに、ハンドルが配置されている
Spong80も、ちゃんと適切な高さにハンドルがあります。ディアボロ型のミルでは、この項目は必要ないので、記述はこれだけにします。
- 左手で押さえる際、親指と人差し指を開いて握るような形状は押さえやすい
大変押さえやすい(握りやすい)形状です。今まで、F201・セラミックスケルトン・セラミックスリムを使ってみて、F201が最もしっくりきましたが、その上を行きます。押さえたとき、手の気持ちの良いところだけに触れます。太さといい、高さといい、大変心地良い形状です。ただ、全体が鋳物なので、非常に重たく、手に持って挽きたいとは思わないです。
「角のない受け皿」ですが、金属製のため、静電気で粉が残ります。
後述しますが、設計が古いため分解は若干手間がかかります。受け皿には、本体と組み合わせるため、ゴムがついているのと、底にフェルトが張られているので、気軽に洗うわけにはいかないようです。
大変、大きな内刃です。今まで見たどの刃とも形状が似ていません。鋭さがまったくない形状です。作られてから長い年月を経たせいで、鋭さがなくなったというものではなさそうです。
|
大変大きな内刃です |
今まで全てミルについて、使用感の違いを以下の6点になると思うと書いてきました。Sopng80ではどうなのか、同じ項目について個別に見ていきます。
- 挽き心地が軽いか否か
- ホッパーに豆が残るか否か
- ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか)
- 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か
- 分解がしやすいか
- 豆の入れやすさ
決して軽くはないです。本体とシャフト触れる部分の精度が悪いので、特に粒度が粗いときに安定して挽けません。ボールベアリングが下のシャフトの接点に使われていますが、粒度の調節機構との摩擦を軽減させているだけで、シャフトのブレを防ぐ機能はまったく持っていません。せっかく外刃がブレる要素がないのに、大変残念です。
|
ベアリングとベアリングが収まる穴 |
豆の挽き込み口が、ホッパー下部の一部しかなく、外刃の上ではなく、横に来るような高さに開いているので、豆が残ります。本体を傾けるなどして、豆を穴の中に入れてやる必要があります。
- ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか)
静電気で粉が残るため、本体内側についた粉がこぼれ落ちます。
HARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBを研究する(2)で、ディアボロ形状のミルでは、本体上部に残った粉をしっかり落とさないと、受け皿を外したとたん、周囲に残った粉がこぼれ落ちると書きましたが、Spong80は、ボロボロこぼれ落ちます。周囲が汚れるので、受け皿を取り外す際には気を使います。セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TB、セラミックスリム・MSS-1は、静電気を帯びにくい材質だったので問題ありませんでしたので、材質の影響が、かなりあることがわかります。
調節機構は、内刃の下で行う方式です。2つのネジを両端から進め、両者が接し動かなくなる点で固定させる方式です。思ったところにネジを固定するのには慣れが必要です。セラミックスリムが、非常に使いやすい設計でしたので、余計に使いにくいと感じるのかもしれません。
|
調整にはちょっとしたコツがいります |
- 分解がしやすいか
粒度の調節機構にマイナスドライバー、ハンドルの取り外し「コイン」が必要ですが、それだけで分解ができます。ハンドルには大きく力がかかるので、固くなりますが、コインなど大きな工具を使えるので、それほど大きな問題にはならないと思います。ベアリングだけは、小さな部品なのと、転がりやすい部品なので、なくさないよう注意が必要です。
組み立ての際、粒度の調節機構の調整がしにくいので、分解掃除のたびに調節するのは、少々面倒ですが、箱型のミルに比べれば大したことはありません。ディアボロ型ミルの使いやすさに、相当慣れてしまったようです。
投入口は広く、とても使いやすいです。ハンドルが非常に太いので、使いにくいかなと思いましたが、そのようなことはないです。
最後に評価です。
大変持ちやすい握りやすい形状です。今まで使ってきたミルの中で最もしっくりきます。高さ、太さなど、作るなら外形は、この形状を元に考えます。重さだけは、非常に重たいため、女性の方は億劫になるかもしれません。また、設計が古いため、豆の粒度を調節する機構は使いにくいです。セラミックスリムの使いやすさを知った後では、この機構には良さを感じられません。
しかし、このミルには所有する満足感があります。蒸気機関車のようなどっしりとした存在感は、なんともいえないものです(英国製なのに、華麗な英国の蒸気機関車とは、だいぶ雰囲気が違いますが。どちらかといえば、日本の蒸気機関車に似ていますね)。薄っぺらさとは無縁の重厚な存在感、いかにも濃そうなコーヒーを淹れられるような雰囲気は、捨てがたいものがあります。このミルも当ブログの考える良い手動式ミルの第七条件「満足感の高いこと」を、大きく兼ね備えています。
コーヒーを淹れるという行為が、きわめて趣味性が高いことを、ここでも再認識させられます。