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2018年11月25日日曜日

既存のミルの欠点を取り除いた軽快な挽き心地、粉が飛び散りにくいミルを考案する(7)

オリジナル設計のボディでの、試作品第2号の本体ができました。

右が第2号機 若干くびれを細くしています。これでだいぶ持ちやすくなりました

外観はあまり変わりません。第1号では3D-CADの画面上ではわからない本体の質感、まわした時の感触、豆の飛び散り具合などを検証するために、既存のF101の刃を組み込んで作成してみたのですが、やはり変更したい箇所がいっぱいありました。特に握った時の感触があまり良くなかったので、くびれを少し細くしました。
 実物がなかなかできなかったのは、受皿のガラスと本体をはめるための、バヨネット構造の樹脂部品が高額だったためです。
 
 樹脂部品については、3Dプリンターでの作成が良いのではないかとのアドバイスをいただいていたのですが、過去に見た3Dプリンターによる生成物は、かなり積層面が荒いものでした。以来、3Dプリンターの品質をまったく信用していなかったこと、私のCADではSTLによる出力ができないことから検討もしていなかったのですが、私の勉強不足でした。igesデータで作ってくれるメーカーが見つかったこと、安価でかなりの精度で作成される方法があったので、作ってみました。結果は素晴らしい精度でした。品質、強度については、これからいろいろな方に使ってみていただき、検証していきたいと思います。
3Dプリンター ナイロン粉末造形(PA粉末造形・粉体造形・SLS)による作成 精度はいいです

 
せっかくなので、以前設計した内刃と外刃も実物を作ってみました。3D-CADの画面上では、それなりに凹みをつくったつもりですが、実際に見て見ると浅いので、現在再設計、作成し直しています。実物での確認は重要ですね。
F101の形状を参考に一体型で作成 第1号


 れがーと様からコメントをいただきましたが、シャフトと内刃をどうやって組み立てるかが課題です。このミルを作るにあたっては、可能な限りメンテナンスを楽にしたいという目標がありました。そのためには部品点数を少なくし、道具を使わなくとも、分解組み立てを可能にする必要があります。これについては、HARIOのMSS-1の構造が真っ先に浮かびました。しかし、これはブレが大きくなるという問題がありました。コーヒーミル本来の目的である「挽いた粉を均質にすること」を実現するためには、内刃と外刃のブレを極力小さくする必要があります。内刃のブレをなくすためには、シャフトと内刃を固定することが一番確実です。多くのミルはこの構造を採用しています。ではどうしたらよいのか。実際のモデルから考えて見たいと思います。

 1.シャフトから内刃を簡単に取り外すことのできる構造です。HARIO MSS-1の構造では、下から内刃を取り外すことができます。しかも道具を使わずに分解組み立てが可能です。しかし、取り外しを容易にするために、シャフトと内刃の間に隙間を設ける必要があり、ガタが発生しています。これではコーヒーミル本来の目的である「挽いた粉を均質にすること」を満たしません。


取り外しを容易にするには、シャフトと内刃の間に隙間が必要です

 2.シャフトと内刃を固定する方法です。内刃とシャフトが一体化しているため粒度が均質になります。SPONGが完全一体でこの方法が最も確実ですが、この方式では分解の際、内刃を下から取り外すため、ハンドルとシャフトが分離することが前提となります。私の考えているモデルでは、ハンドル部分を一体化しているので、固定すると上からシャフトを抜くことができず、分解ができなくなってしまいます。内刃だけをシャフトから取り外せるようにすればよいのですが、これが難題です。一番確実でコストがかからないのは、ネジを使って固定する方法ですが、道具を使う必要があります。

写真左  SPONG:完全一体
写真中央 KONO F303:組立式だが、分解を前提としていない
写真左  HARIO セラミックスリム:ネジで固定、分解を前提としていない
シャフトと内刃を固定する方式


 

 1の方法はどうやらダメそうなので、シャフトと内刃を固定する方法で、道具を使わずに分解できる部品を考えてみました。着脱を容易にするため、内刃との固定はヘクサロビュラ形状(カムアウトが発生しません)を採用、ノブの形状は人間の手になじむ理想的なかたちとされるセブンロブノブを採用しました。実際に使ってみないと、使い勝手がわからないのですが、現在の私に知るうる限りの最良のものを組み合わせて作成してみました。左ネジで作ってみたのですが、内刃と一体で動くためネジ部分には荷がかからないので、通常のネジで作り直したいと思います。

ヘキサロビュラ形状で固定するネジ(左) オリジナルで設計しました

内刃とネジを組み合わせたところ 3Dプリンタの精度は非常に高く、ピッタリ合います
あとは、内刃と外刃の実物を作成するだけです。問題は費用です。お金さえあれば、今すぐ実物を作ることができます。刃などは2016年に基本設計は終わっています。今回、設計変更がありましたが、それも試作品を1個つくればわかることです。
 初期投資を抑えて作成する方法について、この2年間ずっと探し続けてきました。かなり有力な方法も見つかり、解決したかに思えたこともあります。しかし、残念ながらこの形状を作ることができませんでした。
 費用をどうやって工面するかが解決すれば、製品化が可能なところまで、あと一歩です。

2015年10月31日土曜日

既存のミルの欠点を取り除いた軽快な挽き心地、粉が飛び散りにくいミルを考案する(1)

 既存のミルの欠点を取り除いたコーヒーミルの形状が見えてきました。

 ここまで考えてきたのですから、既存のミルの欠点を取り除いた軽快な挽き心地、粉が飛び散りにくいミルを、実際に作りたいと思います。

 SPONGのデザインを基調に、材質を軽く、メンテナンスの容易なものに変更することにします。

 SPONGと同じく80mmと、日本人向けに、ひとまわり小さくした75㎜でモックアップをつくってみました。

右からSPONG80 SPONG80のモックアップ 75㎜サイズ 


 手が小さい人はグリップなど小さめを選ぶ傾向があるようですが、実際にはある程度大きいもののほうが握りやすいこともあり、感触を確かめることにしました。

 何人かの人に握ったり、底面を設置した状態で持ってもらってみたところ、ほとんどの人が75㎜のほうが持ちやすいといいました。

 75mmで作ることにします。

2015年10月25日日曜日

既存のミルの欠点を取り除いたコーヒーミルの形状

  軽快な挽き心地、粉が飛び散りにくいミルはどのような形になるのか。欠点を取り除いたコーヒーミルの形状はどのようなものになるのか(欠点を取り除いたものが、必ずしも理想の形状になるとは思いません)、ここでいったん、これまで考えてきた結論を出したいと思います。

 結論から言うと、ディアボロ型の形状が、原理的に優れています。

 廻す時に手が疲れるのは、豆を挽く際に引っかかった時、本体が引っ張られないように同じ場所に固定しようとするため、手首が無理な姿勢になるためだと判明しました。満員電車に乗った時、カーブやブレーキがかかった際、姿勢が崩れそうになりますが、その時、倒れないように踏ん張ると、無理な姿勢になると思います。あれと同じです。あの時、身体には無理な力が入っています。吊革につかまって、姿勢を崩してやり過ごすと、それほど疲れないはずです。コーヒーミルも同じで、引っかかった時、無理に床面に固定し続けようとしなければ、手首に大きな負担はかかりません。

 本体の大きさが大きなミルは、本体を支える面積が大きいため、あるいは押さえやすい形状のため、疲れないのでした。

 対して、箱型で縦廻し式のミルは、ディアボロ型に対して有利な点がありません。

 横廻し式のミルは、粉が残りすぎます。それに、ディアボロ型のミルで蓋をすれば、横廻しに近い姿勢でひくこともできるのです。

 ディアボロ型のミルは床面に固定しなくて済むため、無理な力がかかった際、やり過ごすことができるので疲れが少なくなります。ディアボロ型のミルは、置いて使うのではなく、持って使う方が楽です。持って使える形状は、疲れに対して原理的に優れています。

 欠点を取り除いたコーヒーミルの形状は構造的にMSS-1、材質的にMSCS-2TB、造形的にSPONG 80、刃の形状はF101・F303が最も近いです。

 中でもMSS-1には気づかされる点が多々ありました。MSS-1を使って感じたのは、粗引きの際でも粉度が安定することです。理由は、私の使い方にありました。今まで使ってきたミルは、ネジが固く締まりすぎるのを恐れて、ハンドルを固定する袋ナットを、きつく締めないようにしていました。その結果、ネジがゆるみ、粗い粉が出ていたのです。MSS-1はハンドルを固定する袋ナットがなく、こうしたことが起きません。つまり、ハンドルを固定するのに、同一方向に回転するナットを使わなければ、こうしたことは原理的に起こらないわけです。設計者の意図しない使われ方で、精度が落ちている例です。
 また、ホッパーの形状について、ホッパー上部が握れないほど太ければ問題にならないのですが、MSS-1では実際に「握ることのできる太さ」ため、握る手をハンドルに近い側に移動させると、かえって握りにくくなったことがありました。

 こういった想定外の使われ方を防ぐのも、良い設計です。


もっとも愛着のある3つのミル 右からSpong80、MSS-1、F201改

F201の袋ナットをHARIOセラミックスケルトン MSCS-2TBの部品に交換、ゆるみを減らして使っています


 既存のミルの欠点を取り除いたコーヒーミルの形状は、以下に集約されると考えました。
  • 手に持てるディアボロ型
  • 軽いこと
  • 握りやすい形状であること
  • 材質が良いこと
  • 想定外の使われ方をしないような形状にすること
遠回りしましたが、結論を出すことができました。

2015年10月17日土曜日

Spong 80を研究する(2)

 前回は、形状の違いを写真で見てきました。今回は、形状と使い勝手の関係を明らかにしていきたいと思います。比較のため、他機種と同じ項目で追っていきます。使いやすいコーヒーミルの形状とはどんなものか(1)では、
  • 絶対値として、動作が軽いこと
  • 底面が固定されること
  • 押さえる手に無理な力がかからないこと
  • 本体を押さえながら、ハンドルを廻した時に、押さえた手と干渉しないこと
を満たす形状として
  • 廻した時に左手に当たらない高さに、ハンドルが配置されている
  • 左手で押さえる際、親指と人差し指を開いて握るような形状は押さえやすい
  • 角のない受け皿
  • 分解しやすく、場合によっては洗える本体
を考案しました。Spong80は上記の条件を満たしているのか、検証することにします。
  • 廻した時に左手に当たらない高さに、ハンドルが配置されている
  Spong80も、ちゃんと適切な高さにハンドルがあります。ディアボロ型のミルでは、この項目は必要ないので、記述はこれだけにします。
  • 左手で押さえる際、親指と人差し指を開いて握るような形状は押さえやすい
  大変押さえやすい(握りやすい)形状です。今まで、F201・セラミックスケルトン・セラミックスリムを使ってみて、F201が最もしっくりきましたが、その上を行きます。押さえたとき、手の気持ちの良いところだけに触れます。太さといい、高さといい、大変心地良い形状です。ただ、全体が鋳物なので、非常に重たく、手に持って挽きたいとは思わないです。
  • 角のない受け皿
  「角のない受け皿」ですが、金属製のため、静電気で粉が残ります。
  • 分解しやすく、場合によっては洗える本体
  後述しますが、設計が古いため分解は若干手間がかかります。受け皿には、本体と組み合わせるため、ゴムがついているのと、底にフェルトが張られているので、気軽に洗うわけにはいかないようです。

  • 刃の形状・鋭さ・材質・硬度
  大変、大きな内刃です。今まで見たどの刃とも形状が似ていません。鋭さがまったくない形状です。作られてから長い年月を経たせいで、鋭さがなくなったというものではなさそうです。

大変大きな内刃です

 今まで全てミルについて、使用感の違いを以下の6点になると思うと書いてきました。Sopng80ではどうなのか、同じ項目について個別に見ていきます。
  1. 挽き心地が軽いか否か
  2. ホッパーに豆が残るか否か
  3. ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか)
  4. 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か
  5. 分解がしやすいか
  6. 豆の入れやすさ
  • 挽き心地が軽いか否か 
   決して軽くはないです。本体とシャフト触れる部分の精度が悪いので、特に粒度が粗いときに安定して挽けません。ボールベアリングが下のシャフトの接点に使われていますが、粒度の調節機構との摩擦を軽減させているだけで、シャフトのブレを防ぐ機能はまったく持っていません。せっかく外刃がブレる要素がないのに、大変残念です。
ベアリングとベアリングが収まる穴

  • ホッパーに豆が残るか否か
豆の挽き込み口が、ホッパー下部の一部しかなく、外刃の上ではなく、横に来るような高さに開いているので、豆が残ります。本体を傾けるなどして、豆を穴の中に入れてやる必要があります。
    • ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか) 
      静電気で粉が残るため、本体内側についた粉がこぼれ落ちます。HARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBを研究する(2)で、ディアボロ形状のミルでは、本体上部に残った粉をしっかり落とさないと、受け皿を外したとたん、周囲に残った粉がこぼれ落ちると書きましたが、Spong80は、ボロボロこぼれ落ちます。周囲が汚れるので、受け皿を取り外す際には気を使います。セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TB、セラミックスリム・MSS-1は、静電気を帯びにくい材質だったので問題ありませんでしたので、材質の影響が、かなりあることがわかります。

    • 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か
     調節機構は、内刃の下で行う方式です。2つのネジを両端から進め、両者が接し動かなくなる点で固定させる方式です。思ったところにネジを固定するのには慣れが必要です。セラミックスリムが、非常に使いやすい設計でしたので、余計に使いにくいと感じるのかもしれません。
      調整にはちょっとしたコツがいります
    • 分解がしやすいか 
     粒度の調節機構にマイナスドライバー、ハンドルの取り外し「コイン」が必要ですが、それだけで分解ができます。ハンドルには大きく力がかかるので、固くなりますが、コインなど大きな工具を使えるので、それほど大きな問題にはならないと思います。ベアリングだけは、小さな部品なのと、転がりやすい部品なので、なくさないよう注意が必要です。
     組み立ての際、粒度の調節機構の調整がしにくいので、分解掃除のたびに調節するのは、少々面倒ですが、箱型のミルに比べれば大したことはありません。ディアボロ型ミルの使いやすさに、相当慣れてしまったようです。
    • 豆の入れやすさ
     投入口は広く、とても使いやすいです。ハンドルが非常に太いので、使いにくいかなと思いましたが、そのようなことはないです。
    • 結論・評価
     最後に評価です。
     大変持ちやすい握りやすい形状です。今まで使ってきたミルの中で最もしっくりきます。高さ、太さなど、作るなら外形は、この形状を元に考えます。重さだけは、非常に重たいため、女性の方は億劫になるかもしれません。また、設計が古いため、豆の粒度を調節する機構は使いにくいです。セラミックスリムの使いやすさを知った後では、この機構には良さを感じられません。

     しかし、このミルには所有する満足感があります。蒸気機関車のようなどっしりとした存在感は、なんともいえないものです(英国製なのに、華麗な英国の蒸気機関車とは、だいぶ雰囲気が違いますが。どちらかといえば、日本の蒸気機関車に似ていますね)。薄っぺらさとは無縁の重厚な存在感、いかにも濃そうなコーヒーを淹れられるような雰囲気は、捨てがたいものがあります。このミルも当ブログの考える良い手動式ミルの第七条件「満足感の高いこと」を、大きく兼ね備えています。

     コーヒーを淹れるという行為が、きわめて趣味性が高いことを、ここでも再認識させられます。

    2015年10月10日土曜日

    Spong 80 を研究する(1)

     今回はSpong 80を研究します。KONO式(コーノ式)ミルF201、HARIOの「セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TB」は非常に合理的で使いやすかったので、またディアボロ(≒中国独楽)形状のミルを研究してみます。

      ディアボロ型の例にもれず、このモデルも、構造的に実によく考えられています。本体が外刃を兼ねるなど、部品点数は非常に少なく、11点(分解可能な部品)しかありません。セラミックスリムと並ぶ、ミニマムな構造です。

    Spong本体 重厚感あふれる質感とシンプルな形状
    • ホッパーの形状
      直線を基調とした、シンプルなデザインです。内部は底の部分が斜めになっており、スムースに引き込もうとする意図が見受けられます。挽き込み口は、ホッパー下部の一部しかなく、外刃の上ではなく、横に来るような高さに開いています。

    本体の一部が引き込み口になっています

    • ハンドル長
    95mmです。握り玉は木製です。

    • 金属部品群
    多くの部品が鋳鉄で作られており、大変重いです。ハンドルを留めるネジはアルミ、ベアリングは、おそらく鋼鉄製です。アルミもアルマイト処理をしたとは思えません。ですので、保存状態が悪いと、すべての部品が錆びます。私が手に入れた個体も錆びだらけでした。ベアリングは、磨いた後も錆が残っています。コストのため(切削加工はとんでもない値段になります)に鋳物で作ったのだと思いますが、材料の選定には、必ずしも同意できかねます。



    わずか11点しかない部品群

    • 刃の形状
    外刃はなんと、本体が兼ねています。外刃に原理的にブレが発生しないという点では、この構造が最も優れているでしょう。内刃は、F303以上の大きさの刃がついています。「上部で砕こう」と考えた形状ではなく、細断する部分まで、ほぼ同じ形状になっています。

    外刃は本体が兼ねる。砕く部分はなく、全体的に均一な形状

    左からSpong80 F303 HARIO 
    Spongは内刃上部に「砕く」個所がある

    左からSpong80 F303 HARIO 下から見ると良くわかります



    次回は、形状と使い勝手の関係を明らかにしていきたいと思います。