比較項目は、ザッセンハウス同様、スタビライザーの有無で、挽き時間(ハンドルの回転回数)、挽き心地、粒度のバラツキについて粗挽き・中挽き・細挽きを、同じ豆、同じ量で検証します。
豆の種類 : アラビカブレンド深煎り
豆の量 : 約10g カリタコーヒーメジャーカップ#44059 すり切りいっぱい
①スタビライザーなし
回転数 挽き心地 バラツキ
①-1 粗挽き: 25回 最後まで滑らか。非常に軽い。 ほぼ、粒度が揃う
①-2 中挽き: 37回 最後まで滑らか。 ほぼ、粒度が揃う
①-3 細挽き: 47回 最後まで非常に滑らか 粒度は揃うが、若干粗い
②スタビライザーあり
回転数 挽き心地 バラツキ
②-1 粗挽き: 25回 最後まで滑らか。非常に軽い。 非常に粒度が揃う
②-2 中挽き: 38回 最後まで滑らか 非常に粒度が揃う
②-3 細挽き: 48回 最後まで非常に滑らか 粒度は揃うが、若干粗い
★粗挽きの評価
スタビライザーをつけたF101の粗挽きは、非常に粒が揃います。極端に大きな粒があったり、細かい粉が混じったりするわけではなく、受け皿を開けた瞬間、「粗挽きの粉が揃っている」という印象を受けました。ザッセンハウスの細挽きの粉は、受皿を開けた時の印象がすばらしいと書きましたが、F101の粗挽きでも同じことが言えます。
スタビライザー無しでは、ザッセンハウス、The Coffee Millほどではないにせよ、やはり大きな粒が混じりました。スタビライザーの効果はここでも明確に現れます。
ザッセンハウスの刃とF201のボディを組み合わせる(4)で、どういった粗さの粉を「粗挽き」として認識しているのか、大きな破片も、細かい粒もあり、いったい何を持って粗挽きとするのか?という疑問が浮かび上がると書きました。しかし、スタビライザー付きのF101で挽いた粉は、「粗挽き」という印象を与えてくれます。
挽き心地は、スタビライザーの有無にかかわらず、最後まで非常に軽く滑らかに挽けます。挽くスピードは、ほとんど変わりません。重さもザッセンハウス、The Coffee Mill同様、粗い粉を挽くときは軽くなります。
F101の刃で挽いた粗挽き比較 左がスタビライザーなし 右がスタビライザーあり |
★中挽きの評価
もう、なんといってよいのかわからないくらい、スタビライザーをつけたF101の中挽きは、粒が揃います。粗挽きの際も、受け皿を開けた瞬間、「粗挽きの粉が揃っている」という印象を受けたと書きましたが、さらにその上を行きます。見た瞬間に「キレイな粉が挽けた」と思いました。
挽き心地は、The Coffee Mill同様、一回も豆を噛みこむ感覚なしに、最後まで同じトルクでひっくことができます。オリジナルモデルでも、滑らかな挽き心地を感じましたが、持ちやすさもあり、さらに滑らかさが増しているように感じます。
特筆すべきは、ざらつき感がないことです。粗挽きでは、若干あったざらつき感が、中挽きではほとんどなくなります。固いものをガリガリと削っているのではなく、無理なく挽いているという感覚があり、掌に伝わってくる感触が、実に心地良いです。
F101の刃で挽いた中挽き比較 左がスタビライザーなし 右がスタビライザーあり |
★細挽きの評価
今回も刃がガリガリとかみ合わないギリギリの隙間、刃の限界点です。
粗挽き、中挽きであれほどの揃った粉を挽けるのですから、細挽きも品質が良いのではないかと大いに期待したのですが、残念なことに、ザッセンハウス、The Coffee Millの細かさには到底及びませんでした。
挽く速度が圧倒的に早かったこと(ザッセンハウス・The coffee MIllは70~80回、F101は47~48回)で、「これは粗いかな」と思って受け皿を開けたのですが、やはりそうでした。ザッセンハウスにある「ふわっとした粉」という印象は全くなく「ぺたっとした粉」の印象です。
ただ、挽き心地は、さらに滑らかになります。ざらつき感は完全になくなり、ハンドルを握る右手には、細かい粉を挽いているなぁと思わせる、心地よい感触だけが伝わってきます。
この感触はスタビライザーの有無にかかわらず、得られます。
F101の刃で挽いた細挽き比較 左がスタビライザーなし 右がスタビライザーあり |
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今回の検証結果ですが、粗挽き、中挽きは挽き心地、粉の品質とも明らかに、The Coffee Mill・ザッセンハウスを上回ります。
粗挽き・中挽きに適した形状の刃と、細挽きに適した形状の刃があるのではないかと思うほどです。それほどまでに、違いがありました。もしも、粗挽き・中挽きに適した形状の刃があり、この挽き心地を実現するために、細挽きを犠牲にしなければならないとしても、私は無条件に、この形状を選択します。それほどまでに品質が良く、心地良いです。
粗挽き・中挽きに関する限り、理想のミルのようですが、決して良いことばかりではありません。F101の刃は、分解掃除の手間がかかりすぎます。他の刃は内刃は1つのパーツでできていますが、分解してしまったこともあり、10個もの錆びやすいパーツを洗う必要があります。組立の順序などは慣れればそれほどでもありませんが、それでも1回で正確に順番通り組み上げるのは、まず無理です。間違いなく高頻度な清掃は億劫になります。また、板と板の間にわずかな隙間があることも、古い粉が残り続ける要因です。
分解掃除の頻度が少なくなること、古い粉が残り続けること、これは、下記の当ブログの考える「良い手動式ミルの条件」の2点を満たしません。
第一条件:古い豆、粉がミルの中に残らないこと。
第二条件:(分解・)掃除(・組立)がしやすいこと。
現在、私が設計している内刃は一体型ですので、上記条件を満たしますが、それ以前に、粗挽き、中挽きを優先するのか、細挽きを優先するのか、もしかしたら万能の形状があるのか、それを見つけなければならなくなりました。
とりあえず、次回は似たような形状を持つF303はどうなのか、再度分析、比較したいと思います。