2015年4月19日日曜日

カリタ ダイヤカットミルを研究する(2)

 今まで、全て使用感の違いを以下の6点になると思うと書いてきました。ダイヤカットミルではどうなのか、同じ項目について個別に見ていきます。
  1. 挽き心地が軽いか否か
  2. ホッパーに豆が残るか否か
  3. ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか) 
  4. 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か
  5. 分解がしやすいか 
  6. 豆の入れやすさ
  • 挽き心地が軽いか否か
  カリタダイヤカットミルを研究する(1)でも書きましたが、まったく違うレベルで挽きやすいモデルです。ただし、挽く時間はF303よりもさらにかかります。
 重さに関係なく、長時間ハンドルを廻し続けるほど、横廻しの良さがよくわかります。長時間、高頻度で廻す場合、腕の動きが自然な方が疲れないのは明白です。それは過去の業務用のミルがそうであったことからも明らかです。横廻しであることは明らかに「楽な挽き心地」に関係があります。
  • ホッパーに豆が残るか否か
  非常に急こう配です。カリタダイヤカットミルを研究する(1)で、豆が残ることは、まったくないと書きましたが、それは「挽き切れば」の話で、なかなか噛みこまれず残る豆が必ずあります。そうした点ではホッパーではなく、刃の中に豆が残ることは多々あります。

 横型のミルでは原理的にすべての粉を排出できないので、刃の部分にかなりの量の粉が残り続けます。
  • ホッパーの縁に挽いた粉が飛び散るか(汚れが激しいか) 
  それほどでもありません。側板が薄いこと、粉が円周状に排出されないので、飛び散ることが少なくなっています。ただ、挽き残した粉が本体にかなりの量で残っているので、それがいつまでも落ち続け、粉が本体の奥に散らばり続けます。
  • 粒の大きさの調節機構が使いやすいか否か

  調節機構は、非常に使いやすいです。ネジ式で簡単に調節できます。ただ、細かく挽くことはできません。
  • 分解がしやすいか 
ダイヤカットミルは組み立てに方向があるので、項目を分けます。

本体の分解方法

ハンドルのネジを取ります

本体右側のネジを取ります
反対側の粗さ調節ネジを外します
回転刃・固定刃などの部品を抜き取り、反対側の「フタ」も外します。分解できるのはここまでです。

 分解すると、本体内部にあまりに大量の粉が残ってることに驚かれると思います。部品はすべて水洗いできますが、錆を防止するため、すぐに水をふき取ります。タワシや歯ブラシなどを使うのが良いと思います。油などを差す必要はありません。



本体の組み立て方法

(写真の組み立て案内は、右利きの人がハンドルを手前から奥に廻す際の組み立て順序です)
部品一覧 組み上がった時の順番に並べてあります

 1.受け皿の取っ手を手前にして、左側の蓋を固定します。
最初に左側の蓋をネジ止めしておきます。この方が組立方法がはっきりします。
2.回転刃をシャフトにはめます。

  回転刃はどちらでも構いません。本来ならば、回転刃の突起部分の垂直面が回転方向に対して来るほうが良いのですが(みるっこの刃は、そのような組み方になっています)、反対側の刃も同じ形状なので、どちらかが必ず逆になってしまいます。ですので、組み合わせはないです。
赤丸の組み合わせが良いが、反対側は必ず青丸になるので、どちらを組み合わせても同じ

 3.固定刃「2」をはめます

鋭く切られていない側が右にある方の刃を先に組み込みます
4.固定刃「1」、反対側の回転刃をはめ、バネを入れます


 5.反対側の「固定部品?」をはめます

最初の回転刃が奥まで入っていないと、上手く組み上がりません
6.本体に組み込む。右利きの人が、手前から奥にハンドルを回す場合、この方向で入れます。


赤丸の鋭くない側が奥。
青丸の部品は外した状態で組み込む(バラバラになるので、写真撮影のためにつけただけ)

赤丸の側に鋭くない部分が入るように入れます
7.右側の蓋を締め、ハンドルをつけて完成です。
ねじを留めます。ハンドルをつけて組み立て完了。

組み上がり完成状態(市販品の写真です)

  • 豆の入れやすさ 
  それほど大きくないように見えますが、真ん中にシャフトがなく、径をフルに使えるため、大変入れやすいです。
  • 結論・評価
  さて、ダイヤカットミルの評価ですが、F303同様、評価に困る機種です。大変使いやすい機種であることは間違いありません。挽いていて嫌になることがなく、もう一杯飲みたくなっても、まったく苦になりません。一番、「使わなくなった」と言われないのはこれです。ご夫婦ともにコーヒー好きで、ご家庭のスペースに余裕があれば、これ以上のものはありません。年配のご家庭でも楽に挽けます。ただ、周囲が汚れるのと、考えられないほど挽き残しの粉が溜まるのもまた事実で、こまめな掃除は必須です。

 横廻しのミルは、明らかに楽に弾けます。当ブログの考える良いミルの第三の条件「挽き心地が軽いこと」を、これほど満たすミルは他にありません。しかし、ダイヤカットミルは考えられないほど、本体に粉が残ります。これは、第一条件「古い豆、粉がミルの中に残らないこと」に明らかに反します。結果、第四の条件「周囲を汚さないこと」も満たしません。しかし、それを凌駕する第七の条件、「満足感の高い」ことも、また事実なのです(2015/4/25 第六から第七に変更)。

 これらの問題をどう解決するのか、横廻しの軽さと、粉が残らないことをどう両立させるのか、そのうえで、持つ喜びを満たすミル形状はどのようなものか。試行錯誤が続きます。

2015年4月11日土曜日

カリタ ダイヤカットミルを研究する(1)

今回はカリタ ダイヤカットミルを研究します。電動ミルやHARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MCSC-2TBを買う前から使っていたのですが、書きそびれてしまいました。しかし、刃の試作や他のミルを買ってからわかったことも多く、半分以上書きなおすほど、情報量が増えました。
カリタ ダイヤカットミル
大変ポピュラーなモデルです。コーヒーミルと言えばこれをイメージする人が多いのではないでしょうか。京都ではイノダコーヒ、スマート珈琲太秦店など、お店のシンボル的な存在になっていますね。電動ミルができる前、業務用に使われていたミルはこのような形状だったようです。
ELGIN(アメリカ製)のMILL 華やかですね

 このブログを始めた時、ザッセンハウスを改造する際に、横廻しなので調査の候補から外れたと書きました。そして、ザッセンハウス、プジョー、KONO(コーノ式)のモデルをいろいろ研究した結果、軽い挽き心地を決めるのは横廻し方式ではなく、適度に豆を弾くこと、小さな破片が螺旋の中など、内外の刃が届かない場所に入り込まないこと、面で砕くのではなく、点・線で砕くことにあると書きました。HARIOのMSCS-2TBの新旧モデルを検証した結果は、それを裏付けるものでしたが、同時に重い挽き心地の時は、形状によって大きな差が出ること=挽きやすい形状はあるという結果が出ました。

 改めて、そうした目でELGIN・ダイヤカットミルを見ると、挽く側が嫌にならない形状(疲れにくい形状)は、横廻しなのかなと思います。ずいぶん遠回りをしてきました。

長所

非常に軽い挽き心地。
分解が楽。あえて言うならネジまわしが必要な事くらい。

管理人は掃除が苦にならないから、そんなことが書けるのだとお叱りを頂戴するかもしれませんが、プジョーやF303の分解組み立ては苦になるので、やはり楽なのだと思います。

短所

重く、大型。
内部の汚れ方が凄く、考えられないほど、粉がたまる。頻繁な掃除は必須。
挽くのに時間がかかる(これは挽き心地と大きな関係があります)。

 実際に使ってみると、まったく違うレベルで挽きやすいモデルでした。縦廻し式のミルの重い軽いといったレベルではなく、何杯分でも挽くことができるものでした。 挽いていて嫌になることがないです。「挽くだけ」なら、これが一番です。

 このミルの挽き心地は何が要因となっているのでしょう。今まで比較して分かったことは、
  • ミル本体を固定すること
  • ホッパーの勾配を緩く、段差を作るなどして、引き込む豆の量を少なくすること
  • 螺旋を不均等にして、同時にかかる力を少なくすること
  • 外刃の鋭さをなくして、豆を滑らせること
が軽い挽き心地を決定する要因だということでした。

 横型の刃でも、上記の条件は合致するのでしょうか。

 以下、いつも通り、他の項目について、大きさなどを、ひとつひとつ見ていくことにします。

ケースの固定しやすさ(大きさ)

 幅190×奥行180×高さ250 大きさもさることながら、非常に重いです。3.3kgもあります。電動のナイスカットミル2.3kgより重いです。本体が重いことは、本体の固定に有利に働いています。

ハンドルの動作半径 

 大きく見えますが、80mmしかありません。横廻し式のミルが軒並み100㎜をこえながら、動作が重いことを考えると、このミルがいかに軽く動作するかがわかります。

 注目すべきは、シャフトです。今まで最も太かったシャフトは、ザッセンハウスの8mmでした(HARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MCSC-2TB新形は7mm、他のモデルは軒並み6mm)。ところがダイヤカットミルは16mmもあります。材質もザッセンハウスはアルミですが、ダイヤカットミルは鋼鉄製です。しかも、長さも短い上に、両側で保持しています。このことによって、よりトルクが伝わりやすくなっています。シャフトの形状・材質、保持方法は、動作の軽さに大きく関係があります。

刃の形状・鋭さ

回転側 高さ(5mm 真ん中の四角枠を除く)・径(48mm)・三重突起(2mm)
固定側 高さ(15mm程度)・径(30mm程度)・三重突起(2mm)

横型であることに目を奪われますが、向きを変えれば縦型のミルと基本原理が変わらないことがわかります。

固定側の刃を外刃、シャフトを内刃、回転・固定刃の突起部分を細かく砕く部分と考えれば原理は同じ
シャフト・固定刃ともに螺旋はなく、鋭さも全くない

刃の形状を個々に見れば
  • 螺旋はなく、引き込む力を少なくすること
  • 外刃の鋭さをなくして、豆を滑らせること
など、挽き心地を構成する要素は、横型でもまったく同じだということがわかります。

刃の材質・硬度

 不明です。ザッセンハウスとプジョーを比較する(2)でも書きましたが、磁石の付き具合から、「鉄系の材質という「印象」です。硬さについては、どの程度なのかは、よくわかりません。鋳物であることは確かです。

ホッパーの形状

 非常に急こう配です。豆が残ることは、まったくありません。軽い挽き心地の要因である 「ホッパーの勾配を緩く、段差を作るなどして、引き込む豆の量を少なくすること」が、当てはまらないことは事実です。ただ、刃に螺旋がなく、引き込む力がないに等しいので、その分、急な勾配のホッパーが必要になります。
 挽いてみると良くわかるのですが、ダイヤカットミルは実によく豆を弾きます。固定刃の切り込まれた部分に豆が入ってからも、なかなか噛みこまれない豆が必ずあります。あまりに長時間弾かれ続けるので豆に傷がつき、余計な微粉が出るのではないかと気になるほどです。螺旋が全くないのも考えものという気がします。
急な勾配です。首の部分はザッセンハウスのように垂直に近く、豆が残ることはありません。
この形状は非常に使い心地が良いです。
ダイヤカットミルは、その形状から、横廻しであることが、軽い挽き心地を実現するものとして認識されていますが、刃の形状から見れば、
  1. F101の研究で明らかになった、「螺旋は必ずしも必要な形状ではない」こと
  2. 引き込む力を自然落下にとどめ、豆を弾き、一度に噛みこむ量を少なくすること
  3. 刃の鋭さをなくし、豆を滑らせること

という考え方が、さらに推し進められたものと言えるでしょう。
 
 次回は、今までと同じく、直接挽き心地に関係ないと「思われる」要素を書きたいと思います。

2015年2月1日日曜日

F303の刃とF201のボディを組み合わせる(2)

 F303の刃とF201のボディを組み合わせる(1)で、はじめて、コメントを頂戴しましたので、作り方というか、部品形状を載せたいと思います。
 F201の外刃をひとまわり大きくした感じの形状です。材料はPP(ポリプロピレン)を選択しました。適度に柔軟性があり、本体、刃の両方に傷がつくこともありません。コスト的にも有利です。

アダプター F201の外刃によく似ています

アダプター 下から見たところ、供回りを防ぐため、突起があります

ベアリングを組み込むためのものです。不具合があればブッシュに変えるかもしれません
 
 
  ベアリングはNSKのF688ZZを奢りました。粉じんのことを考えると、ブッシュを採用するのが良いのでしょうが、ベアリングのスムースさは、抗しがたい魅力があります。それにZZ型(両側鋼板シールド形)のベアリングがどこまで実用に耐えられるか、テストしてみたいという気持ちもありました。

 さて、このアダプターとスタビライザーの2つの部品だけで、みるっこDXが買える費用がかかります。25セットでやっと2/3程度です(それでも、格安です)。

 皆さんが、不満ながらも納得できる価格(2個で1000円程度でしょうか)にするためには、5000個は作らないとできないでしょう。量産のことを考え、射出成形用の抜き勾配も付けてありますが、どうやら無駄な配慮だったようです。

 精密さ、コストのかかり方では、ベアリングが最も高価な部品であることは間違いありませんが、規格品の量産効果というものは、すごいもので、200円も出せば、この精密な部品が手に入ります。
 少量生産を採算ベースに乗せるのは、想像以上に大変です。

2015年1月25日日曜日

F303の刃とF201のボディを組み合わせる(1)

ナイスカットミル用の替刃の試作には少々時間がかかりそうなので、今回は、(試作の割には)比較的安価で面白そうな試みをしたいと思います。

F303の研究では、刃の評判が良いが、本体の構造に問題があると書きました。
  • 本体のいたるところに豆や粉が溜まる
  • 豆や粉が溜まるにも関わらず、本体の分解掃除が面倒
  • 刃に至っては、そもそも分解掃除ができない(分解できるよう改造すれば可)
F201の研究では、本体に魅力が多いと書きました。
  • 挽きやすく疲れない形状
  • コンパクトな本体
  • 分解せずとも楽に掃除ができる構造
  • 所有欲を満たす魅力的なデザイン
 今回は、F303の刃をF201の本体に組み込むことができないかという試みです。F201は色も青に塗り替えてしまいましたし、どうせ改造するなら、思い切っていろいろやってしまえ!という、ある意味、皆さんの心の叫びを実現してしまう企画です。
 
 KONO式ミルのファンなら、誰もが一度は考えたであろう、F303の刃とF201の本体という「KONO式ミルの理想形」を作ってみることにします。
 まず、組み込むことが可能かを確かめます。改造の可否の判断は、既存の部品に手を加えずに組み込めるかにしました。これは、いつで元に戻せるようにするためです。すでに生産が完了したF303・F201は貴重なものであり、不可逆的な改造は望ましくないと考えたからです。
  • 外刃の大きさは問題ありません
  • シャフトの径は同じです。
  • シャフトの長さもそれほど違いません。
どうやら、大丈夫そうです。

図面を描いて、PPで作成しました。スタビライザー側の部品も極力細くし、粉がたまらないようにします。
F201にF303の刃を組み込むアダプター



 ブッシュではなく、ベアリングを組み込んでいます。ベアリングは、もちろん国産です。オリジナルのF303よりも、はるかにスムースに動きます。F303(共通刃:F301・F303・F305・F307・F702・F703)をお持ちの方は、おわかりになると思いますが、それ以上に、軽くハンドルが回転します。

 この感触は、なんともいえずなめらかで、うれしくなって、何度もまわしています。

2014年12月31日水曜日

HARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBを研究する(3)

 ナイスカットミル・みるっこを、設計のため工場に預けており、この3か月ほど、手動式のコーヒーミルを使うことが多くなってきました。

 いろいろ使うようにしているのですが、一番頻度が高いのはHARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBです。なんといっても、メンテナンスが楽です。本体はほとんど汚れませんし、周囲はまったくと言って良いほど汚れません。分解掃除も楽、保管場所も取りません。木製のキャビネット型のミルは、ほとんど使わなくなりました。

 いったん評価が定まったかのように思えたHARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBについて、書き足したいと思います。


 まず、挽く際の評価について、訂正しなければなりません。前回「ホッパーとガラスの受け皿をねじ止めしている部分の径が大きいので、とても疲れます」と書きましたが、台や机の上に置かず、手に持って挽けば、それほど苦にならないことも明らかになってきました。1人分(10g)程度なら、豆が飛び散ることもありませんし、蓋をすれば飛び散る心配自体なくなります。KONO F303ほどの軽さではないにせよ、1人分挽いたら、もう嫌だという気持ちにはならない重さです。電動式のミルを使うようになってから、しばらく手動式のミルから遠ざかっていましたが、これなら毎日、毎回その都度挽こうという気になり、実際、その通りになっています。


 また、冬場になり、静電気が気になる季節になってきました。コーヒーミルを愛用する方にとっては、微粉の処理が気になる季節でもあります。HARIO セラミックコーヒーミル・スケルトンMSCS-2TBは刃にセラミックを使用するだけあり、微粉のつく量が少ないです。これは、明らかに使い勝手が電動ミルを大幅に上回っています。 ナイスカットミル・みるっこをお使いの方はわかると思いますが、静電気による粉の出る口の周辺に付着する微粉の多さと、掃除の大変さは、毎回、大変なものです。その点、HARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBは、周囲が全く汚れないので、掃除が不要です。もしかしたら、電動ミルが戻ってきても、使わなくなるかもしれません。


冬場に挽いた直後の状態。こぼれた量も、たったこれだけです

 自然に手が伸びるミルというのが、使いやすいミルだと思いますが、HARIO セラミックコーヒーミル・スケルトン・MSCS-2TBは、間違いなく、もっとも使いやすいミルです。前回の投稿も一部を訂正したいと思います。
 

2014年12月28日日曜日

コーヒーミルを作ることにしました(7)

先日、工場に出向き、新しく設計した替刃の試作をしてきました。
  •  豆を挽き込むスペースを設けること
前回の反省を踏まえ、かなりのスペースを割いたつもりでしたが、それでもまだスペースが足りないようです。また、豆をひきこむ形状が、加工上、困難なものとなっていました。目の前で、汎用フライス盤にセットするのですが、どう部品を置いたら良いのか非常に迷いました。自動機器なら問題にならないのでしょうが、工数を減らすことも目的としているので、無駄に複雑な形状は見直す必要があります。

豆を引き込むスペースをなくした状態にまで設計を戻しました
 年内には完成させるつもりでしたが、まだまだのようです。


 旋盤やフライス盤で作業するのを見ると、実際に形にするには、実に多くの制約があることに気づかされます。CADのレンダリングではなんともないように見えるものでも、 加工するには、多くの手順が必要だったりすることがあります。日本の工場の職人たちは、それをなんとか工夫して、最小の手順で実物にしてきました。その過程には大きな智慧を感じます。人それぞれに異なるアプローチから考えた手順があり、傍目には同じに見えるものでも、その過程は、決して同じではありません。どれが正解というわけではなく、使っている機械のクセによっても手順は変わります(精度が出ている機械なら、ゆるくはめて、何度も少しずつ削るのが良いでしょうし、馬力のある機械なら、がっちり噛みこんで、一度に削る方が早く、生産性も上がるかもしれません)。

 工夫の跡を知った時は、静かな感動があります。先人の知恵を知り、敬意を払うことができることに幸せを感じます。

 工場に通い、熟練職人の機械の操作を見るようになってから、わずかですが、頭の中だけで設計したものと、機械の制約のなかで設計したものの区別がつくようになってきました。

 純粋に好みの問題ですが、私は機械の制約の中で設計したものの方に魅力を感じます。

2014年12月13日土曜日

コーヒーの味の評価と良い手動式ミルの条件について 当ブログのスタンス(2015/4/25 条件を追加)

 味の評価について、今まで何も書きませんでした。ここで、改めて当ブログのスタンスを明らかにしたいと思います。なぜ、一番重要な味の評価をしないのか。

理由は、わからないからです。

 客観的な評価をするには、限りなく似たような条件を作りだすことが必須だと思っています。誰が行っても、同じ環境で行えば、同じ結果が出るというのでなければ、科学的とは言えません。

 ミルを比較してわかったことは、似たような形状の刃でも、本体の大きさ、設置の仕方で挽き心地が大きく異なる事(逆も真なりで本体はほぼ同じでも、刃が異なれば挽き心地は大きく異なります)でした。 さらに言えば、同じ個体を使っても、設置の仕方ひとつで全然違ったものになります。

 味は、さらに繊細で、微妙なものだと思います。

 厳密にいえば、比較するなら同じ釜で焙煎した、同じロットの豆を、同じ粒度で、同じ温度、同じ方式のドリップ、同じ形状のカップ、同じ温度で飲むことが必要でしょう。しかし、これは、比較対象が多くなればなるほど、現実的ではありません。同じ温度に至っては不可能といってよいでしょう。しかし、全て「同じ」ではないにせよ、可能な限り条件を近づけようとするのは、まじめに比較をしようとする者にとっては常識だと思います。
 さらに、前提としてコーヒーの味が分かることが必要です。私は官能検査の訓練を受けたわけでもなく、特別にコーヒーの味に詳しいわけではないという自覚があります。

 では、そんな私が何を持って良いミルとするのか。

 コーヒーの味は 煎りたて・挽きたて・淹れたての「三たて」がおいしいとされています。そのうち、コーヒーミルにできるのは、挽きたてです。古い粉が混ざったコーヒーでは、挽きたてのコーヒーとは言えないでしょう。それは、たとえ一杯飲むごとに豆を挽いていても、ミルの中に古い豆、粉が残っていたら、同じことだというです。古い豆、粉がミルの中に残らないこと、これが第一の条件です。

 第二の条件は 、分解・掃除・組立がしやすいことです。これは第一の条件と同じように思えますが、若干異なります。第一の条件は毎回分解しなくとも、粉が残りにくい構造にすることです。現実的には、毎回分解掃除をすることはないでしょうから、分解しなくとも粉が残りにくくすることが一番重要です。第二の条件に上げたのは、分解掃除をしたくなったときに、それが気軽に行えるようにすることです。これが億劫になると、いつまでも古い粉が残り続けることになります。また、構造的に分解・掃除・組み立てがしやすいのはもちろんですが、材質的にも柔らかすぎて変形してしまうものは避け、錆びにくい材質を使うことも重要です。第一の条件、第二の条件とも、古い豆、粉をミルの中に残さないという目的は同じですが、ミルの構造としては別条件です。

 第三に、挽き心地が軽いことです。当ブログを始めようと思ったきっかけは、知人にコーヒーミルを贈ったのに、疲れるから使うのをやめてしまったことでした。どんなにおいしいコーヒーが挽けるミルでも、使われなくては意味がありません。軽快な挽き心地は、手動式ミルの必須条件と考えます。

 第四に、周囲を汚さないことです。いろいろなミルを使ってみて思ったのは、想像以上に周囲が汚れることです。コーヒーを一杯入れるだけで、いろいろなところを掃除しなければいけないのでは、使うのが億劫になるでしょう。周囲を汚さないことも、良いミルの条件です。

 第五に、収納しやすい事です。あまりに大きかったり、食器棚に収納しにくい形状では、邪魔になるばかりです。気軽に使いたいと思えるようにするには、一般の家庭事情に合わせた形状も考慮すべき条件と思います。

 第六に、意図した粒度で挽けることです。いろいろなミルを使った結果、意外と粒度にばらつきがあることに気がつきました。特に挽き始めのころ、大きく粗い、意図した粒度以外の粉が出てくることがあります。どのミルにも調節機構があるにも関わらず、それが機能しないのは、なんらかの問題があるはずです。機械の基本機能として、意図した粒度に安定して挽けることも良いミルの条件です(2015/4/25追加 「第七の条件」にせず、すみません「満足感の高さ」だけが抽象的なので、最後の条件にしたかったためです)。

 第七に満足感の高いことです。この項目だけが抽象的なものになりますが、HARIOのミルを研究しているときに認識しました。いかにもおいしそうなコーヒーが挽けそうだという気持ちにさせることは、嗜好品だけに大変重要です。それがデザインなのか、ブランドなのか、何かはわかりません。おいしいコーヒーを入れてもらったという経験、思い出であることもあるでしょう。
 コーヒーを飲もうと、ミルを取りだす時から気持ちが高まり、挽いている時もちろん、挽き終わった後も飲む時に横に置いて眺めたい。たとえ挽かない時でも、持っているだけで豊かな気持ちになれるミル。矛盾した話ですが、これは前項に挙げた1~6を凌駕します。どんなに欠点の多いものでも、気持ちが豊かになるものは、それだけで価値があるものです。

 当ブログの作成するミルは、「過剰品質」を目指したいと思います。愛情と高い志で、持つ人はもちろん、見る人の心を豊かにすることを目指します。

単純だと思われるミルの設計ですら、困難の連続です。

 その中で、何度か一流の職人と出会う機会がありました。キサゲの名人、伊勢神宮の式年遷宮に神宝を奉製した職人、名前を書けば、誰でも知っているような世界的な絞り職人・・・。世界的な絞り職人に紹介してくださるとのお話は、結局お断りしました。

 私のしていることは、極論を言えば、既存の製品のコピーを作るだけ。それもいくつ作るかわからないほどの少ない個数で、コストの話しかできないというものです。有名人会いたさに、そんな人間がノコノコ出て行ったのでは、紹介者の顔までつぶしてしまいます。

 個人で資金も潤沢でない私が、彼らに認めてもらうためには、作る製品はもちろん、自分にも魅力がなければなりません。何のために作るのか、明確にする必要がありました。
 
 動機、善なりか

 世の中に、その製品を必要とする人がいるか。その人のことを思って、仕事ができるか。

 答えは、善なり。両方に合致すると言い切れます。私は機能、形状はもちろん、愛情と高い志で、持つ人はもちろん、見る人の心を豊かにするコーヒーミルをつくることを目指します。


 サン=テクジュペリの「夜間飛行(堀口大學 訳 新潮文庫 1972年版の文庫本の装丁が美しい)」に‘大地に光る家々のかすかな光を見ながらこう思う。「あの農夫たちは、自分たちのランプは、その貧しいテーブルを照らすだけだと思っている。だが、彼らから80キロメートルも隔たった所で、人は早くもこの灯火の呼びかけに心を感受しているのである」’といった一文があります。
 
 この世の中のどこかにいらっしゃる、価値観を共有した人のための灯を照らしたいと思います。