2015年1月25日日曜日

F303の刃とF201のボディを組み合わせる(1)

ナイスカットミル用の替刃の試作には少々時間がかかりそうなので、今回は、(試作の割には)比較的安価で面白そうな試みをしたいと思います。

F303の研究では、刃の評判が良いが、本体の構造に問題があると書きました。
  • 本体のいたるところに豆や粉が溜まる
  • 豆や粉が溜まるにも関わらず、本体の分解掃除が面倒
  • 刃に至っては、そもそも分解掃除ができない(分解できるよう改造すれば可)
F201の研究では、本体に魅力が多いと書きました。
  • 挽きやすく疲れない形状
  • コンパクトな本体
  • 分解せずとも楽に掃除ができる構造
  • 所有欲を満たす魅力的なデザイン
 今回は、F303の刃をF201の本体に組み込むことができないかという試みです。F201は色も青に塗り替えてしまいましたし、どうせ改造するなら、思い切っていろいろやってしまえ!という、ある意味、皆さんの心の叫びを実現してしまう企画です。
 
 KONO式ミルのファンなら、誰もが一度は考えたであろう、F303の刃とF201の本体という「KONO式ミルの理想形」を作ってみることにします。
 まず、組み込むことが可能かを確かめます。改造の可否の判断は、既存の部品に手を加えずに組み込めるかにしました。これは、いつで元に戻せるようにするためです。すでに生産が完了したF303・F201は貴重なものであり、不可逆的な改造は望ましくないと考えたからです。
  • 外刃の大きさは問題ありません
  • シャフトの径は同じです。
  • シャフトの長さもそれほど違いません。
どうやら、大丈夫そうです。

図面を描いて、PPで作成しました。スタビライザー側の部品も極力細くし、粉がたまらないようにします。
F201にF303の刃を組み込むアダプター



 ブッシュではなく、ベアリングを組み込んでいます。ベアリングは、もちろん国産です。オリジナルのF303よりも、はるかにスムースに動きます。F303(共通刃:F301・F303・F305・F307・F702・F703)をお持ちの方は、おわかりになると思いますが、それ以上に、軽くハンドルが回転します。

 この感触は、なんともいえずなめらかで、うれしくなって、何度もまわしています。

2014年12月31日水曜日

HARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBを研究する(3)

 ナイスカットミル・みるっこを、設計のため工場に預けており、この3か月ほど、手動式のコーヒーミルを使うことが多くなってきました。

 いろいろ使うようにしているのですが、一番頻度が高いのはHARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBです。なんといっても、メンテナンスが楽です。本体はほとんど汚れませんし、周囲はまったくと言って良いほど汚れません。分解掃除も楽、保管場所も取りません。木製のキャビネット型のミルは、ほとんど使わなくなりました。

 いったん評価が定まったかのように思えたHARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBについて、書き足したいと思います。


 まず、挽く際の評価について、訂正しなければなりません。前回「ホッパーとガラスの受け皿をねじ止めしている部分の径が大きいので、とても疲れます」と書きましたが、台や机の上に置かず、手に持って挽けば、それほど苦にならないことも明らかになってきました。1人分(10g)程度なら、豆が飛び散ることもありませんし、蓋をすれば飛び散る心配自体なくなります。KONO F303ほどの軽さではないにせよ、1人分挽いたら、もう嫌だという気持ちにはならない重さです。電動式のミルを使うようになってから、しばらく手動式のミルから遠ざかっていましたが、これなら毎日、毎回その都度挽こうという気になり、実際、その通りになっています。


 また、冬場になり、静電気が気になる季節になってきました。コーヒーミルを愛用する方にとっては、微粉の処理が気になる季節でもあります。HARIO セラミックコーヒーミル・スケルトンMSCS-2TBは刃にセラミックを使用するだけあり、微粉のつく量が少ないです。これは、明らかに使い勝手が電動ミルを大幅に上回っています。 ナイスカットミル・みるっこをお使いの方はわかると思いますが、静電気による粉の出る口の周辺に付着する微粉の多さと、掃除の大変さは、毎回、大変なものです。その点、HARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBは、周囲が全く汚れないので、掃除が不要です。もしかしたら、電動ミルが戻ってきても、使わなくなるかもしれません。


冬場に挽いた直後の状態。こぼれた量も、たったこれだけです

 自然に手が伸びるミルというのが、使いやすいミルだと思いますが、HARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBは、間違いなく、もっとも使いやすいミルです。前回の投稿も一部を訂正したいと思います。
 

2014年12月28日日曜日

コーヒーミルを作ることにしました(7)

先日、工場に出向き、新しく設計した替刃の試作をしてきました。
  •  豆を挽き込むスペースを設けること
前回の反省を踏まえ、かなりのスペースを割いたつもりでしたが、それでもまだスペースが足りないようです。また、豆をひきこむ形状が、加工上、困難なものとなっていました。目の前で、汎用フライス盤にセットするのですが、どう部品を置いたら良いのか非常に迷いました。自動機器なら問題にならないのでしょうが、工数を減らすことも目的としているので、無駄に複雑な形状は見直す必要があります。

豆を引き込むスペースをなくした状態にまで設計を戻しました
 年内には完成させるつもりでしたが、まだまだのようです。


 旋盤やフライス盤で作業するのを見ると、実際に形にするには、実に多くの制約があることに気づかされます。CADのレンダリングではなんともないように見えるものでも、 加工するには、多くの手順が必要だったりすることがあります。日本の工場の職人たちは、それをなんとか工夫して、最小の手順で実物にしてきました。その過程には大きな智慧を感じます。人それぞれに異なるアプローチから考えた手順があり、傍目には同じに見えるものでも、その過程は、決して同じではありません。どれが正解というわけではなく、使っている機械のクセによっても手順は変わります(精度が出ている機械なら、ゆるくはめて、何度も少しずつ削るのが良いでしょうし、馬力のある機械なら、がっちり噛みこんで、一度に削る方が早く、生産性も上がるかもしれません)。

 工夫の跡を知った時は、静かな感動があります。先人の知恵を知り、敬意を払うことができることに幸せを感じます。

 工場に通い、熟練職人の機械の操作を見るようになってから、わずかですが、頭の中だけで設計したものと、機械の制約のなかで設計したものの区別がつくようになってきました。

 純粋に好みの問題ですが、私は機械の制約の中で設計したものの方に魅力を感じます。

2014年12月13日土曜日

コーヒーの味の評価と良い手動式ミルの条件について 当ブログのスタンス(2015/4/25 条件を追加)

 味の評価について、今まで何も書きませんでした。ここで、改めて当ブログのスタンスを明らかにしたいと思います。なぜ、一番重要な味の評価をしないのか。

理由は、わからないからです。

 客観的な評価をするには、限りなく似たような条件を作りだすことが必須だと思っています。誰が行っても、同じ環境で行えば、同じ結果が出るというのでなければ、科学的とは言えません。

 ミルを比較してわかったことは、似たような形状の刃でも、本体の大きさ、設置の仕方で挽き心地が大きく異なる事(逆も真なりで本体はほぼ同じでも、刃が異なれば挽き心地は大きく異なります)でした。 さらに言えば、同じ個体を使っても、設置の仕方ひとつで全然違ったものになります。

 味は、さらに繊細で、微妙なものだと思います。

 厳密にいえば、比較するなら同じ釜で焙煎した、同じロットの豆を、同じ粒度で、同じ温度、同じ方式のドリップ、同じ形状のカップ、同じ温度で飲むことが必要でしょう。しかし、これは、比較対象が多くなればなるほど、現実的ではありません。同じ温度に至っては不可能といってよいでしょう。しかし、全て「同じ」ではないにせよ、可能な限り条件を近づけようとするのは、まじめに比較をしようとする者にとっては常識だと思います。
 さらに、前提としてコーヒーの味が分かることが必要です。私は官能検査の訓練を受けたわけでもなく、特別にコーヒーの味に詳しいわけではないという自覚があります。

 では、そんな私が何を持って良いミルとするのか。

 コーヒーの味は 煎りたて・挽きたて・淹れたての「三たて」がおいしいとされています。そのうち、コーヒーミルにできるのは、挽きたてです。古い粉が混ざったコーヒーでは、挽きたてのコーヒーとは言えないでしょう。それは、たとえ一杯飲むごとに豆を挽いていても、ミルの中に古い豆、粉が残っていたら、同じことだというです。古い豆、粉がミルの中に残らないこと、これが第一の条件です。

 第二の条件は 、分解・掃除・組立がしやすいことです。これは第一の条件と同じように思えますが、若干異なります。第一の条件は毎回分解しなくとも、粉が残りにくい構造にすることです。現実的には、毎回分解掃除をすることはないでしょうから、分解しなくとも粉が残りにくくすることが一番重要です。第二の条件に上げたのは、分解掃除をしたくなったときに、それが気軽に行えるようにすることです。これが億劫になると、いつまでも古い粉が残り続けることになります。また、構造的に分解・掃除・組み立てがしやすいのはもちろんですが、材質的にも柔らかすぎて変形してしまうものは避け、錆びにくい材質を使うことも重要です。第一の条件、第二の条件とも、古い豆、粉をミルの中に残さないという目的は同じですが、ミルの構造としては別条件です。

 第三に、挽き心地が軽いことです。当ブログを始めようと思ったきっかけは、知人にコーヒーミルを贈ったのに、疲れるから使うのをやめてしまったことでした。どんなにおいしいコーヒーが挽けるミルでも、使われなくては意味がありません。軽快な挽き心地は、手動式ミルの必須条件と考えます。

 第四に、周囲を汚さないことです。いろいろなミルを使ってみて思ったのは、想像以上に周囲が汚れることです。コーヒーを一杯入れるだけで、いろいろなところを掃除しなければいけないのでは、使うのが億劫になるでしょう。周囲を汚さないことも、良いミルの条件です。

 第五に、収納しやすい事です。あまりに大きかったり、食器棚に収納しにくい形状では、邪魔になるばかりです。気軽に使いたいと思えるようにするには、一般の家庭事情に合わせた形状も考慮すべき条件と思います。

 第六に、意図した粒度で挽けることです。いろいろなミルを使った結果、意外と粒度にばらつきがあることに気がつきました。特に挽き始めのころ、大きく粗い、意図した粒度以外の粉が出てくることがあります。どのミルにも調節機構があるにも関わらず、それが機能しないのは、なんらかの問題があるはずです。機械の基本機能として、意図した粒度に安定して挽けることも良いミルの条件です(2015/4/25追加 「第七の条件」にせず、すみません「満足感の高さ」だけが抽象的なので、最後の条件にしたかったためです)。

 第七に満足感の高いことです。この項目だけが抽象的なものになりますが、HARIOのミルを研究しているときに認識しました。いかにもおいしそうなコーヒーが挽けそうだという気持ちにさせることは、嗜好品だけに大変重要です。それがデザインなのか、ブランドなのか、何かはわかりません。おいしいコーヒーを入れてもらったという経験、思い出であることもあるでしょう。
 コーヒーを飲もうと、ミルを取りだす時から気持ちが高まり、挽いている時もちろん、挽き終わった後も飲む時に横に置いて眺めたい。たとえ挽かない時でも、持っているだけで豊かな気持ちになれるミル。矛盾した話ですが、これは前項に挙げた1~6を凌駕します。どんなに欠点の多いものでも、気持ちが豊かになるものは、それだけで価値があるものです。

 当ブログの作成するミルは、「過剰品質」を目指したいと思います。愛情と高い志で、持つ人はもちろん、見る人の心を豊かにすることを目指します。

単純だと思われるミルの設計ですら、困難の連続です。

 その中で、何度か一流の職人と出会う機会がありました。キサゲの名人、伊勢神宮の式年遷宮に神宝を奉製した職人、名前を書けば、誰でも知っているような世界的な絞り職人・・・。世界的な絞り職人に紹介してくださるとのお話は、結局お断りしました。

 私のしていることは、極論を言えば、既存の製品のコピーを作るだけ。それもいくつ作るかわからないほどの少ない個数で、コストの話しかできないというものです。有名人会いたさに、そんな人間がノコノコ出て行ったのでは、紹介者の顔までつぶしてしまいます。

 個人で資金も潤沢でない私が、彼らに認めてもらうためには、作る製品はもちろん、自分にも魅力がなければなりません。何のために作るのか、明確にする必要がありました。
 
 動機、善なりか

 世の中に、その製品を必要とする人がいるか。その人のことを思って、仕事ができるか。

 答えは、善なり。両方に合致すると言い切れます。私は機能、形状はもちろん、愛情と高い志で、持つ人はもちろん、見る人の心を豊かにするコーヒーミルをつくることを目指します。


 サン=テクジュペリの「夜間飛行(堀口大學 訳 新潮文庫 1972年版の文庫本の装丁が美しい)」に‘大地に光る家々のかすかな光を見ながらこう思う。「あの農夫たちは、自分たちのランプは、その貧しいテーブルを照らすだけだと思っている。だが、彼らから80キロメートルも隔たった所で、人は早くもこの灯火の呼びかけに心を感受しているのである」’といった一文があります。
 
 この世の中のどこかにいらっしゃる、価値観を共有した人のための灯を照らしたいと思います。

  

2014年11月16日日曜日

コーヒーミルを作ることにしました(6)

  前回作ったナイスカット用の試作替刃の欠点を取り除いたものを設計しました。ポイントは以下の3点です。
  • 豆を挽き込むスペースを設けること
前回の反省を踏まえ、かなりのスペースを割くことにしました。また、豆を砕く「列」は対の刃と数を変え、一度に同時に力がかからないようにしています。
  • 外周の隙間を一定にすること
直線放射状に変更しました。また、併せて刃の形状も見直しました。加工上の問題として、山形の刃は価格が高くなります。前回までは単価を下げるために、角が直線状の刃で考案してきましたが、機能的に不安がでてきました。いくら安くても、機能的に満足しないのでは本末転倒ですので、山形の刃に見直しました。
  • 内径を極力小さくすること
内径を小さくする案を考えましたが、どうやっても無理がありそうです。刃を分割して組み込めば、ギリギリまで迫ることができます。隙間にどの程度、微粉が溜まるかが課題となりそうです。

豆を挽き込むスペースを大きくしました。刃は山形に変更しました
豆を砕く「列」は、対の刃と一致しないようにしています。内径部は豆が入るスペースをなくしました。

  試作の検証には非常に時間がかかります。設計、工場での打ち合わせ、実際の工作(機械が空いている、隙間の時間に作っていただくことで、安くしていただいています)、実物の検証を、平日に普通の会社員が行うのには、かなりスケジュール的に難しいものがあります。また費用面も、そうそう気軽に行えるものではありません。次の更新も遅れると思いますが、どうぞご容赦ください。

コーヒーミルを作ることにしました(5)

 前回作ったナイスカット用の試作替刃ですが、スペーサーを作り、実際に動かしてみました。

 もちろん、ちゃんと挽けましたが、非常に時間がかかりました。同じ粒度で1.5倍程度の時間がかかる印象です。上から豆の挽き込まれる様子を見ると、なかなか豆が減りません。どうやら、豆を挽き込むスペースが足りないようです。片側だけ豆を挽き込むスペース分を削り、もう片方の刃の突起部分で砕いたほうが早く砕けると考えたのですが、ダメだったようです。

緑部分だけでは豆を挽き込むスペースが足りません。赤丸部分の隙間が一定ではありません。
反対側の刃。緑部分に突起を設けました。赤丸部分の隙間は一定です。
  実物を見習い、刃が斜め放射状に広がるように配列したのですが、これを突起状の刃で実現しようとすると、隙間が一定にならず、挽かれる粉の粒度が安定しない可能性があることが判明しました。高速で挽けば問題ないのかもしれませんが、視覚的に明らかに異なるので、気持ちの良いものではありません。また、工作的にも角度の割り出しなどで時間がかかり、コスト的に望ましい形状ではないことから、次回からは単純な放射形状にしたいと思います。角度による割り出しのほうが簡単なものだと思っていたのですが、そうではないようです。この辺は、機械を実際に使っている人でないと、なかなかわからないですね。

 内径は既製品に合わせた大きさで作成したのですが、隙間に豆が挟まります。既成品でも豆が挟まるのですが、「切り欠き」があったため、挟まる個所が少なくて済んでいました。それが、試作替刃では、切り欠きがないのでたくさん挟まってしまいました。

 さて、また考え直しです。

2014年10月5日日曜日

コーヒーミルを作ることにしました(4)

 先日出来上がったナイスカットミル用の試作替刃を、動作検証してみました。


 焼きを入れてからと思っていたのですが、職人の方から、「一度動かしたら、形を変えたい所があるかも知れない。焼きを入れる前に機械に入れて動かしてみたほうが良い」とのアドバイスを受けてのことです。


 さっそく挽いてみたのですが、刃と刃の隙間が大きすぎて、粉にならず、大きな塊のまま出てきてしまいました。
 今までと同じダイヤルの位置(刃の初期位置)が問題のようなので、刃の初期位置の値を変え、一番奥まで入れましたが、中挽き程度の粒度にしかなりません。しかも回転側の刃を固定する突起部分が干渉してしまいました。思ったより、正規品の刃は隙間が多い状態で動作していることがわかりました。作った刃の厚みが、図面より薄くなっていました。同じ厚さで作ったとばかり思い込んでいたので、まったく気がつきませんでした。訂正します(2014/11/14)。

本来の部品と組み立てられた状態


本体と干渉して削れてしまいました

 職人の方と相談して、スペーサーを作って、チューニングしようと思います。まだまだ、いろいろありそうです。