右が第2号機 若干くびれを細くしています。これでだいぶ持ちやすくなりました |
外観はあまり変わりません。第1号では3D-CADの画面上ではわからない本体の質感、まわした時の感触、豆の飛び散り具合などを検証するために、既存のF101の刃を組み込んで作成してみたのですが、やはり変更したい箇所がいっぱいありました。特に握った時の感触があまり良くなかったので、くびれを少し細くしました。
実物がなかなかできなかったのは、受皿のガラスと本体をはめるための、バヨネット構造の樹脂部品が高額だったためです。
樹脂部品については、3Dプリンターでの作成が良いのではないかとのアドバイスをいただいていたのですが、過去に見た3Dプリンターによる生成物は、かなり積層面が荒いものでした。以来、3Dプリンターの品質をまったく信用していなかったこと、私のCADではSTLによる出力ができないことから検討もしていなかったのですが、私の勉強不足でした。igesデータで作ってくれるメーカーが見つかったこと、安価でかなりの精度で作成される方法があったので、作ってみました。結果は素晴らしい精度でした。品質、強度については、これからいろいろな方に使ってみていただき、検証していきたいと思います。
3Dプリンター ナイロン粉末造形(PA粉末造形・粉体造形・SLS)による作成 精度はいいです |
せっかくなので、以前設計した内刃と外刃も実物を作ってみました。3D-CADの画面上では、それなりに凹みをつくったつもりですが、実際に見て見ると浅いので、現在再設計、作成し直しています。実物での確認は重要ですね。
F101の形状を参考に一体型で作成 第1号 |
れがーと様からコメントをいただきましたが、シャフトと内刃をどうやって組み立てるかが課題です。このミルを作るにあたっては、可能な限りメンテナンスを楽にしたいという目標がありました。そのためには部品点数を少なくし、道具を使わなくとも、分解組み立てを可能にする必要があります。これについては、HARIOのMSS-1の構造が真っ先に浮かびました。しかし、これはブレが大きくなるという問題がありました。コーヒーミル本来の目的である「挽いた粉を均質にすること」を実現するためには、内刃と外刃のブレを極力小さくする必要があります。内刃のブレをなくすためには、シャフトと内刃を固定することが一番確実です。多くのミルはこの構造を採用しています。ではどうしたらよいのか。実際のモデルから考えて見たいと思います。
1.シャフトから内刃を簡単に取り外すことのできる構造です。HARIO MSS-1の構造では、下から内刃を取り外すことができます。しかも道具を使わずに分解組み立てが可能です。しかし、取り外しを容易にするために、シャフトと内刃の間に隙間を設ける必要があり、ガタが発生しています。これではコーヒーミル本来の目的である「挽いた粉を均質にすること」を満たしません。
取り外しを容易にするには、シャフトと内刃の間に隙間が必要です
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2.シャフトと内刃を固定する方法です。内刃とシャフトが一体化しているため粒度が均質になります。SPONGが完全一体でこの方法が最も確実ですが、この方式では分解の際、内刃を下から取り外すため、ハンドルとシャフトが分離することが前提となります。私の考えているモデルでは、ハンドル部分を一体化しているので、固定すると上からシャフトを抜くことができず、分解ができなくなってしまいます。内刃だけをシャフトから取り外せるようにすればよいのですが、これが難題です。一番確実でコストがかからないのは、ネジを使って固定する方法ですが、道具を使う必要があります。
写真左 SPONG:完全一体
写真中央 KONO F303:組立式だが、分解を前提としていない
写真左 HARIO セラミックスリム:ネジで固定、分解を前提としていない
シャフトと内刃を固定する方式 |
1の方法はどうやらダメそうなので、シャフトと内刃を固定する方法で、道具を使わずに分解できる部品を考えてみました。着脱を容易にするため、内刃との固定はヘクサロビュラ形状(カムアウトが発生しません)を採用、ノブの形状は人間の手になじむ理想的なかたちとされるセブンロブノブを採用しました。実際に使ってみないと、使い勝手がわからないのですが、現在の私に知るうる限りの最良のものを組み合わせて作成してみました。左ネジで作ってみたのですが、内刃と一体で動くためネジ部分には荷がかからないので、通常のネジで作り直したいと思います。
ヘキサロビュラ形状で固定するネジ(左) オリジナルで設計しました |
内刃とネジを組み合わせたところ 3Dプリンタの精度は非常に高く、ピッタリ合います |
初期投資を抑えて作成する方法について、この2年間ずっと探し続けてきました。かなり有力な方法も見つかり、解決したかに思えたこともあります。しかし、残念ながらこの形状を作ることができませんでした。
費用をどうやって工面するかが解決すれば、製品化が可能なところまで、あと一歩です。